障がい者雇用と経営合理性の両立は可能か(後編)

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経営合理性と障がい者雇用の両立推進策

人事専門誌『HRmics』。発行の直後、誌面では紹介し切れない生の情報をお伝えするお馴染みのセミナー、HRmicsレビューを開催しています。今回も、5月20日に東京で行われた最新レビューの概要を3回にわたってお届けします。同誌編集長、海老原嗣生が語り、執筆は副編集長の荻野進介です。※2014/06/19の記事です。

障がいごとに違う適応職務

そもそも「障がい者」とは何か。

その種別は、身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者、その他の障がい者(発達障がい者、難病罹患者など)に分かれる。うち、身体障がい者は、視覚障がい者、聴覚障がい者、肢体不自由者、内部障がい者の4つに、さらに分かれる。このうち、2018年から雇用が義務化されるので、今最も注目されているのが精神障がい者だ。

一口で精神障がいといっても、病名ごとに、得意なこと、苦手なことに特徴があり、それゆえに、適応業務に違いが出てくる。

海老原:「うつ病、双極性障がいといった気分障がいの人は、人とのコミュニケーションは得意だが、仕事を抱え込み、やり過ぎてしまう傾向があるため、総務など、細かな仕事で構成される多岐にわたる部署が向いている。一方、統合失調症の人は一定の手順に従い、一つ一つ確実に仕事をこなすのが得意な反面、さまざまな情報をやり取りしながら、同時に複数の仕事をこなすのが苦手なため、データ集計や資料の作成、メール便の管理といった、手順が定まっている仕事に向いている」

精神障がいの場合、障がい特性とその人が元来持っている性格との明確な切り分けは難しい。障がい特性と性格が重なりあう部分に、その人の個人特性が形成されていると考えるべきだという。

図表1:精神障害者の特性認識に関して

さて、ここからが今回の講演の肝の話となる。昨今、海老原は、このHRmicsレビューで、昨今、日本企業と欧米企業とで、人を採用して育成し、活用していく人事の仕組みが根本的に違うことを力説している。その違いが障がい者雇用にも反映されるというのだ。

海老原:「欧米企業は職務主義であり、ポストごとに仕事内容がきっちり決められている。それに適合可能な人材を任用していく。障がい者の場合も基本的に同じ考え方だ。一方の日本企業はまず仕事ありきではなく、人ありき、だ。ポストといっても、担う仕事はもちろん、その数さえもたやすく変えることができる。だから、様々なタスクの中からその人に合ったもの、できそうなものを集めて、その人独自の仕事をつくる。そうして少し慣れてくれば、簡単なタスクをなくして、代わりに難しいタスクを入れる、という形で習熟を積んでいく。ポストで職務が確定されている欧米とは全く異なる。つまり、仕事はどうにでも調整できるため、それよりも、人柄や考え方、価値観が合う人を採用する。これは障がい者でも同じだ」

その違いをまとめたのが下表となる。

図表2:障碍者の就労支援、日本型vs欧米型

海老原:「どちらのやり方も長短あり、どちらが絶対的に優れているというわけではない。それぞれの企業が自社なりのやり方を選択すればいいと思う」

本気で働きたくなる職場作りを

HRmics本誌で取材した4社のうち、3社は典型的な日本的アプローチを採っていた。その共通要素を表わしたのが下表となる。

図表3:日本的就労支援を成功させている企業の共通要素

まず個人別、チーム別の、わかりやすい課題(目標)を毎日、設定する。それらをチーム内でしっかり共有し、うまくできた時には上司や先輩が「よくやった」と声掛けをする。しかも内容を文書に記録しておき、定期的に開かれる懇親会などで、両親にその旨を報告する。親は嬉しいから、家庭で本人を褒める。それが新たな仕事意欲を喚起する。

上司や先輩、ジョブコーチ(職場適応援助者)などが指導や業務支援もしっかり行うのも忘れてはならない。

最後に、多彩な賞を設け表彰したり、頑張った分の報酬を弾んだり、一段上の役職に昇級させたりといった「努力を評価し、承認すること」が大切になる。

海老原:「アメリカの心理学者、ハーズバーグが提唱したモチベーション理論そのものだ。つまり、仕事の機会を与え、それを成し遂げるために十分な支援を用意し、成果に対して正当な評価を行い、一人前の人間として承認する。それが本人の成長を促し、その成長が心地よいから、多くの仕事、難易度の高い仕事ができるようになっていく。この循環をいかに廻すかだ。なかなか求めているような障がい者がいない、と嘆く前に、障がい者の方が本気で働きたくなるような会社にすべきだ」

助成金をうまく活用せよ

その時に大きな味方になるのが各種助成金の活用だ。いずれも、障がい者が働きやすくなるよう、施設を改善したり新たな機具を設置した場合、介助者やジョブコーチを配置した場合、通勤対策など様々な名目の助成金が整備されている。いざ雇い入れた場合はトライアル時も含めて、別の助成金が、さらに多数雇用した場合に利用できる助成金もある。下表で示したように、初めて障がい者を雇用する企業の場合、1年半の間に、448万円の助成金(現金)が支給されるとともに、作業設備改善費の3分の2、福祉施設設置費の3分の1が助成されるのだ。

図表4:初めての障がい者雇用(軽度者雇用)※従業員数50~99人の企業の場合

「ただし、こうした制度を悪用して、手っ取り早く利益を上げようとは思わないでほしい。企業と障がい者が良い雇用関係をつくり、その結果、企業には利益が、障がい者には働く喜びと成長がもたらされる。ただ、最初からそううまくはいかないから、助走期間の間、公的に支援するというのが、この助成金の本意だ」と、海老原は最後に念を押す。

さて、次回は欧州、特にフランスの障がい者雇用問題に詳しい永野仁美・上智大学准教授の講演内容を要約してお伝えする。

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