時短・業務効率化は、自己責任ではなく上司の仕事

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何が肝心で何が不要か。何が転用可能なノウハウなのか。従事している仕事の意味をつきつめる。

人事専門誌『HRmics』。発行の直後、誌面では紹介し切れない生の情報をお伝えするお馴染みのセミナー、HRmicsレビューを開催しています。今回も、9月27日に東京で行われた最新レビューの概要を3回にわたってお届けしております。今回は、早稲田大学政治経済学部教授、原田泰氏による講演要旨をお伝えします。※2013/10/31の記事です。

主要国の労働時間から推定される残業時間

日本人の労働時間は長いといわれる。これは本当だろうか。主要国の労働時間(いずれも2010年の数字)を統計データで確認すると、確かに長い(ただ、韓国ほどではない)。先進国の中では確かに、結構長い。ただ、海老原さんが前で触れたように、この統計には短時間労働者も含まれているので、それを除いた場合でもやはり長いのかどうかは不明だ。 そこで労働時間から法定労働時間を引いてみる。それが残業時間と見なせるのではないか。その結果が下表であり、日本よりイタリアのほうが残業が多いと出る。これはどう見ても違和感がある。

図表1:主要国の労働時間から推定される残業時間

今度は週49時間以上働く長時間労働者の割合を見てみる。ここでも韓国を除くと、日本の値は男女とも長い。全員ではないにせよ、日本人の労働時間が総じて長いこと、つまりは残業時間も長くなっているのは事実なのだろう。

図表2:主要国の長時間労働者の割合(男性)

図表3:主要国の長時間労働者の割合(女性)

残業の削減は「仕事の成果」を考えることから

ではその残業を減らすにはどうしたらよいのか。

まずは仕事の効率化である。ブルーカラーの場合、労働時間と成果が比例するので、効率化はやりやすいが、問題はホワイトカラーである。労働時間、正確には拘束時間と成果が比例しないのだ。残業したからといって即、成果が上がるわけでもない。

そもそもホワイトカラーの仕事の成果というものが曖昧なのだ。

仕事の成果とは何なのか。残業を減らすには、この問題から考えてみるべきかもしれない。2つのことに気づくはずだ。

一つは成果がはっきり見える仕事は案外少ないのかもしれない、ということであり、もう一つは成果の見える仕事をあえて見えなくしているかもしれない、ということである。

後者を実践していたのが戦前の日本軍ではないか、と思っている。というのも、日本軍は個別パイロットの敵機撃墜数を公式には数えなかったというのである。アメリカ軍は違った。誰が何機を撃墜したか、空戦ごとにきちんと計測していたという。日本軍がなぜそれを実施しなかったかといえば、戦場における実績ではなく、兵学校の成績順で評価が決まるという「秩序」を乱したくなかったからではないか。新聞記者のあり方も日米で大きな違いがある。日本の場合、政治家とどれだけ仲よくなれるかが出世の大きなバロメーターになるようだ。その成果はなかなか目に見えにくい。

アメリカの新聞社では、書いた記事の質が出世を左右する。よい内容の記事ほど、地方紙に転載される。独立のコラムニストになれば、転載料が個人の懐に入る。評価が目に見える訳だ。日本の新聞社にも名文家と言われる人はいるが、多くはその社でしか通用しない。

残業代は管理職が支払え

残業を減らすには、残業代をコストとして認識させることも必要であり、そのためには残業代を管理職が支払う仕組みにすればいいのではないか、と常々考えてきた。管理職にあらかじめ組織全体で必要な残業代を手渡しておき、そこから毎月の残業代をその管理職が部下に支給し、残った分を管理職本人の取り分とすればいい。

管理職が個々の部下の仕事内容をしっかりと精査し、段取りよく、仕事を終わらせる。部下の残業を減らすと自分の懐が潤う仕掛けである。この講演のタイトルにあるように、「部下の時短・業務効率化こそ管理職の仕事」なのだ。

そういうと、管理職ばかりが得をする仕組みではないか、部下にサービス残業を強いる管理職が出てこないか、と危惧する人がいるかもしれない。そんな管理職が出ないよう、残業代支給について、いざという場合、管理職を告発できる仕組みをつくっておけばよい。

給料が低くノウハウも身につかない企業も

会社全体として、残業時間を認めない、あるいは過少に申告させ、会社ぐるみのサービス残業を強いている企業が昨今、社会的非難を浴びている。

といっても、サービス残業すれすれで密度の高い長時間労働を強いる企業は他にもある。たとえば、業種でいうと、コンサルティングファーム、投資銀行、会計事務所、弁護士事務所、マスコミ各社などだ。そうしたところで働くと、20代で年収1000万円も夢ではないが、年間労働時間を仮に3300時間だとすると、時給換算で3000円になる。家庭教師のアルバイトで、時給5000円取る大学生はザラだから、決して高い額ではない。つまり、私が言いたいのは、年収1000万円に手が届くような給料の高い企業はたくさん働かせたところで非難はされない、ということである。世の中に金で解決できることは多い。

明治時代の女工さんは「女工哀史」という言葉があるように、「虐げられた労働者」というイメージがある。ところがこれは事実とは反する。山本茂美『あゝ野麦峠』(角川文庫)に、〈飛騨の工女は、長時間労働について、「家の仕事より楽だった」と答えている。・・・(眉から生糸の)細い糸を切れ目なくひくことにたけた工女のなかには、日露戦争の最中、年に100円稼ぐものもあった〉という記述がある。当時、100円といえば、平屋2軒が建つほどの金額だったという。山本茂美という人は反資本主義の立場だったから、この記述はなおさら真実味がある。

労働環境が悪く社会的非難を浴びるような企業にも、そこで働いていたという実績が一種の「信用」となり、転職が容易になる企業と、そうはならない企業がある。前者の企業においては、他社でも通用する能力が鍛えられているということだろう。

そう考えると、本当に非難されるべき企業とは「給料が安く、長時間労働を強いられ、ご褒美が用意されているように見えて実はない、かつ仕事のノウハウも身に付かない企業」といえるだろう。

景気浮揚が法令違反企業を淘汰させる

若者はなぜそんな企業で働いてしまうのだろうか。就職状況が厳しくなり、若いうちに正社員になれなければ、いつなれるかわからない、雇用が不安定だと、一生、生活不安がついてまわると思うからではないか。

そうした企業は若者のそんな不安につけ入り、正社員採用を餌に若者を取り込む。そうやって正社員で雇用しても、その若者が使い物にならない場合、自発的退職に追い込むノウハウを持っているから、解雇がより容易な非正規社員を雇う必要はない。社会保険料負担はほぼ一律なので、正社員として雇って長時間労働をさせたほうが人件費の時間単価を切り詰めることができる。時間単価にするとほとんど最低賃金に近づいていくが、若者のほうも「正社員」なのだから、多少辛いことがあっても我慢してここで働こう、となってしまうのだろう。

こうした企業をなくすにはどうしたらよいのだろうか。

1990年代の最初まで日本の失業率はかなり低く2%台だった。その後、不況に突入し、失業率が高止まりするにつれ、このような問題に顕在化し始めた。私は、景気の浮揚がこうした企業を淘汰すると考えている。失業率が2%台に低下すると、こうした企業は採用が困難になり、自然と消えていくのではないか。

あとは、役所が摘発するべきだ。こうした企業は労働条件に関する約束を守らない違法企業に他ならない。離職率の高さは罰することができないが、過剰な時間外労働やサービス残業に対してはできる。規制の大好きな日本の官僚は何をしているのか、と思ってしまう。

ホワイトカラーの時短は仕事の意味をつきつめるところから

ホワイトカラーの仕事の話が法令違反企業に行き着いてしまったが、実は両者は無関係ではない。

犯罪や八百長、差別といった社会問題を経済学の立場から切った『ヤバい経済学』(東洋経済新報社)というベストセラーがある。シカゴ大学の有名な経済学者、スティーブン・D・レヴィットとジャーナリストのスティーブン・J・ダブナーの共著である。ここに麻薬の売人の話が出て来るのだが、法令違反企業で働く人はまさにその売人のような立場に追い込まれている。ひと握りのトップを除いて収入が極端に低く、仕事のスキルをいくら磨いても他では通用しない。つまり転職が難しい。先に私が定義した「給料が安く、長時間労働を強いられ、ご褒美が用意されているように見えて実はない、かつ仕事のノウハウが身に付かない企業」の典型だ。

ホワイトカラーの時短を考えるには、繰り返すが、仕事の効率アップが必要となる。そのためには自分が従事している仕事の意味をつきつめ、何が肝心で何が不要か、何が転用可能なノウハウなのか、をしっかりと考える必要がある。それをやらないと、「その企業でしか通用しない人」になってしまうのではないだろうか。それは本人にとっても、企業にとってもよいことではない。

そうしたプロセスは1人でできることではないだろう。上司の助力とコミットが必要だ。

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