今年の景気と求人を占う-年内一杯は右肩上がり。その後は?

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景気動向に着目し、他社が動かない不況期こそ採用を進める戦略も練るべきだろう。

リクルートエージェントが2008年10月に創刊したのが人事専門誌『HRmics』(年3回、4月・8月・12月発行)です。発行の翌月に、誌面では紹介しきれなかった情報をライブでお伝えするHRmicsレビューを社内で開催しています。今回は、5月13日に行われたレビューの模様を、HRmics副編集長の荻野が3回にわたって報告します。講演者は、同誌編集長の海老原嗣生です。※2010/06/03の記事です。

昨年の予想、今年の実態

突如、降って湧いたようなギリシャ発のユーロ危機。EUとECB(欧州中央銀行)による緊急支援策の実施で最悪の事態は回避されたが、暗雲がすべて晴れたわけではない。ギリシャの経済再建は茨の道が予想され、同じような財政赤字を抱えたポルトガルやスペインにまで金融危機が連鎖する可能性も高まっている。

海老原は冒頭、「せっかく、リーマン・ショックの傷が癒え、景気も持ち直してきたのに、再度、世界不況に陥る可能性がある」と、今後の景気拡大待望論にまずは釘を刺す。

さて、景気と市場動向は密接に関連している。求人もひとつの市場だから、景気の今後を占うことで、求人市場の動向を予想することができる。

海老原は昨年6月配信の本メルマガで、今後の景気と求人市場の予測を行っていた。主なポイントは次の3つである。

1つ目、今回の不況の谷が深いのは、ジョージ・ソロスが指摘する「たそがれ効果」によるが、景気の底打ちは早い。

景気拡大が長引いたため、景気が下降しても生産調整のブレーキが利かず、過剰在庫が積み上がってしまった。要は既に西の空に没した(=景気拡大は終わった)のに、空が赤い「たそがれ」が続いているから、夜(=不況)はまだ来ない、と錯覚する。これが「たそがれ効果」だ。

人々がそのたそがれに酔っている間、突如、起きたのが2008年9月のリーマン・ショック。今度はあわてふためいて、過剰在庫の調整に走ったため、ブレーキが利き過ぎ、必要以上の生産縮小が行われた。その結果、景気の過剰減速が起きて、谷が深くなったのである。2009年前半がまさにその時期。実体以上に輸出産業が低迷するが、早晩、生産調整が終わり、景気は底打ちするだろう、と。 

2つ目は、不況の主役が2009年度前半に交代、輸出産業に代わって、日用品中心の内需産業の業績が低迷する。消費者の懐が冷え切り、家計の景気回復が遅れるからだ。

3つ目は景気回復と人材需要の盛り上がりのタイムラグについて言及した。不況に突入する直前の好景気の期間が長かったことが幸いし、企業側に過剰雇用・過剰設備感がないため、両者のタイムラグは存在せず、景気回復とともに人材需要も伸び、求人も回復するだろう、と。

海老原は、データに基づき、「以上3つの予測がほぼ的中した」と明言した。

指標の動きが一致する「不思議な景気回復」

さて問題はこれからの景気と求人動向だが、まず参考になるのが一昨年末からのCI値の推移である(下図)。CI値とは内閣府が毎月発表する景気動向指数のことで、生産や雇用など、経済活動のよしあしを示す景気指標のうち、敏感な指標の動きを統合して作られている。ちなみにCIとはコンポジット・インデックスの略である。

図表/景気動向指数

CI値を構成する指標は29種類があり、景気を先取りする「先行指標」、並行して動く「一致指標」、景気に遅れて動く「遅行指標」の3つに大別される。今回の景気回復で特徴的なのは、海老原いわく「本来は動きがずれる先行指標と、一致指標、そして遅行指標が、それぞれタイムラグなく動いていることだ」という。

先行指標の代表例である新規求人数、同じく一致指数の代表例である有効求人倍率、遅行指標である失業率の動きからも、それが顕著に見てとれるというのだ。

なぜそうなっているのか。2つの原因が考えられるという。

海老原:「最初の理由は、先述したように、過剰雇用が少なかったこと。だからこそ、景気回復が求人回復にすぐつながった。もうひとつは、エコポイント制やエコカー減税に代表される大規模な景気対策が行われたことです。データを見ても、消費の伸びが顕著なのは、そういった景気対策が行われた分野だけです。そういう意味では景気対策の終了とともに、景気が減速する可能性が高いともいえる」

ただ悲観的になるのは早計である。景気対策はまだ終わっていない。なかでも目玉は6月から支給される「子ども手当」だ。

海老原:「夏のボーナスも企業の好業績を反映して久しぶりの高水準が期待できるので、日用品消費にも弾みがつく。6月から7月にかけて景気に勢いが生まれるでしょう」

国際政治の面でも景気の年内安定は約束されているようなものだという。日本では7月に参院選があるし、アメリカでも11月に下院の中間選挙が控えている。中国では上海万博が10月まで続く。年内いっぱいは景気最優先で行かなければならない事情が主要3カ国の政府に共通してあるのだ。

海老原:「来年は逆に、日米中ともに、選挙や万博といった大きな政治イベントがありません。景気よりも金融引き締めによる財政再建が優先されるかもしれない。とすると、景気反転の大きな転機が年末にやってくる可能性が大いにあります」

どうなる?今年後半の求人市場

こうした景気環境のもとで、求人市場はどう動くのだろうか。直近2回の景気回復期におけるリクルートエージェント社の転職決定数の拡大ぶりを、企業特性別、求職者の年齢別、企業の地域別、求職者の職種別に分けた4つのデータを参照しながら、海老原が提示した求人予測は次の3つである。

その(1):首都圏に本社がある外資系企業の若手採用が回復牽引の先頭集団になる。

海老原:「今回の不況で、若手採用を抑える企業が多いなかで、唯一といっていいほど、安定的な採用を続けていたのが外資系の、いわゆるカタカナ生保の営業でした。完全歩合制のキツい仕事なので、求人競合が多くなる好況期にはいい人は採れない、ということで、あえて不況期に狙いを定めたことが功を奏し、実際に優秀な若手人材の採用に成功しています。景気回復が顕著になるこの6月、外資系医薬のMRの募集が活発になる可能性が高い。カタカナ生保の営業と外資のMRを巡る採用争奪戦が起こるかもしれない」

その(2):続いて、IT系、もしくは外資系大手企業が求人を牽引する

海老原:「7月以降、この2強が採用強化に走るでしょう。同じ時期、首都圏以外の地域でも、採用が活発になるはずです」

その(3):国内大手企業が採用を増やすのは10月以降になる

海老原:「景気の本格的な回復を受けて参戦する形です」

こうした景気動向を踏まえ、そもそも中途採用はどうあるべきか。海老原が推奨するのが不況期に的を絞った採用で成功したカタカナ生保のやり方だ。

海老原:「皆さん、誤解するのですが、不況期も好況期も、転職者の数自体はあまり変わりません。変わるのは、採用広告、転職エージェントなど、有料の採用手段の利用が不況期に激減するということだけ。つまり転職市場の規模(=転職者数)は変わらず、人材獲得競争が緩やかになるだけなのです(下図)。だからこそ、不況期には採用を活発に行い、好況期にはむしろ引く、そういう他がやらない“猫の目戦略”を取ってみてはいかがでしょう」

図表/景気と求人・求職関連指標の関係

事業が拡大し、人手が足りなくなったから中途採用で補う。それはもちろんあっていい。しかし一方で、景気動向に着目し、他社が動かない不況期こそ、粛々と採用を進める。そういう中期的な戦略も練るべきなのだろう。

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