生保業界-玉突きは続くよ、医療保険までも

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少子高齢化という人口動態の影響を一番強く受ける生保業界。この変化と進化を見ていきます。

翳(かげ)りそうで翳らない今年の景気。円高一服と日米金融緩和により、日経平均も一時の不調から完全に脱して上伸を続けています。7~9月期のGDPも速報値では予想以上の数字を示し、あとは、エコカー買換え・エコポイントの終了の余波くらいが気になるところ。そんな景況感を反映してか、最近、とみに若手営業スタッフの採用が増えつつあります。中でも本格的に積極採用を進める生保業界に、今回はスポットを当てました。レポートはHRmics編集長の海老原嗣生でお送りします。※2010/12/09の記事です。

不況で求人減少→カタカナ生保のフルコミ営業への応募が増加

生保業界-玉突きは続くよ、医療保険までも

陣取り合戦というか、玉突き現象というか。昨年に続き、またまた生保業界に変化が起きている。

今年の話に入る前に、まずは昨年の状況をざっと振り返っておこう。

  1. 1、外資系生保(カタカナ生保)の個人向け営業スタッフが、大幅増員。フルコミッションで一攫千金が可能なこの仕事の場合、好況期で求人が豊富な時はそれほど人気も高くないのだが、不況で他の求人が減る中、人気を集めた。
  2. 2、損保系生保(ひらがな生保)が、チャネル営業を強化。自動車保険加入者への生保の勧誘のために、カーディーラーへの営業要員や、経営者向け節税目的の生保販売のために、税理士や社労士への営業要員などを募集。生保や損保の営業経験者が集まった。
  3. 3、従来の生保(漢字系生保)はこうした中で、窓口販売の強化や外交員のリテンションなどの対策を行った。

以上の3つの動きが目立ったが、根本には、不況で求人が少なくなり、良い条件の求人に人が集まりやすくなった需給要因があるといえるだろう。そういう意味で、不況期に逆張りで採用を成功させたカタカナ生保主導で業界全体に変化が生まれた、と考えられる。

守勢から攻勢に転じた医療保険

今年は、この変動に、あらたに医療保険が加わった。

もともと、大規模な広告とその反響営業をコールセンターで受ける、といった営業スタイル(営業スタッフを通さない=ダイレクト営業)で知られた医療保険において、昨今は営業スタッフの募集が広まり出している。生保業界全体が医療保険に右へ倣えで、ダイレクト営業比率が高まる中、当の医療保険だけがなぜ先祖返りとも言える動きをしているのか。

理由は二つ挙げられるだろう。

一つは、1980年代後半に規制緩和された医療保険は、それまで開拓が進んでいなかった領域だけに、外資が「掛け捨て型」で値ごろな製品を作り、痛し痒しのサービスを付加することにより、面白いように売上を伸ばしてきた。しかし、昨今ではこうした「おいしい」市場に漢字系・ひらがな系生保が一斉に参入し、同時に日本全体の人口減少もあいまって、売上が伸び悩みつつある。こうした「市場の飽和感」の中で、「待ち」の営業ではなく、積極的に「攻める」営業が余儀なくされた、というのが、一つ目の理由だ。

もう一つ、医療保険各社にとって頭の痛い問題があった。それが、カタカナ生保による「トータルプランニング営業」なのだ。カタカナ系生保が行う営業活動は、生活設計と称して、パソコン片手に営業スタッフが、現在他社で加入している「死亡保険」「養老・年金・貯蓄保険」「医療保険」の全てをパッケージにして、「トータルで○円安くなります」という提案をする。一度この営業により顧客が鞍替えを起こした場合、今まで「死亡保険」と棲み分けて並存してきた「医療保険」まで、業界勢力図が変わってくることになる。そう、もう「カタカナ攻勢」は対岸の火事ではなくなってきた。一昨年来のカタカナ生保の強化により、この流れが日増しに強くなっている。そこで、防戦一方だった医療保険各社が攻めに転じた、というのが「営業スタッフ拡充」の二つ目の理由なのだ。

とどのつまり、ここでも昨年の勢力地図の変化と同じ図式が底流にはあると、言えるだろう。

ただし、医療系生保の営業の場合、以下のように他を凌駕するような魅力がある。

  • ・すでに医療系保険に加入している人を相手にした営業。全く関係ない顧客に対しての新規開拓ではない。
  • ・既加入者にダイレクトメールやコールセンターにより一次アプローチをし、その中で「反響のあった人」のみに営業を行う。つまり、プレッシャーは少なく、受注確率は高い。
  • ・こうした半ば「待ち」に近い営業スタイルにもかかわらず、コミッションがつくため、高額な報酬を手にすることも可能。

つまり、「ダイレクト営業」と「フルコミッション営業」のイイとこ取りなのが、この仕事といえるだろう。現在、求人自体も増えているが、それ以上に応募者や採用者の数の伸びの方が大きくなっている。カタカナ生保の攻勢に対して、ようやく一矢報いたといったところだろうか。

本当の業界変動はこれから10年が勝負どころ

生保業界は、そもそもここ15年ほど、各社がM&Aを繰り返し、勢力図を塗り換え続けてきた。もともと、企業や団体、官公庁などの互助会的な意味合いで設立された生保が多数あり、それら生保各社は自分たちの根城とするベースマーケットを確立していた。まずは、こうした「ベースマーケット」狙いのM&Aが進む。たとえば、官公庁に強かった協栄生命をプルデンシャル・ファイナンシャル・グループが買収し、ジブラルタ生命となった。同様に、商工会議所に強かった日本団体生命はアクサに吸収。トヨタ自動車に強かった千代田生命はAIGに買収された後、プルデンシャルへと移っている。つまり、「領土丸取り」を軸にした業界の変動が、第一幕だった。

次に、ひらがな生保、カタカナ系生保の急伸長が続き、さらに、その結果、「死亡保険」と「医療保険」の壁が壊れた。

こんな形で、規制や垣根は壊れ、業界のみならず生保各社も進化して来た。

もちろん、そのおかげで、生保商品そのものもずいぶんと便利になった。その昔、ともすれば「お付き合い」で加入していた死亡保険は、確固たるフィナンシャルプランニングの上に、生きていくうえでのあらゆるリスクに対応可能な商品となっている。

さて、ここまで来ると、この業界の進化も終わりに近づいているのだろうか?

答えはNoだろう。

これから先、少子高齢化の進展により、加入者よりも死亡者が増える時期にさしかかる。この人口動態の変化を一番強く受ける業界だけに、さらに大幅な変動が起きることは予想に難くない。バブル崩壊から今に至る20年間の変化は、「人口減少という本番」前の前哨戦に過ぎないのかもしれない。

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