ホワイトカラー主流社会がミスマッチを生み出す

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なぜ高卒・中卒者に非正規が増えたのか?そして、残った「男子×大卒者」の非正規の真相はどういうことなのか?

HRmics編集長海老原嗣生氏が解説します。※2011/07/07の記事です。

高卒かわいそう論のホント

なぜ、世の中には高卒・中卒者の非正規社員が多くなったか?

それは、「大卒相応の仕事が減った」からではない。ここを多くの識者が間違っている。

なくなったのは、「高卒の人が従来就いていた仕事」の方だ。

激減した「高卒の人が多く就いていた仕事」とは、農業・製造業・建設業、そして自営業。そのすさまじいまでの減少度合いを、(図1)は示している。

1990年~2010年の20年間での就労人口の増減の図

なぜこうした仕事が減ったか?この理由は、やはり「グローバル化」であろう。農業は世界標準の市場価格に敗れ、製造業は途上国の低賃金に敗れ、自営業と建設業は一連の流れ中で合理化が進んで縮小していった。

こうして、高卒相応の仕事の受け皿が縮小したことにより、雇用のかたちは大きくゆがんでいく。

ただし、「高卒かわいそう」論にも一部誤解はある。それを以下に少し触れておこう。

それは、「高卒の仕事がなくなったのではなく、同じ仕事でも大卒でないと雇わなくなった」という論調。例えば、もともと、高卒総合職で採用していたホワイトカラー職を、大卒に格上げした、という主張である。この話には首肯できない部分がある。

営業などの対人折衝業務については、営業先の相手方も「大人」であるため、ある程度の年齢をとった人しかその職に就けない、という宿命があった。そのため、30年以上前でもすでにその大半は「大卒」が基本となっており、高卒で同職に採用されるのは、70年代にまでさかのぼらなければならないからだ。つまり、70年代と80年代の比較であれば、「高卒だった仕事が大卒に格上げになった」というのも正しいのだが、80年代と今の比較では通用しない部分が多い。つまり、「元々高卒相応だった職種が、(なくなりはせず)大卒に格上げになった」という論調は、正鵠を射ているとはいえない。80年代の比較と今で大きく変わったのは、「高卒相応の仕事が(格上げではなく)日本からなくなった」ことが問題としてはやはり大きいだろう。

就職問題をこじらせた文科省の罪

こうした高卒で職に就けない人たちはどうしたか?

結局大学に行くしかない。そのこともあって、大学進学率は上がった。それはむべなるかな、というところだ。ただし、ここで文科省および厚労省はあまりにも無策だった。

大卒相応の仕事は、何度も言うが決して減少はしていない。むしろ増えている。(図2)をご覧いただければ、長期的には増加傾向にあることがわかるだろう。こんな「ホワイトカラー領域」ではグローバル化も余り関係ない。日本企業が海外進出して外国に拠点が増えたとしても、売上自体が増えるなら、本社機能は拡充する。そのうえ、海外拠点の管理職に「日本人」が就くことも多いので、ポストも増える。だから決して高卒相応職のように減りはしない。そして、人口減少は2005年から始まったばかりで、内需産業もそれまでは延びてきた。だから、80年代から継続的にこの領域では、求人が緩やかに増えている。

「新卒が減っている」という誤解の図

それでも、大卒求人の増加よりも、大学生の増加の方がはるかに大きく、大学生余りが生じた(詳細は前著をご参照ください)。これが、現在の就職氷河期に結びついていく。

ここで問題となるのが、文科省の行政なのだ。「高卒に仕事が減った」→「大学に進学させる」、このあと当然起こるだろう問題「大卒の就職口がなくなる」に対して、まったく考慮していなかったこと。それを叱責したい。これじゃ、問題の先送り以外の何物でもないだろう。

この本質を考えないで、「不況で大企業が採用を減らした」「新卒一括採用が駄目だ」とばかり言い続けることは意味がない。

要は、増えすぎた大学生をどう仕事に誘うかなのだ。そこには、かつての高卒相応職はない。いわゆる大企業を中心とした採用ゾーンも、数は多少増えてはいるが、彼らを受け止めるには心もとない。とすれば、過去から連綿と人材不足であり、しかもそれなりの年齢となった人間が欲しい「中堅中小企業のホワイトカラー」への誘いをとうの昔に始めているべきだった。それが就職問題をここまでこじらせてしまった文科省の大罪といえるだろう。

端的にいえば、「かつての高卒相応職」と「現在の中堅中小企業のホワイトカラー」のトレードオフ関係になる。この傾向は、過去20年来ずっと一貫していることが、(図1)でも見てとれるだろう。その昔、中小企業は大学新卒ではとても若年者を採用できなかったものが、最近では、若年採用者のほぼ半数を新卒が占めるまでに増えている。

ただ、この入り口で就職できなかった人たちが、やはりまだ残る。その結果、就業構造調査でみると、大卒(既卒)男子で20代前半は約17%が非正規として働くことになる。ただこの非正規比率は、20代後半では12%に、30代前半では7%に、そして、30代後半では4%にまで減っていく。つまり、齢を重ねるに連れて、非正規率はどんどん下がっている。そんな事実があるのだ。これは決して、「30代の人は恵まれている。今の若者はソン!」ということではない。たとえばその前の調査(2002年)でも前々回(1997年)調査でも20代前半は、ほぼ今と同様の非正規率(16~18%)となっている。つまり、少なくとも15年近く前から、20代前半の非正規率は今同様に高かった。その当時20代前半だった人が、齢をとるにしたがって、次第に正社員率が上がってきた、というのが事実といえるだろう。

文科省と厚労省は、「交通整理」に注力すべき

では、大卒時点で非正規社員だった人は、どんな企業で正社員となっていくのか。これも就業構造基本統計からみると、大体がわかる。それは、ずばり中小企業!

少し頭を整理して考えてみよう。

ここ20年ちょっとで大学の数は7割も増え、大学卒業生も6割も増えた。猛烈に増えた大学生が、卒業時点で交通整理がつかず、うまく就職できない。それが就職氷河と呼ばれるようになった。ただ、彼らは一生フリーターというのは行きすぎで、その多くは30代までに中小企業で正社員となっている。要は、ここに時間がかかりすぎている。

かといって、学生や既卒者を「えり好みだ」と批判する気は私にはない。要は、中小企業というのは「知らない」「わからない」ものであり、また、製造や農業や商店や建設と異なり、ホワイトカラーというのも「やってみない限りわからない」仕事だからだ。とすると、普通に放っておけば、こうした「中小企業の」の「ホワイトカラー」職と求職者の組み合わせには自ずと時間がかかる。だから、大卒男子でも20代後半まで非正規率は10%を超えてしまうのだ。

とすると、行政や自治体はこの問題の解決に全力をあげて取り組むべき、ということだろう。それは、今彼らが行っている「中小企業のお金をばらまく」という話ではない。まずは、学生や求職者たちが、中小企業の仕事に興味を持ち、振り向いてもらえるよう、そこに知恵を使うべきだ。こうした交通整理をして、非正規高止まりが20代の間ずっと続くなどという問題をぜひ、解決してほしいものだ。

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