「仕事さえあれば」という施策の限界

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なぜ、若者は辞めるのか。その対策はあるのか。

昨年10月に厚労省から発表された若年者の離職状況をもとに、前回は、若者が辞めるのは、我慢が足りないからでも、いい求人に目移りするからでもない、という状況を解説しました。ではなぜ、若者は辞めてしまうのか。そこには、過去から連綿と続く日本独特の事情と、近年増えている、ホワイトカラー主流の先進国共通の悩みがあるようです。今回も、雇用のカリスマ、海老原嗣生(HRmics編集長)が続編をお送りいたします。※2013/03/14の記事です。

若者は3年で辞めてきた

若者は3年で辞める。この話がつい最近始まったように報道されることに、私は異議を唱えてきた。前回記事のデータでもわかるとおり、もう20年以上昔から、大卒は3年で25%以上辞めている。高卒ならば1970年代から入社後3年で4割以上の離職率。中卒だと、7割に迫る。要は、若者は昔から辞めていた。それも大量に。

なぜ、こんなことが起きるのか。

それこそ、日本型就労の本当の問題だろう。それを、「最近だけの話」ととらえるから、私は反発をしてきたのだ。

今回はなぜ若者は3年で辞めるのか、その真相を説明していきたい。

ネグレクト(欧米)VS.ハラスメント(日本)という違い

まず、日本型雇用と欧米型雇用の違いが、若年雇用でも異なる問題を生み出している。この連載で何度も書いてきたことなので、ざっと説明するが、欧米の場合、日本と違って、年齢とともに誰もが昇進・昇格をしていくような雇用システムではない。一つの職務をまっとうする人たちが多数であり、その中のうちの、経営向きの人が抜擢で昇進するか、もしくは、最初からコースが異なるエリート層が経営専門家として育てられる。

とすると、営業、経理、人事などでも職務を黙々とこなすベテラン層が多数いる。彼らは上級役職者にはならないため、年収はそれほど上がらない。つまり、熟達した比較的低賃金の労働者が多数存在する。そのため、未熟な若者を雇い入れるメリットが少ない。結果、起きるのは、若年失業率の高止まりだ。

一方の日本では、どの職務で仕事についても、それは将来、管理職になるための入口、という暗黙の了解がある。そのため、年齢とともに、係長まではほぼ全員が上がり、その中のやはり大半は課長まで昇進する。こうして、40代後半にもなれば、初任給の3倍近い給料となり、しかも役職者となった多くの人は、実務からは離れていく。

とすると、実務を行う若者が必要となり、しかも、彼らは熟年の3分の1という安い賃金のため、好んで迎え入れられる。だから、日本の若年失業率は先進国の中で極めて低い部類にはいる。しかし、その裏では、年齢が高い熟年層は「実務をせず」「指導・管理に徹する」という、いわば口うるさい熟年層が若年を顎で使う、という光景が何の疑問もなく常識的に繰り広げられている。

つまり、若年雇用の問題点を端的にいえば、欧米は若者を就労しないという「ネグレクト」であり、日本は若年を雇用するが、こき使うという「ハラスメント」ということになるだろう。この土壌があるからこそ、度を超えたハラスメントやブラック企業問題なども、「若い時は苦労して当たり前」と、見過ごされがちだったのだろう。もちろん、日本型には、丁寧に若年者を育てるという面や、誰もが出世の階段を登れるという夢もあるが、その反面、こうした問題も内包していた。ここでは問題点を強く指摘しておく。

中身を知らずに就職する日本の慣行

こうした「ハラスメント」風土とは別に、早期離職を生み出す理由が、日本的就労の中にもう一つ指摘できる。それは、仕事の中身を知らずに就職をする、という風習があることと言えるだろう。

ただし、ここは俗諺をあらかじめ否定してから真相を語りたい。まず、世に言われるのは、「欧米では、学生時代に修学した専門により仕事が決まる」という話。確かに、職人や農業・水産業に就労する人が圧倒的多数であれば、それも事実であっただろう。しかし、ホワイトカラー中心の現在においては、この話には無理がある。たとえば、営業にしろ、総務にしろ、人事にしろ、大学でそれを教える学部はない(ホンの一部、たとえば組織心理でリーダーシップを教えたりはするが、それがすべてとは言えない)。経理とて、経営学部や商学部のカリキュラムとはほど遠い。システム開発の場合も、どの国でも「情報工学科卒」を採用するわけではない。多くのホワイトカラーは、一部の専門的職務を除くと、そのほとんどが、学校での専攻と余り関係のない職務内容となっている。だから、「学校で学んでいないから」という理由は、日本だけの話ではないといえるだろう。

それよりも、入職の入口に、インターンシップやインターン、デュアルシステムといった形でのお試し労働があるかないか。このことが大きいと私は感じている。どんなにキャリア教育で仕事を教えたって、働いてみない限り、それがどんなものかは実感できないだろう。ましてや、社風や会社の価値観などは、個社別なのでキャリア教育で対応するのは無理だし、ハローワークの職員でも、すべてをリアルに説明するのは無理だろう。そうした意味で、「お試しワーク」のある欧州、それが脆弱な日本という違いは大きいと思われる。

ホワイトカラー化で精神的ストレスの三重奏

そして、3つ目。過去とは異なる近年の問題。それが、ホワイトカラー化にあると私は考えている。

ホワイトカラーは実はハラスメントの温床ともいえるのだ。たとえば、水産業で漁船に乗りこんだ場合、嵐の中で腰高に作業をしていたら、蹴り飛ばされるだろう。ただ、そうして転んだおかげで、海に落ちずに命拾いしたりもする。蹴られた方は、その理由も必然性もよく分かり、それを「ハラスメント」とは決して感じはしない。一方、営業職に就いていて、アポ採りの電話をする時に、じっくり顧客情報を調べていたら、上司からいきなり、「深く考えんで、まず動け。電話掛けの本数が勝負だ」と怒鳴られたら。部下は部下なりに「じっくり調べた方が効率が良い」と考えていたわけで、上司の「まず動け」が正しいかどうか、そこに納得はできないだろう。そう、ホワイトカラー職の場合、何が正しいかはわからない。それを、上司や会社は、「これが正しい」と押しつける形の指導となる。そこにストレスがたまることになる。

「正解がわからない」ことに加えて、業務量やルーティンも見えない。これが、製造業や建設業なら、一日の仕事量も見えるし、具体的なルーティンもわかるだろう。そこから、何時間働くことになるかもわかる。そして、それができないとき、標準より物覚えが遅いなどとも自覚できるだろう。ところが、同じように営業職の場合、売上目標だけは明確に提示されるが、そのやり方、付随する業務量、それを成し遂げるための業務時間なども全く見当がつかない。ここでもまたストレスがたまる。

さらには、第一次産業、第二次産業ともに、就労者が顧客と接する場面は少ないのだが、サービス産業やホワイトカラーは、常に顧客接点に立たされることになる。お客様は神様だから絶対的に正しい、という誤解が日本には蔓延しているため、未習熟な若者が顧客接点に立てば、たいていの場合、ストレスをため込むことになる。

確かにブルーカラーや建設業であれば、3K的な肉体的ストレスはたまる可能性が高い。しかし、精神的ストレスに関しては、ホワイトカラーが断然たまり易い。そこから、離職につながるケースが多くなると考えられる。

「就職さえすれば良い」から「良き仕事に就ける」へ

さて、ではこの、今日的問題に対して、解決策はあるのだろうか?

私は二つの意味で、「お試しに働いてから会社を選べる」仕組みを提示したい。

まず、もうすでに書いたとおり、欧米的なインターンやインターンシップがあれば、働いて、仕事や職場環境を確かめてからそこに就職できる。書面には表せないけれど、いぶし銀のようないい企業は、こうした仕組みで見つけられるようになるだろう。

二つ目は、社風や価値観の摺り合わせ、という意味だ。たとえば、A君にとって最悪だと思われた企業でも、B君は長く勤続しているなどのケースは多い。要は、A君とB君の性格や価値観が異なり、B君はその会社に合っていたということだ。

会社の社風や考え方に合えば、「まず動け」と指示されても、「そのとおり」と受け入れられる。合わない場合は、「なんで考えていちゃいけないのか」と不満となるだろう。こうして前向きに受け入れられる人は、上司や先輩からも「なかなかいい新人」とかわいがられることになる。一方、しぶしぶ言うことを聞いている人は、疎んじられ、仲間外れやいじめへとつながり易い。ホワイトカラーという「正解」が見えない仕事だけに、仕事の進め方や社風などが合う組み合わせに落ち着くことは、きわめて重要となるだろう。

ちなみに、ホワイトカラー化が同じように進行している欧米でも、職務に正解は見えなくなったため、会社のやり方に合わせられることは重要になってきている。そのため、海外の企業でも、理念や仕事の進め方の近しいタイプを採用することに血道をあげている。それが、●○Wayとか、●○Methodなどの言葉となって、採用基準として、明示されている外資系企業が多いことも、すでに周知の事実だろう。

にもかかわらず、「仕事さえあれば、若者は働き、しかも、何年か我慢させて慣れれば、辞めなくなる」という誤解が広がりつつある。それが、日本維新の会の「最低賃金法撤廃」や政府の規制改革会議における「解雇規制緩和」論につながっている気がしてならない。いずれも、「給与は安くて、いつクビ切られる不安があろうが、仕事さえあればいい」という考えが根底にあるとみてとれるからだ。しかし、無理な仕事に入れば、やがて人は辞めていく。

そんな「求人の質より量」を重視する方策よりも、今ある求人で、無理のないカップルを作っていく方向に、企業も行政も力点を変えていく方が、求職者にも会社経営にも資するはずだと私は考えている。

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