年収263万円未満の世帯で住宅購入増加?

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住宅購入チャンスの時期。「低年収層で住宅購入が進む」とも報道されました。

アベノミクスで日銀の国債大量買い入れが予想される中、長期金利は史上最低を更新しそうな低下を見せています。その煽りで、市場金利は下がり、住宅ローンはまさに史上最低レベル。そこにリーマン後の不動産価格下落が相まって、日経新聞では、「低年収層で住宅購入が進む」と大きく報道されました。サラリーマン諸氏も、同記事を読んで、「本気で住宅の購入を」と焦ったかもしれません。ことの真相の見極めを、この人、HRmics編集長の海老原嗣生にお願いしたいと思います。※2013/04/11の記事です。

可処分所得10万円代で住宅が購入できるのか、という素朴な疑問

いやあ、本当に驚いた。

このタイトルを、一面トップにしてしまってよいのだろうかと、読んですぐにそう思った。その記事は、3月18日付の日経新聞に載っていた。

「持ち家8割、夢とリスク 低所得層で急増、価格・金利の低下追い風」

低所得者が持ち家をどんどん購入している!不況で住宅価格が下がり、そこに金利低下が追い風となっている、というタイトル。その筋立てに沿って、記事は展開されていく。

「(総務省の家計調査によると)世帯年収を5分割したうち一番低い層(平均年収263万円)の持ち家率は今年1月に82.4%で、直近で低かった11年7月から10ポイント以上も上昇した。年収別で3位の世帯(平均年収513万円)の80.1%を上回る・・・中古マンション価格を示す東証の住宅価格指数はリーマン危機後の08~09年を下回り、足元は8年ぶりの低水準だ・・・金利低下も追い風だ。拡大中の住宅金融支援機構の長期固定金利ローン『フラット35』は、主力の21年以上で取扱金融機関の最低金利が1.81%と1年半で0.5%低下し、03年のサービス開始以来の最低を更新した・・・『月々の負担をさほど増やさなくてもマイホームに手が届くようになってきた』(都内の不動産業者)との指摘がある」

年収263万円以下の低所得層といえば、エンゲル係数も非常に高くなるだろう。月々20万円程度の所得で、税金や社会保障費などを抜いた可処分所得は、明らかに15~20万円程度となるだろう。こうした人たちが、低金利だからと、本当に住宅が買えるのか?

いくら高収入と言われる新聞記者でもそのあたりは想像がつかないものだろうか。

このデータ、少し家計調査に詳しい人間が見ればすぐにわかる。壮年期にマイホームを手に入れた人たちが、現役を退き、年金収入一本になったために、低所得になった。それだけの話なのだ。

持ち家層が高齢化で年収ダウンという真相

まず、世の高齢者は潤沢な企業年金・厚生年金・基礎年金で潤っている逃げ切り世代だ、という印象が強いが、これはここで何度か指摘してきたとおり、「誤り」だ。

高齢世代が社会人となった1960年以前は、人口構成の4割以上が農業に従事していた。1960年代以降になると、今度は自営業者が増え、その比率は3割を超える。こうした農業・自営業者は厚生年金・企業年金はもちろん非加入で支給されない。

さらにいえば、1989年まで従業員数30人未満の中小企業には厚生年金加入義務がなかったため、基礎年金のみしか加入していない人たちが多い。そして、1986年まではサラリーマンの配偶者で無職の人たち(≒専業主婦)も今のように3号保険がなかったため、こちらでは基礎年金未加入者が生まれている。こうした状況のため、20歳から3階建ての年金にフルに入っている人たちなどごく少数となる。社会保険庁の発表データをもとに、2007年度分で推計すると、月額20万円以上の年金(基礎年金+厚生年金)収入がある人は、年金加入者の16%に満たない。

こうした状況のため、高齢者の世帯収入は非常に低くなっている。2010年度の国民生活基礎調査をもとに、高齢者世帯の年収を見ると、その中央値は243万円。つまり大半の人たちが、今回調査の最低年収層(263万円未満)になるのだ。

さらに加えて書けば、年収200万円未満の貧困世帯のうちの高齢者世帯は49%とほぼ半数を占めるほどになっている。

この状況からすれば、現役時代に家を買った世代が、年金生活者となり、現在は低年収になっているだけ、という形で低年収層の持ち家比率が上がっているということが、想像できるだろう。

実際の新規住宅購入者の平均年収は約700万円

さて、ここまでの推論が正しいかどうかを、今度は、当の家計調査を見て、明らかにしていくことにしよう。

まず、同調査にある勤労世帯の持ち家比率を見てみると、こちらは61%となっている。全体が80%超という数字を考え合わせれば、勤労者のいない高齢世帯が持ち家比率をあげていることは容易に想像がつく。

これを確かめるために、年齢別持ち家世帯比率を出してみた(図表1)。ご覧いただければ説明は不要だろう。明らかに、「高齢者が高い持ち家率」を示している。

図表1:年代別持ち家比率

ダメ押しのために、もう一つ、決定的なデータを図表2として挙げておく。

図表2:住宅取得年次別の年間収入(2011年度調査)

こちらは、取得年次別の(その取得年度の)年間収入となる。2000年以降、ほとんどの年で、650~750万円の線が、住宅購入者の平均収入となっていることがわかるだろう。263万円を切る世帯で住宅の新規購入が進んでいることなどありえない話なのだ。

こうした現実的な指摘を想定してなのか、同記事は最後で以下のように結んでいる。

「12年は団塊世代の大量退職が始まった。給与所得がなくなって低所得層に分類される団塊が増え、家持ちの『豊かな低所得層』が生まれているという側面もある。」

これが正解ではあるのに、こうした言い訳的な表記にとどめ、その後に、それでもまだ自説に固執するような結びをつけている。

「ただ国内銀行の新規住宅ローンは昨年4~6月期には前年同期比14.8%増、7~9月期は9.0%増と、市場全体が拡大しつつある。14年4月の消費増税を控え、新築の駆け込み購入も膨らみそうだ。」

う~ん、今後、団塊の世代の大量の定年で、いよいよすべての統計における高齢者世代のシェアが高まっていく。そのたびごとに、高齢者世代の動向が、「低所得者の世帯動向」という形で報道されてしまうのではないか、と少し気を揉んだ今回の「データの真相」であった。

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