なぜ、うまくいきだしたのか、それは「既卒3年新卒扱い」という施策を厚生労働省が強く打ち出し、各種助成金も設けたため、企業が動いた、と報道されています。しかし、実態は少々異なるようです。常識のウソを暴くことでは定評のある、HRmicsの海老原嗣生編集長が今回もまた腕を振るいます。※2011/09/15の記事です。
なんとなく、耳触りの良い情報が流れて、ではどうしてそうなるのか、ともっともらしい説明が付け加えられると、真偽のほどはさておき、ふつうはそれを信じてしまいがちだ。こうしたことが重なり、まことしやかな説明の連鎖で、そういう情報はもう誰もが疑わない「常識」となってしまう。そんないつもの誤った常識がまた一つできてしまいそうな瀬戸際なので、ここで詳しく真相を書いておきたい。
今回は、既卒3年新卒扱いという施策が、昨今、うまくいっているという話。これは、厚生労働省が助成金や新卒応援ハローワーク、ジョブサポーターなど、若年雇用対策を強烈に推し進めたためという。
そんなニュースを一つ、取り上げてみよう。
“新卒一括採用”の慣例が崩れる?
未就職学生が次年度に大量就職へ
昨年度の未就職学生数(大学、短大、高校、専門学校の卒業生)は、約7.5万人いたと言われている。そのうち、1.9万人もの学生が、今夏までに実施された次年度採用(今年4~6月末時点)で就職を決めているのだという。大半の未就職学生が、慢性的な人手不足に悩む中小・零細企業へと流れているようだ。
(中略) 、「元企業人事部などのスタッフを“ジョブサポーター”としてハローワークに常駐させるなど、国策として新卒学生の就職支援をすることにした」(厚生労働省若年者雇用対策室)のだ。これまで、新卒学生がハローワークへ足を運ぶことなど皆無に等しかったが、就職の手段として、ハローワークの活用を認識し始めているのだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)
うれしい限りの話ではある。そして、この春夏で大学既卒者が1.9万人も正社員登用されたことは確かに事実だろう。しかし、これは今までになかったことなのか?そして、厚生労働省の若年雇用対策が実を結んだためなのか?
ここに過誤があると指摘しておきたい。
なぜか?
「企業は新卒一本しか採用しない」というのは大間違いなのだ。
昔から、従業員数100名以下の中小企業については、新卒採用はあまり行われず、採用の力点は、社会人中途採用が主力となっている。なぜなら、そうした知名度が低く規模が小さい会社は、大学生に採用広報を行ってもまず、ほとんど見向きもされないためだ。それを証明する資料をいくつか出しておこう。
まず、図表①では、中小企業は新卒で採用できた企業の比率が10%もないことがわかるだろうか?多くの企業は、事実上、新卒採用を行っていないに等しいということがわかるだろう。続いて図表②を見てみよう。こちらは、20~24歳の若年者採用行った企業を企業規模別に精査したものだ。規模が小さくなると新卒割合は減り、100名未満の企業では既卒が逆転、30名未満だと、3分の2近くが既卒となっている。ちなみに図表①の元データは2004年のもの。そう、別にここ最近の話ではなく、中小企業は以前から、社会人採用を主力としてきた。
さて、では、こうした中小企業の中途採用は、社会人経験者のみなのか、それともフリーターを登用してきたのか。こちらは2010年度の若年雇用実態調査を見てみよう。リーマンショック後の雇用最悪期が対象時期となったこの調査だが、2009年度の1年間に、既卒フリーターを採用した企業は、全企業の11.6%。一見少なく見えるため、日経新聞はこのデータをもとに、一面トップで、「日本の企業はフリーターに冷たい」と載せることになるが、精査するとこれは大間違いとわかる。
まず、その他の企業が新卒を採用していたのに、フリーターを採用しなかったというのではない。全体のうち、人を採用していない企業が52%。そもそも、採用活動を行った企業は48%しかなかったのだ。さらにいうと、採用活動した48%のうち、半数以上にあたる26.4%が採用をできなかった。つまり、新卒だって採用していないのだ。ここまでを差し引くと、採用ができた企業はわずか21.6%となってしまう。この「採用できた企業」を分母にすると、フリーターを採用した企業(11.6%)は半分以上(53%)となる。
どうだろう?
若年者を採用した企業のうち、半数以上がフリーターを採用している。それが中小企業の実態なのだ。それもよく考えてみよう。いくらフリーターが増えたとはいえ、世の中には正社員でふつうに働いている人の方がはるかに多い。普通なら、数に勝る元正社員や新卒学生の採用の方が、圧倒的に多くなるはずなのに、過半数がフリーター採用をしている、という事実。つまり、それくらい、中小企業にとっては、フリーターからの正社員採用は当たり前のことでもあった。
さて、いよいよ最後に決定的なデータを示そう。
厚生労働省の就業構造基本統計調査では、未就業者の入職状況が年代別に把握できる。これで、20~24歳の状況を調べると、なんと、年間9万4000人が、一般社員として採用されていることがわかる(図表③)。ちなみに、この数には、大卒だけではなく、中卒・高卒・短卒・専門卒も含まれる。とはいえ、現在のこの年齢の最終学歴構成からすれば、9万4000人の過半が大卒と考えられるだろう。
ちなみに、未就業者には、1年以上の長期離職者も含まれはするので、新卒→正社員就職→すぐに退職→1年以上の長期離職→入職という人も、カウントはされる。しかし、24歳までのデータだから、大卒の場合、ストレートで卒業しても22歳となるわけであり、就職後、よほど早い段階で離職し、しかも1年離職のあとすぐに転職したような、稀有なケースしか、こうした例外には当たらないはずだ。と考えると、その多くは、やはり新卒無業者が既卒なのに正社員として採用されたと考えるのが妥当だろう。
いかがだろうか?
毎年、何万人もの既卒フリーターが、中小企業に正社員登用されるのが、日本では当たり前であった。つまり、厚労省の施策があってもなくても、確実に若年既卒者は正社員化している。本来こうしたことが当たり前なのだから、ここに助成金などをつぎ込む必要などもないだろう。これは無駄金なのではないか?
そしてもう一つ付け加えておこう。
既卒者でもたった3か月の間に1.9万人も採用する「若年者枯渇感」が強い企業がこれほどあるという現実。こうした企業に、在学中の来年度新卒予定者が応募すれば、もちろん、既卒者以上に内定が取れやすい、という当たり前のことに、皆が気づくべきではないか。
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