経済展望と人材採用 vol.1-不況の主役、交代期を迎える

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随所に企業実務者の人肌コメントを入れ、過去の状況と比較しながら、今後の展望を描きます。

今回から3回にわたって、今後の経済展望と人材採用についてをお送りします。景気予測ではリクルートエージェント時代から社内では定評のあったHRmics編集長/海老原のレポートです。※2009/06/11の記事です。

たそがれ後半が終わり、底打ちをした輸出産業

今回の不況についてのおさらいを、まずは駆け足でしておこう。

なぜこれほどまでに急激な景気後退が起きたか。これは、ジョージ・ソロスの言う「たそがれ効果」に他ならない。景気下降は07年10月より始まっていたのだが、好景気慣れした企業はなかなかアクセルを緩めず、投資・採用・生産を続けた。この生産活動により、景気は一見下降はしなかったが、その分、「在庫」が増え、景気の先行きに不安を募らせ続けた。こうした中で、昨年9月のリーマンショックにいたり、景気はもうどうにもならないという状態に皆が気付き、積み上がった在庫を処分しなければ、というシフトチェンジで、猛烈な在庫調整=減産が始まった。これが昨年末。

この状況を「たそがれ効果」と呼ぶ。日は暮れている(景気は下降を始めている)のにまだ薄明かりが指している(生産をし続ける)さまをたそがれに例えている。細かく言えば、この生産を続けている状態を「たそがれ前半戦」、やばい、と気づいて急ブレーキを踏んだ昨年末以降を「たそがれ後半戦」という。さながら、秋の日はつるべ落とし、のごとく、真っ暗闇がやってきた。

たそがれ効果の図

たそがれ効果は景気の下降期には付き物だが、今回はそれが極めて大きく長くならざるを得ない状況だった。まず、好景気が長過ぎた。次に、05年に一回景気は踊り場を向かえたが、踊り場を越えると再び好況が続いた。つまり、05年にブレーキを踏んだ経営者は、経営手腕を問われてしまったのだ。そして、景気終末期の長期高原状態。景気は下降を始める遥か1年以上前の06年夏から、たそがれ前半が終わる08年8月まで、ほぼCi値±2という、高原状態を2年以上も維持していた。尖った山なら警戒もするが、緩やかな高原だと、このままずっと続く、という気持ちになりがちだ。こうした3つの事情が重なり、経営の慣性の法則が極大化したために、今回のたそがれ期は長く、後半戦の落ち込みは深くなったのだろう。

ただし、急減産により在庫が適正になれば、過剰な生産調整は終わる。自動車だと3~5月、家電がもう一足早く、たそがれ後半を抜け出し、普通並みの不況に戻るはずだ。

と同時に、世界各地での景気対策でインフラ関連・素材関連などの需要が拡大を始める。こうした状況により、今年の中盤には景気が底打ちをし、最悪期を脱する、というのが、既報の通りだ。では、このまま景気は上昇していくのか?ここから先が、このレポートの主旨となる。結論はNoなのだ。

個人消費の停滞が始まる

今回の不況の一番手は、輸出産業、すなわちハイテクメーカーだった。彼らが立ち直るころ、不況の主役が新たに登場する。ずばり、流通・サービス・食品など消費者向けの産業なのだ。そこから、その上流にある家電や自動車などに、またゆり戻しが起きる。こうした一進一退が続き、景気はしばらく立ち往生する事になりそうなのだ。

この事は、公的データでいえば、鉱工業生産指数が3月より回復基調に入っているが、商業販売額が悪化を続けていること等からも分かり、日経新聞が警報を鳴らしてもいる。では、なぜ輸出と関係ない内需が今度は不況の主役となるのか。答えは簡単。消費者の懐が冷え切ったからだ。製造業を中心に生産調整・雇用調整を行った結果、働く人の給与は大幅に下がった。法人企業統計で見ると、雇用者報酬(+福利厚生費)は170兆円前後で推移してきたものが、今年は150兆円台まで一気に10~20兆円も下がるという。仮に中間値の15兆円減少だったとしても、GDPを年率3%も押し下げる事になってしまうのだ。消費者の懐が冷えれば、もろに消費者向け産業が影響を受ける。

商業販売額前年同月比増減率の図

その風を弱めるために、定額給付金やエコポイント、エコカー買い替え助成金などの消費刺激策が矢継ぎ早に打ち出され、消費をあおっている。さあ、不況風が勝つか、バラまき政策が勝つか、とどちらにも軍配を上げずに往生しているのが、今のマスコミ。

このあたりについて、各業界のキーマンに話を聞くと、バラまきでは不況に勝てない、という声が多くあがった。さすがに20年以上も業界でキーマンを続けている人達だから、バブル不況も金融不況も肌で経験してきた。エコノミストのやわな予想と違って、地に足の着いた体感値ある意見がいくつか聞けた。彼らが語った話は、99年と93年の景気動向。いずれも、不況から好況への過渡期の話だった。

11年前に起きた3つの罠

キーマンたちの話に入る前に、まずは11年前(98年)の金融不況がどのような状況だったかを振り返ってみたい。

その前年の97年秋口より景気は下降を始める。山一證券・三洋証券・東食・北海道拓殖銀行など老舗一部上場企業がバタバタと倒産・破産し、年明け後はその余波が、本格的に銀行淘汰の奔流となる。日本債権信用銀行、日本長期信用銀行が整理され、信託銀行の多くに倒産の噂が流れた。「そもそもの不況の原因は、97年に消費税と社会保険料を上げた橋本内閣にある」というマスコミのいつもながらの的外れバッシングが始まり、こうした状況で、7月の参院選挙は自民党の歴史的大敗、橋本内閣は総退陣し、登場したのが、元祖バラまき王の”小渕恵三”首相だった。

小渕は首相になった瞬間、民主党との融和姿勢を強調し、当時善人コンビだった菅・鳩山民主首脳は、「金融問題を政局にはしない」と協力を誓う。民主のこの善人対応で、政治は政局を向かえず、同党にとっては千載一遇の政権交代機を逸することになる。こうしたオール与党状態で、小渕政権は難題山積の金融業界にメスを入れる一方、補正予算で過去最大の景気刺激に打って出た。当時の小渕が、ニュース画面いっぱいに野菜の蕪(かぶら)を持ち上げて「カブ上がれ~カブ上がれー」とはしゃいだり、海外セレモニーで「世界一の借金王、プライムミニスターの小渕です」とスピーチしていたのが思い出される。

こうした流れに乗って、大型公共事業と地域振興券が景気刺激に用いられた。今回の不況はアメリカ発ではあるが、金融の揺らぎで始まり、福田辞任で後を継いだ麻生が、大型公共事業と定額給付などを含めて過去最大の財政出動を展開、民主がその最中に鳩山に代表交代する偶然の一致も含めて、まさに今日と二重写しとなる世相だった。この年の景気動向は、今の私たちに極めて興味深い3つの示唆を与えてくれる。

  1. 1、ボーナス時期の景気足踏み
  2. 2、とりわけ日用品産業の低迷
  3. 3、景気対策のマイナス余波

この3つの影響で、不況脱出は非常にスローなものとなった。 次回はこの詳細とキーマンたちの解説について触れてみたい。(第2回はこちら

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