経済展望と人材採用 vol.2-底這いが長引き、その先はJ字回復

このエントリーをはてなブックマークに追加

景気の底打ちは早いが回復には時間がかかると言われる理由を、消費者の心理や売る側の経験などを踏まえて解説します。

今回は、「経済展望と人材採用」の第2回目です(第1回はこちら)。HRmics編集長/海老原のレポートです。※2009/06/18の記事です。

ボーナスが景気回復の足を引っ張る?

まずは前回のおさらいから始めたい。 今回の不況は後半戦に突入した。前半戦で景気下降を主導した輸出産業は、ここのところ回復基調にある。しかし、この先景気回復は一進一退の足踏み状態になるだろう。それはなぜか?今と世相が非常に良く似ている 99年の不況回復を例にとれば、以下3つ足踏み要因があるからだ、といえる。

  1. 1、ボーナス時期の景気足踏み
  2. 2、日用品産業の低迷
  3. 3、景気対策のマイナス余波

今回はこの3つはどのようなメカニズムで起きるのか、から始めたい。

図表①は99~2000年の景気動向指数(3ヶ月移動平均)と小売業売上高の前年比を表したものだが、全体を通して回復基調にあるにもかかわらず、ボーナス時期の6月と12月近辺で小売業が足踏みをしているのが分かるだろう。ボーナスが入って懐が暖まったサラリーマンたちは、消費を増やす、と思われるのに、なぜこの時期にデータは足踏みを見せるのか。少し考えれば、この理由は簡単に分かる。

99年~2000年の景気動向指数と小売業売上高

小売業売上高が景気動向指数よりも回復が遅れているのが鮮明に見てとれる。特に賞与時期近辺(6月・12月)の数値が停滞を示している。 ボーナスとは、その前の半年間の景気を反映して支給されるものだから、実際の景気より最大8ヶ月くらい遅行しているのだ。つまり、99年6月の賞与は、98年10月~99年3月の景況、同年12月なら99年4月~9月の景況となる。その遅れが指標を下げる一つ目の理由。二つ目の理由は、このグラフは前年比を出しているので、比較対照となる前年同月の賞与が、けっこう高い数字だった事にある。前年同月の賞与は、さらにその半年前の景況を示している。つまり、まだ不況風が弱かったころの企業業績に基づき支給されたものなのだ。整理すれば、賞与は景気より遅れて支給されるものであり、そのこと自体が景気回復に遅行した動きとなる。そして、賞与ダウンはGDPの6割を占める個人消費を冷やす。不況前半戦は、外需とBtoB需要が著しくダウンしたが、後半戦は個人消費がその主役となる。

今年6月の賞与は、史上最大の景気下降となった08年下半期の景況が繁栄され、こちらも史上最大の下落率(約19%/日経新聞調査)となっている。当然、この時期の消費は大幅に減少すると言えるだろう。

賞与ダウン、でもローンはまま⇒日用品切り詰め

個人消費関連でも、とりわけ日用品産業の落ち込みがこれから目立ちだす。11年前の状況を見てみると、図表②にあるとおり、確かに消費者産業、とりわけ下流に近い日用品関連の落ち込みが見て取れる。エンゲルの論理からすれば、日用品こそ不況でも支出が減らない領域のはずなのに、なぜなのだろうか。

商品種別毎の小売業売上高前年比の図

織物・衣料と飲食料品の停滞が長引くが、燃料と自動車は一足先に前年比100%を上回り、回復基調に入っている。 ここで、業界キーマンに解説いただくことにしよう。

「アメリカ人は、日々の生活必需品までローンで買っていますが、日本人は、違います。ローンで買うものは大物に限られる。その一番手が住宅であり、二番目が自動車でしょう。こうした超大物の購入は、長年にわたるローンとなり、そして、その総ローン額の3割程度がボーナス払いとなる。ボーナスはこうした過去の大物購入の支払いとして、けっこう多くの額で既に用途が決まっている場合が多いのです。このローン支払額は不況でも下げてはもらえません。結果、ボーナス支給が減少すると、そのあおりは、日常の消費に寄せられることになるわけです。」(商社関連のキーマン)

バラマキされても卵は買わない

このことは、3つ目の「景気対策のマイナス効果」とも密接に絡まってくるので、先にこちらを説明しておこう。99年の地域振興券の話をしてくれたのは、大手家電メーカーのキーマンだ。

「地域振興券は今回の定額給付より額が大きく、標準世帯なら1家庭当り8万円(今回は6.4万円)支給されることになりました。これだけ目に見える臨時収入だと、使い道は大きく二つになるようですね。一つが貯蓄です。支給されたお金を日々の生活に回した場合、生活費に余裕が出来る。そこで、貯蓄が増える。こうした倹約志向家が結構多く、地域振興券は最終的に貯蓄に回したという家庭が総務省調査では62%にも上ったそうです。もう一つが、自動車や住宅ほどは大きくない、中モノ消費です。例えば、家電、旅行、高級レストラン、アパレル用品などでしょう。つまり、普段は買わないが、8万円もらえるなら+アルファの支出ですむから購入する、という類です。」

確かに、この中モノ消費に関しては、メーカーや販売店側も猛烈な対応商品の開発と広告展開を行っている。韓国旅行1.2万円とか、高級ホテルのディナー1.2万円とかだ。こうした中では、「卵1パック98円」と日用品産業がチラシを増やしても、消費者の目は向きにくい。
「ただ、これに落とし穴があるのです。高級レストランでコースを食べれば、飲み物は別。中モノ家電を買えば、足が出るから残りはボーナス払いで。そんな形で余分なお金を使うため、財布に残ったお金はますます少なくなる。」(前出家電メーカーキーマン)

それが、日常消費の切り詰めに向かう。さらに、定額給付で買った中モノ関連のボーナス払いが嵩むことにもなるので、②のボーナス時期低迷が深まることになるともいう。

消費先食いで、景気回復が緩やかに

まだ話は続く。
不況対策のせいで本格景気回復期になっても、その勢いが弱々しくなるというのだ。

「今回のエコカー減税で、確かに国内自動車販売は底を打ちました。目先の業績を作るには、まさに福音といえるでしょう。でも、不安も感じています。4月の売上を調査したら、買い替えサイクルが、1.2ヶ月も短くなっているのです。そう、減税目当てに無理して買う人が現れている。つまり、“消費の先食い”が起きているのですね。本来なら来年以降に買う人が今買うことで、来年以降の販売が鈍る、という不安が生まれています」(自動車メーカーキーマン)

同様の声は前出の家電メーカーキーマンからも出た。
「99年は夏枯れ(8月の販売不振)がひどかった。振興券特需で消費先食いが起きた結果でしょう」

もっと根源的な心配をする人もいる。元祖「景気対策産業」ともいえる不動産関連のキーマンだ。
「バブル崩壊期に住宅ローン控除や関連税の優遇が始まりました。この施策が住宅販売を下支えした事は間違いありません。こうした優遇策は期間限定のため、期限切れが近づくと『今買わないと損』とあおりを入れることで、さらに販売が伸びます。で、実際に期限が来ると、当然のように優遇策の延長、時には拡大が政府より打ち出されました。その結果、本来もっと冷え込むはずだった住宅市場に、調整がなかなか起こらず、住宅価格は下げ止まらなかった。これが、バブル崩壊不況を長引かせ、ひいては金融不況をも生んだ、と私は思っています」

アメリカは今回の不況で、過去の住宅購入者に対してセーフティネットは張ったが、これからの購入を促す施策をとっていない。そのことが住宅価格下降を促進し、結果、市場底入れが早まりそうなことを見ると、日本の悪例を反面教師にしている、とも思えてしまう。

バブルの夢はもう忘れること

ここまでを整理すると、不況後半戦は、消費者向け産業を中心に、賞与期の停滞をはさんで当分続くと考えられる。では、本格回復はいつか?エコノミストとは違い、市況を肌で知るキーマン4名が、異口同音に応えたのは、「来年の賞与時期」すなわち、10年4~6月だった。今回の不況は、底這いが長引くL字型回復、そのL字が上向くのが来年第一四半期。ただし、消費先食いがあるためその勢いは弱々しい。つまり、J字回復となる。これが、キーマンたちの一致した見方だったのだ。

08年・09年の2年間で日本の経済規模は多分8%程度縮小することになるだろう。その後、年率1.5~2%の“弱々しい回復”が3年続いたとして、取り戻せるのは5%程度。つまり、07年の景気ピークには遠く及ばない。ただ、このことを持って悲観的になるのは早計だろう。ちょうど、バブル崩壊後の小康状態だった93~97年、かげろう景気などと揶揄されたこの時期に、堺屋太一氏(作家・エコノミスト、元経済企画庁長官)は週刊誌の連載で以下のように語っていた。

「年率2%程度の成長がそれなりに続いているなら、それでいいじゃないか。バブルの頃と比較するからいけないのであって、後で振り返れば、けっこう良かったと思えるような時期なんだと思う」。

このエントリーをはてなブックマークに追加
ページの先頭へ

●採用成功ナビの2つの特長

最適な採用手法をご提案!

様々な企業が自社に合う
人材の採用に成功している

採用方法の紹介を見る

豊富な採用実績!

多岐にわたる採用事例から
自社に似たケースが探せる

採用成功事例を見る

お申し込み・お問い合わせ・ご相談はこちらからお気軽にどうぞ!

採用サービスのご利用について

すぐに採用を始めたい方も。まずは相談してみたい方も。
ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

0120-98-3046 9時~18時 (土日祝日を除く)内容は正確を期すため録音しています

ご相談・お問い合わせはこちら

メールマガジン(無料)について

中途採用情報メルマガ(無料)を定期的にお届けします。

  • ・求職者の詳細な職務経歴情報が閲覧・検索できる
  • ・中途採用に役立つ最新情報や採用の秘訣などをお届け

貴社の事業成長に少しでもお役に立てられれば幸いです。

無料メルマガお申し込みはこちら