公務員が転職市場に流入するか-制度改革の概要

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雇用や人材採用にも大きくかかわる「公務員制度改革」についてレポートをいたします。

歴史的政権交代で民主党政権が誕生してはや1年が過ぎようとしています。国民の多くが期待していた同党のマニフェストも、最近はどうも実現が怪しくなっています。マニフェストの中にある「公務員制度改革」の改革が進むと、熟年公務員が採用市場で大きな存在となるはずですが、果たしてどうなるか?今回より荻野進介(HRmics 副編集長)のレポートで、2回にわたってお送りします。※2010/09/09の記事です。

4つの分野で進む改革

公務員が転職市場に流入するか-制度改革の概要

クラレが、新・小学1年生の親向けに毎年、実施している「将来、子どもに就かせたい職業」調査によると、男の子の場合、2010年度の1位は公務員。2位がスポーツ選手、3位が医師だった(女の子の場合は1位が看護師、2位が公務員、3位がパン・ケーキ・お菓子屋)。

ちなみに、1995年、2000年、2005年と、この順位は不変である。「この大変な時代、親方日の丸で、食いっぱぐれのない公務員になって欲しい」という親心はこの15年間、変わっていない。

ただ、本当に公務員という職業が今後も安泰なのか、というと大きな疑問がある。そう、多少の曲折はあるものの、公務員制度改革という荒波の襲来が不可避になりそうなのだ。

政策課題として真剣に議論されるようになったのは1990年代後半のことである。高度成長からバブルにいたる、経済が比較的、安定していた時代は、役所や公務員に対するバッシングは大きな声にはならなかった。ある意味の余裕が世の中にあったのだ。

確認しておこう。ひとことで公務員制度改革といっても、その意味するところは政党や政治家、あるいは時代によっても違うが、大まかにいえば、次の4つの課題に集約される。

  1. 1、公務員の数と人件費に関わるコストの問題
  2. 2、働く場としてのお役所が、民間企業と比べ硬直的で融通に欠けるというマネジメントの問題
  3. 3、政治家がリーダーシップを発揮すべき領域にまで、官僚(高級公務員)が口をはさむ、いわゆる官僚支配の問題
  4. 4、公務を退いた後の悪しき特権行使=天下り問題

既存法の改正と新法の成立

このうち、改善が具体的に進んでいるのが、その2、その3についてである。安倍内閣時代の2007年6月に行われた「国家公務員法(以下、公務員法)」の改正ならびに、福田内閣時代の2008年6月に成立した「国家公務員制度改革基本法(以下、基本法)」の存在が大きい。

これらの法律のポイントは3つある。

ひとつ目は能力・実績主義の導入であり、これは、上記、その2に対応する施策だ。具体的には、公務員法改正により、従来の「キャリア制度(1種・2種・3種に採用試験が分かれ、一種の合格者だけを幹部として登用する制度)」が廃止され、試験や年次にとらわれず、能力本位の人事評価制度の確立が義務づけられた。

ふたつ目は内閣、つまり政治家主導の人事である。従来は局長以上の幹部人事に関しては、省庁ごとに人事案を作成し、官房長官がそれを承認していたが、それが改められた。すなわち、基本法は内閣人事局の設置をうたい、すべての省庁の候補者名簿を官房長官が作るようにした。それをもとに、各大臣が、首相や官房長官と協議して、人事を決定する。官僚支配を弱めるという意味で、その3に関する施策といえる。

みっつ目は官と民の人材交流の推進である。基本法においては、幹部公務員の公募や、外からの登用の数値目標の設定まで定めている。優秀な人材を外部からも登用し、役所の閉鎖性の打破を図っている。その2のマネジメントに関する施策といえるだろう。

さて、公務員制度改革といえば、その4の天下り問題を抜きには語れない。そもそも、旧・公務員法にも人事院による規制が存在してきたが、[1]非営利法人が規制の対象外である、[2]離職後、2年が経過すれば認められる、[3]人事院の承認さえあればOK、という抜け穴が目立ったため、安倍内閣のもとで公務員法が改正された。

その結果、各省による再就職斡旋が禁じられ、内閣で一元管理を行うための「官民人材交流センター」という組織が設けられた。これによって企業だけではなく非営利法人も規制の対象となったが、2009年、民主党への政権交代が起こる。鳩山政権が省庁による天下り斡旋そのものを禁止する方向を打ち出したため、現在、同センターは機能を停止している状態だ。

残るその1に関しては、今年5月、鳩山内閣が来年度の国家公務員一般職の新規採用者数を前年比で約4割減らす方針を閣議決定したことが大きな波紋を生んだ。

民主党がマニフェストで掲げた「天下りあっせん禁止」により、天下りが禁じられた中高年が省庁に留まることになるので、その分、新人採用を抑制せよ、というわけである。「手当・退職金などの水準、定員の見直しなどにより、国家公務員の総人件費を2割削減」と、マニフェストに掲げた民主党。いやがうえにも実現しなければならない政策だった。

早期退職慣行と年次主義が天下りを生む

もそも天下りはなぜ生じるのか。端的にいうと、その原因は2つに帰せられる。早期退職慣行と年次主義である。早期退職慣行とは、定年前の肩たたきのこと。民間企業と違って、ポストが限られた役所は、年配者の居座りをなくし、優秀な若手を出世させるために不可欠な制度として機能してきた。

それが遅滞なく、確実に行われるために必要なのが年次主義である。ある程度のポストまでの「同期横並び昇進」と、「後輩は先輩を追い抜かない」という人事ルールである。これによって、何年入省組か、というのが非常に重要な指標となる。

この2つを改めるのは簡単なことではない。官僚システムという“巨木”が根を張る、いわば“土壌”に他ならないからだ。

とはいうものの、改革は役所内部でも進行している。各省庁で幹部職員の早期退職慣行を是正する取り組みが2002年から行われているのだ。その結果、53~54歳だった平均勧奨退職年齢が2005年には56~58歳まで引き上げられている。

公務員もストが出来るようになる?

今後の公務員制度改革の焦点のひとつとなるのが労働基本権の付与という問題である。日本の公務員は団結権と団体交渉権は認められているが、スト権と労働協約締結権は認められていない。その代わりに身分が保証されるとともに、人事院勧告により民間企業並みの給与を得ることができるのだ。

ところが、こうした労働基本権を認めようという動きがある。民主党のマニフェストや、公務員制度改革の急先鋒であり、先の参院選で躍進したみんなの党のアジェンダにも取り上げられている。民間並みにスト権を付与することと引き換えに、民間並みの給与カットやリストラ、能力主義の導入を図り、コスト削減につなげようというのだ。つまり、上記その1と密接に関連する施策なのである。

公務員も転職市場に目を向け始めた

天下りの甘い汁は吸えない、リストラもあって、民間並みの人事評価か。これじゃあ公務員としての旨味が何もないな、と思う人が増えたとして何の不思議もない。

公務員といえばゼネラリスト育成の志向が強く、各人が専門分野で鍛えられるというイメージは薄い。国会運営や予算の作成、許認可や審査業務など、役所ならではの仕事に習熟しているが、民間企業でそのまま通用する力があるとは言い難い。

以前だったら、在職中は公務に専念し、退職後も路頭に迷わない仕事を用意することができた。公務員が外でも通用する力を磨く必要などなかったのだ。最近は金融やエネルギー分野など、民間でも活躍できそうな分野の仕事をやりたがる若手が増えているという。

転職市場に目を向け始めた公務員。民間企業で働きたい人も増えているというが、次回(元公務員。こんな人が、こんな分野で活躍できる)ではその実態を追ってみたい。

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