実務者しか語れない外資系人事の真実(前編)

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人事業務のパーツごとに日本と欧米を比べていきます。

人事専門誌『HRmics』。発行の直後、誌面では紹介し切れない生の情報をお伝えするお馴染みのセミナー、HRmicsレビューを開催しています。今回も、1月23日に東京で行われた最新レビューの概要を採録したものをお届けしています。今回・次回は、ドイツに本社のある世界的物流会社の日本支社、DHLジャパンで、オーガニゼーションディベロップメントマネージャーをつとめる牛島仁氏のお話をご紹介します。氏は、アメリカで学業を了え、同国の保険会社にマネジメントアソシエイトとして就職、その後、現在のDHLジャパンに移り、ドイツ本社での勤務も経験というキャリアの持ち主で、米、独、そして日本を比較したユニークな人事論が展開されました。レポートは同誌副編集長の荻野です。※2013/02/21の記事です。

外資といっても多種多様

自己紹介の後、牛島氏が最初に釘を刺したのが、同じ外資といっても、ひと括りでは語れないということだ。国籍、業種、規模によって変わるのはもちろんのこと、日本への参入時期(=早ければそれだけ日本企業化が進み、遅ければ外資らしさが残る傾向がある)、参入経緯(= 現地法人の設立からスタートしたなら外資らしさが残り、日本企業の買収からなら日本らしさが残る傾向がある)、ビジネスの性質(=世界均一のビジネスフォーマットが要求されるなら外資らしさが強くなり、ローカルの特性が重視されるなら、日本らしさが強くなる傾向がある)によっても大きく変わってくるという。

同じ日本企業といっても、ひと括りできないのと同じ理屈だが、われわれの頭の中には、典型的な「外資」というものがあるのもまた事実。最初はアメリカの大手金融に入り、現在はドイツの大手物流に在籍中というご経歴からいえば、ここでいう「外資」とは「欧米系の大企業」を指すと考えていいだろう。

新卒採用ではインターンシップを重視

人事の基本は採用である。牛島氏は、日本でよく言われる「外資は新卒採用を行わない」という論が風説に過ぎないことを説明する。正確にいうと、日本のような時期を区切っての新卒一括採用は少ない。その代りに、新卒相手の通年採用が行われている。

牛島氏:「日本のように、大学を出てすぐに就職する若者ばかりではなく、海外“遊”学、ボランティア、実家の手伝いなど、進路が本当にまちまち。そうしたなかから優秀な人材をピックアップするには、一年中、企業の門戸を開いておく必要がある。といって、企業が受け身というわけではない。一定規模以上の企業の人事には、カレッジ・リクルーティング・チームがあり、目ぼしい大学に出かけては頻繁に説明会を開いている」

新卒採用に関して日本と最も違う点はインターンシップが重視されていることだ。特にドイツでは採用直結型インターンシップが非常によく活用されている。そこでは企業も学生もまさに真剣勝負だ。企業側は学生を一時のお客様ではなく、立派な戦力として受け入れる。正社員同様に専用の名刺もメールアドレスも用意し、必要ならば、守秘義務契約を結んだ上で、極秘の経営戦略資料も堂々と見せてしまう。期間も半年から1年程度と、日本の常識からいえば非常に長い。学生側も実力が認められれば採用がかなうのだから、ここぞとばかりに踏ん張る。コミュニケーション力、ディベート力、資料作成力、文章力、どれも非常に優れた学生ばかりでびっくりした、と牛島氏は述懐する。

ただ、採用直結といっても全員の希望がかなうとは限らない。仕事の空きがない場合はお断りとなる。が、ひょんな出会いで、社内の他の部署の人間の目に留まり、直接のインターンシップ先ではない別の部署で採用が決まる場合も多々ある。学生たちも、そんな出会いに結びつくかもしれない社内ネットワーキングづくりに一生懸命いそしむ。

同じ採用でも中途に関してはどうか。

牛島氏:「さかんに行われている。人を雇うというよりは、必要なスキルを買うというイメージが強い。特に、専門職や上級管理職は流動性が激しく、頻繁に採用している」

日本企業にはない「リーダーシップ・プログラム」とは

前回紹介したように、欧米企業は採用の段階から、エリートとノンエリートを分けている。その典型が将来の経営人材を養成するリーダーシップ・プログラム(LP)参加者である。人事、経理、営業・マーケティングといった部署ごとに行われ、期間は2年間。その間、3~4ヶ月、あるいは半年ごとに部署の中をぐるぐる廻される。そうやってリーダーとしての資質の有無を探られるのだ。もっと長い時間をかけて日本企業が行うローテーション人事を2年という短期間で行っているのである。

2年のうちに実力が認められればマネージャーに昇進することができるが、そういう人ばかりではない。途中で、自分は無理、ここには合わないと退職してしまう人もいる。でも、さすがアメリカ、著名企業のプログラム参加者ともなると、そうした脱落組はもちろん、プログラムを無事終了し、マネージャーになる資格を得た人材を狙って、ヘッドハンティング会社がアプローチしてくるという。なかには自ら売り込む豪の者もいるほどだ。

牛島氏:「LPに参加するには修士や博士といった学歴が必要な場合が多い。そこで、それを持っていない人が会社を辞めて院に入り直し、学歴を補強してから、元の会社のLPに応募してくる人もいる。彼らはブーメラン・エンプロイーと呼ばれる」

エリートの資格を得るのはなかなか大変なのだ。

異動は自己申告であり、スペシャリスト志向が強い

異動に関して、社員は文句を言えない。これが日本企業だが、欧米は違う。異動の主導権は人事が握るのが日本企業だとしたら、主導権はあくまで本人にあり、社内公募を通じた自己申告から異動が始まるのが欧米企業だ。かといって、企業主導の異動がゼロというわけではない。

牛島氏:「部下の業績に上司が満足せず、本人に諭して異動させるケースも多い。人事権はマネージャーにあるのが欧米で、人事はその行使を支援する役割を担うに過ぎない。日本企業の場合、人事権は人事部にある。だから、ある部署で仕事がなくなった場合も、即、解雇にはならず、そこで働いていた人を他部署に迅速に移すことができる。これが日本企業に雇用の安定をもたらしている」

日本企業によくある職域を超えた異動はどうだろう。

販売からマーケティング、あるいはその逆といったように、親和性の高い職域間の異動はあるが、まったく違う仕事に異動させることは稀だ。銀行を例にとると、大卒総合職でも、一度は窓口を担当し、札勘定や顧客応対を経験させるといった、日本流の平等主義はまったく存在しない。こまごましたプロセス業務を行う専用のスペシャリストが職場に配置されているか、そうした雑務はアウトソースされたり、グループ内のシェアードサービスに担当してもらうことが多い。企業も働く人もスペシャリスト志向が非常に強いという。


今回は、牛島氏の講演の前半部分を紹介したが、人事業務のパーツごとに日本と欧米を比べていく、こういった内容の講演はありそうでいて、ない。聴衆にとっては、欧米外資を“鏡”とし、改めてわが姿を見直すよいきっかけになったはずだ。次回は、講演の後半部分に即して、評価と昇進、出口管理について紹介する。

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