IT業界(2/3)「クラウドはITを、社会を変えるか」

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クラウドコンピューティングについてご紹介しています。

採用や教育など人事関連の実務に追われて忙しい毎日の皆さまに、この連載を通して広くビジネス全体を知っていただく機会をご提供していきます。3回シリーズの真ん中にあたる今回は、IT業界で最近騒がれている「クラウド・コンピューティング」について、その動向と求人について解説いたします。レポートはHRmics編集長の海老原がお送りします。※2009/09/03の記事です。

振り返ると「夢の世界」が実現

IT業界(2/3)「クラウドはITを、社会を変えるか」

またまた流行のIT用語が飛び出した。その名も「クラウド・コンピューティング(以下クラウド)」という。この手のIT用語は「ユビキタス」の例を見るまでもなく、概念先行で実態が分かりづらいため、言葉のみが一人歩きして、そのうちに騒がれなくなっていく、というケースが多かった。ただ、今回は少し趣が異なるようだ。

クラウドの話をする前に、その先行となった二つの言葉を説明しておきたい。

一つはネットワーク・コンピューティング(以下ネットPC)。90年代の後半にオラクルやサン・マイクロシステムズなどが中心となって提唱し始めた概念だ。データセンターに個人のデータやアプリケーションを保存し、各人は、軽量・廉価なPCを持ち歩いてインターネットでセンターに接続して、コンピュータ処理を行う。いつでもどこでもコンピュータが使えるデスクレスな環境を、という意味の発信だった。 当時この言葉を聞いたとき、インターネットさえ普及し出したばかりの時期だったため、多くの人が全く意味を理解出来ない状況だった。ただ、10年経った今どうだろう。

ヤフーやグーグル、MSN等のフリーメールアドレスを所持し、そのメーラーの中やストレージに文書やファイルを保存して、家でも会社でも、新幹線や空港や、ファーストフード店でまで、ネットを繋いで、仕事や趣味でコンピュータを使っている。ほぼこの環境は実現し、多くの人は無意識にネットPCを楽しんでいる。そう、ずばり10年先を見越した大提案だったと振り返れるだろう。

もう一つが「グリッド・コンピューティング(以下グリッド)」。こちらは、2000年代初頭に広まった。ネットワーク上にあるコンピュータを上手く連携して、個々の空き容量・空き能力などを活用し、大きな計算やデータ・ファイルのバックアップ等を行う、というものだ。ターミネーター3(2003年)では、世界中にコンピュータウィルスがばら撒かれ、それに感染したコンピュータが連携を起こして、宿敵スカイネットを作り上げる、という構成になっており、グリッドは現実よりも映画のお陰で有名になった。

世界の無駄がクラウドで消滅?

さて、いよいよクラウドの話だが、「ネットPCの進化版であり、グリッドよりもより社会に受け入れられやすいもの」とまずは表現しておこう。個人の仕事や趣味ベースで浸透しているネットPCを会社や組織単位で導入することが、クラウドのまず第一段階となる。会社のデータもアプリケーションも全て、データセンターに置いてしまう、と考えると分かりやすい。会社は「人事」「経理」「生産管理」「購買発注」「顧客管理」など様々なデータやアプリケーションを持っている。そして、それを結ぶために構内ネットワーク環境を開発し、さらにインフラ機器やセキュリティシステムを保有。そのうえ、パソコンやネットワークの利用でトラブルを起こした時のために、保守・サポート契約を独自にサービス会社と結んでいる。

ここまで多重にIT投資しているが、果たしてこれは、社会的な無駄ではないだろうか、と視点を一段高くおいて考えてみよう。

自社の隣にある他社も、ほぼ同様のIT環境を作り上げている。その多くは全く同じモジュールで構成され、一部違った部分も多少の変更を施せば利用が可能なものばかり。それを、個社ごとに全く新たに開発して作り上げ、そして、別々に保有する。開発には、膨大な時間と費用がかかる。俯瞰してみれば、非常に大きな社会的浪費であり、ただでさえ不足しているITエンジニアをより一層過酷な労働環境に追い込む原因ともなっており、そして何よりもエコに反している。

こうした無駄を解決するのが、クラウドになる筈なのだ。

世界の無駄がクラウドで消滅?何万社ものデータやアプリケーションを一括で処理できるデータセンターを置き、そこには、汎用性の高い業務用のアプリケーションをそろえ、利用する企業の仕様に合わせて微変更しながら提供していく。セキュリティ投資もネットワーク保持用のインフラも多くはこのセンターに集中させ、保守・サポートもセンターを運営する母体企業で行う。ここまでの体制を作り上げれば、企業は、「今から抜本的なSIを行いたい」と考えたとしても、そのほとんどは、クラウド内にあるモジュールの組み合わせで完結し、納期・価格など今までとは比較にならないほど利便性の高いソリューションを提供出来ていく。これがクラウドの目指す世界観なのだ。

次世代への先行投資として

こうした次世代コンピューティングへの投資が、今、熱を帯び始めている。グーグルCEOのエリック・シュミットが「ここ10年で最大の投資案件」として宣言したことや、MS社CEOのスティーブ・バルマーが東京ドームの1.4倍の広さになるクラウド用のデータセンター建設を発表したこと等が、これに火をつけた。

日本でも右へならえで、大手ネットワーク系SIerがクラウド向けの投資を強化し、そのため、この不況下でも徐々にこの領域の求人が動きを活発化させている。ただし、その傾向は2つに分かれる。

  1. 1、従来より大規模なNW系SIソリューションを提供してきた超大手企業は、ネットワークや関連インフラに関する高度なエンジニアが社内に在籍している。そのため、やや若手のネットワーク関連エンジニアなどを、不況で競合が少ない今、採用しておこうという動き。
  2. 2、中堅規模のNW系SIerでは、社内に高度なエンジニアが不足しているので、今後のクラウド対策を担うようなハイスペック人材の獲得を考える動き。こちらは、クラウド自体の未来を考えていけるような企画力やそれを実現するスキルが要望される。

1の方は超大手の人気企業による若干ゆるいスペックでの求人となるため、この時期では目玉でもあり、すぐに応募者が集まるのだが、クラウドがどの方向に向かうのかが定かではないため、採用側の企業が悩み、結論が遅くなっている。

一方2の方は、超大手にいるハイスペック人材を中堅企業が狙う、という形のため、スペックにあった人材がなかなか応募にいたらず、そのため、やはりなかなか採用まで進まない、といった状況。

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ただし、クラウドが浸透するには時間がかかる、との見方も根強い。グリッドコンピューティングのように、手持ちのパソコンが他社に使われる、という恐怖感は無いが、それでもデータやアプリケーションを社外に置く、ということへの忌避感はなかなか払拭できないからだ。たとえば、顧客データや技術周りと関係の無い人事関連の仕組みのみをまずは切り出してクラウド化する、とか、予算・人員削減が急務な地方行政窓口などがサービスをクラウド化する等といったことが突破口になって、利用者が増えていくのではないだろうか。

クラウドとは、もともとコンピュータシステムのイメージ図上で、ネットワークを雲(=クラウド)で書くことから始まった言葉だという。クラウドの概念自体は分かるが、今後どのような方向に進み、どの分野の人材が必要になるのか。それが明確に分からない今は、業界全体がクラウド(雲)の中、といった感じなのだろう。

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