安定の医薬・医療機器業界に、変革の波が押し寄せる

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高齢化社会をにらんで唯一今後の成長が見込める同業界。CSO、CRO、CMO、見慣れぬ横文字の意味するものは・・・?

レポートはHRmics編集長の海老原でお送りします。※2009/12/10の記事です。

3つの冷や水

安定の医薬・医療機器業界に、変革の波が押し寄せる

不況でも売上げが極端に減ることが少ない医薬品業界は、安定的な産業といわれ続けてきた。しかし一方で、この安定性を揺るがすいくつかの問題が起き始めていることは、前回のレポート(5月)で書いた通りだ。ざっと振り返ってみよう。

まず、企業の国際的なM&Aが進み、アメリカ本国の傘下に収まる医薬品メーカーが増えたことにより、グローバル金融不況がこの分野にも影響を及ぼし始めた。これが、MRが労働集約的に病院を訪問するという日本的営業スタイルへの改革のきっかけとなり、より効率性が求められる機運が起きた。

2つ目が、従来型の研究では新薬開発の難易度が高まり、遺伝子情報を基にした抗体型新薬開発など、新たな分野での研究が重要視されてきたため、基礎研究を中心に研究投資としてのM&Aが盛んになってきた。この波に乗り遅れないように各企業が必死となっていること。

そして3つ目は、前臨床(動物実験)や臨床開発(治験)、薬事申請などさまざまな分野で法律が改正され、国際分業が可能になったこと。これら3要素があいまって、効率化追求とそれにより生み出された余資を投資に向ける、という流れができた。

さて、こうした流れが、最近はどう変わり、それがどのように人の流れにつながってきているのか。

2010年問題対応の収束

まず、臨床開発の分野では、2010年問題※シフトで活発に人材が動いていた。2010年に特許切れが大量発生する前に、新薬開発をすべき、という動きだったのだが、この流れが、昨今やや細くなりつつある。日本の場合、創薬段階にあるタネに対し、臨床開発を行い上市に漕ぎ着けるまでに、海外よりもかなり時間がかかる(ドラッグ・ラグという)。こうした中で、臨床開発要員の拡充を急いだために、10年を迎える前に充足し始めた、というのが理由の一つとして挙げられるだろう。もう一つには、昨今、CRO(治験のアウトソーシング)企業が台頭し、メーカー側はCRO管理要員のみを募集し、実作業要員の募集が少なくなったことがある。

ただ、それでも臨床開発や薬事ではまだそこそこ人の動きは見られる。これに対し、MR(医薬品営業)はさらに動きが鈍くなっている。前述の「営業効率化」の動きの中で、人員見直しやCSO(営業販売活動のアウトソーシング)への外注化が起きていることが遠因ではあるが、こうした流れは、ここ数年のことであり、ここ半年急激に動きが鈍くなった理由とはいえない。本当の理由は、外資の予算サイクルにあると思われる。例年、1月に新規採用予算が組まれ、それを集中投下して、夏前までに営業人員確保をし、予算枯れが起こる秋口以降は、強化領域である開発スタッフ採用のみを続ける、という季節変動が今年も起きた、と考えてしかるべきだろう。

※2010年問題
日本の場合、新薬の特許は20年のケースが多く、この期間を過ぎると後発薬(ジェネリック、俗に「ゾロ」)の製造販売が可能となる。特許期間内は該当薬は価格も高く独占販売のため、メーカーは巨額の利益を計上することが可能となる。1990年前後にブロックバスター(大型医薬品)の開発が相次いだために、2010年前後に期限切れが集中することを、2010年問題と呼んだ。たとえば、アレルギー薬のオノン、抗菌抗生剤のクラビット、ED治療薬のバイアグラ、SSRI型精神薬パキシルなど、よく耳にする薬品が2010年前後に特許期間を終える。

ドラッグ・ラグつぶしと電子化

一方、医療機器分野ではこの反対で、現在営業求人が割合活発に動いている。医薬同様、認可→上市までに時間がかかる日本では、海外よりも製品発売が周回遅れになるドラッグ・ラグが悩みのタネであり、ラグつぶしのために、不況で買い手市場の今、大量採用を行っているのだ。ただ、経験者採用に関しては、薬学部出身者を中心にやはり医薬品への志向が強く、医療機器分野は分が悪い。そこで、充足しきらず、採用が長引いている。

昨今、電子カルテ化や遠隔医療の浸透が進みつつあり、こうした中で、医療機器分野ではネットワーク系SEの募集も、単発スポットながら比較的多く発生している。

メーカーは身軽に、今度は外注が悩む

文中にも登場したCROやCSOなど、この業界の分業化の動きについても、レポートをしておきたい。

創薬から臨床開発、製造、販売までのプロセスを分解し、そのどこかに特化したプロフェッショナルとなり、大手総合医薬品メーカーの外注先となっていくのが、分業化の流れだ。総合メーカーでは、大型薬のタネが見つかると、開発から販売にあたり、大量の人員が必要となる。しかし、上市後しばらくすると、次のタネが見つかるまで、人材ニーズは大きく落ち込む。こうした医薬品業界の宿命からして、1社で多くの人員を抱えることは、繁閑差の波をもろに受けることにつながるので、外注化する方が合理性が高いといわれていた。対して、外注先企業は数年前まで数が少なかったため、外注料金も高止まりし、高利益のために効率化に本腰を入れる外注企業は少なかった。これがここ数年、海外での治験の解禁や、CSO・CRO企業の増加により、風景が変わってきたのだ。

流れは大きく2つになる。1つは、癌、抗体関連、慢性病など分野に特化して、専門性を磨き、競合他社と差別化する、という戦略。もう1つは、CRO-CSO-CMO(製造外注)と、各プロセスを横に束ねて、上流から下流まですべて受託可能にする、という戦略。前者では技術力や商品分野のニーズにより、優勝劣敗が起こり、敗れた企業から勝ち残った企業へと人の流れが生まれる。一方、後者では、製品サイクルの中で、CROとCSOとCMOの比重を変えて、うまくポートフォリオを作っていく、という経営の先読みが不可欠となる。

外注化という形で、経営の合理性を高めた総合メーカーではあったが、今度はその外注先の方が、真剣に経営の合理化を考える、という役回りとなったようだ。


最後に、もう一度予算サイクルの話に戻りたい。なぜなら、ひょっとすると、これが人材市場の本格回復のきっかけとなるかも知れないからだ。

例年のようにMR営業採用は、外資系企業の予算サイクルに合わせて盛り上がりを見せる。来年も、年明け早々にバジェットが落ち、そこから求人―採用と進んでいくと、年央に例に漏れず、盛り上がりがやってくる。大量MR採用となると、スペックは緩くなり未経験若手がそのターゲットとなるだろう。現在この領域は、カタカナ系生保の独壇場状態。そこに、CSOを主体としたメディカルが再参入することにより、獲得競争はようやく過熱し始める。おりしも、景気の2番底時期を脱し、賞与も前年割れはないと予測される来年春。参議院選を意識した中で、政治的にも景況を冷やす施策は打てない。すべての役者がそろったその時期に、やはり、人材市場は上げ潮ムードになるのではないか。

それまでの残り半年。採用の絶好機はいよいよ最終コーナーに差し掛かってきた。

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