医薬・医療機器業界-意外!採用の力点が若手から熟年へ

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今、熟年獲得競争が熱い医薬品・医療機械の業界の動きを見ていきます。

病気やケガは、不景気だからと言って減ることはありません。そのため、景気変動と関係なく、医薬医療業界は安定的なニーズがある産業と言われています。ただ、業界内を細かく見てみると、新薬特許の期限切れ問題や、社会の高齢化による新薬需要など、業界内の特有の事情により注力ポイントが時々刻々と変わっています。この1年はどんな動きがあったのか。HRmics編集長の海老原がレポートします。※2011/12/22の記事です。

若年採用の雄=若手未経験MR募集が近年減少傾向

医薬・医療機器業界-意外!採用の力点が若手から熟年へ

3年にわたるこの連載で、医薬医療品業界をレポートするのは5回目となる。この業界の人材ニーズには、長らく一つの季節的傾向があった。世界的合従連衡が進む医薬・医療関連の企業は、外国企業が資本参加しているケースが多く、そのため、外資本国の期初にあたる1月に採用予算が更新される。それから求人活動が盛んになり、4~7月くらいが採用のピーク。そして、秋口には人材需要が落ち込む、といった感じだ。

とくに、採用ボリュームが大きい「未経験の若手MR募集」はこの傾向が強かった。この影響は医薬医療業界にとどまらず、若手の中途採用市場全体に及んでいたのだ。なぜなら、このMR募集は、①業界経験を問わない。②ポテンシャルの高い若年層を主ターゲットにする。③年収がかなり高い。同年代の営業職と比して1~3割高い。④Off-JTが充実しており、「もう一度本気で勉強したい」という人の心に響く、などの特徴がある。

つまり、若年採用市場において、大きな吸引力を持っているといえるだろう。だから、私たち転職エージェントも、若手人材の動きを観るときは、まずMRの未経験者採用動向に注意をするところがあった。

このMR採用の季節変動が、ここ1~2年で大きく変化しているのだ。端的にいえば、季節変動が少なくなり、4~7月のピーク感が和らいだ分、冬場になっても採用が続く、ということ。理由はどこにあるのか?

まず、「未経験MR大量募集の背景」にあったものを説明しておこう。

これは、90年代の医薬品業界へ外資参入規制が緩和されたことがきっかけとなっている。新規参入した外資系医薬品メーカーが大量に人を採用する一貫として、この流れが生まれたのだ。その後、医薬品メーカーは合掌連衡を進めたことと、新薬発売時の大量MRニーズ、高齢化による医薬品需要の増加などが相まって、MRの供給不足は続き、そのため未経験MRの大量採用は続いた。さすがに近年になるとこの動きも鎮静化しつつあったが、それでも以下3つの理由により大量採用は続いてきた。

  1. 1、CSO(医薬品営業の派遣事業)の普及。CSO事業を営む企業は、なかなか経験者MRを採用できないため、未経験MRの採用に力を入れた。
  2. 2、2010年問題。この前後に特許が切れる医薬品が多かったために、多くのメーカーがこの前後に「新たな儲け役」として新薬を発売できるようにもくろんでいた。そこで、販売体制も拡充しようと、2010年直前までMRの大量採用が(主に外資系メーカーにて)続いていた。
  3. 3、2006年に薬剤師受検の資格要件が変更されたこと。ここからは受験には6年生薬学部の卒業が必須となる。結果、2005年入学組(4年制=2008年卒業)、と2006年入学組(6年制=2011年卒業)との間に2009~10年の2年間、新卒者が急減することになる。この「若年人材の不足」を埋めるために、未経験MR採用が行われた(主に国内メーカー)。

価格競争から新局面に入ったCSOの戦略

ここまでの話を読むと、近年のMR採用がフラット化した理由の大半がわかるだろう。特に、2010年問題と6年制移行の空白対応が終わったことで、2010年以降、未経験MR採用が減ったことは合点がいく。

少々説明が必要なのが、CSOの未経験MR採用の動向についてだ。こちらは今でも未経験採用が続いてはいるのだが、それでもやはり、その人数が若干減少しつつある。そして、採用数が減った分、経験者採用に力を入れ出したのだ。

なぜ、こうした動きになってきたのか? それは、CSOを活用している医薬品メーカーの立場になると見えてくる。

医薬品メーカーとしては、新薬を発売したときには大量にMRが必要だが、そうではない時期にはそれほどMRは必要ない。この繁閑差に対応するために、一時的な要員としてCSOを活用している。つまりCSOは非常に便利な仕組みといえるだろう。ただその分、自社で雇用するよりも手数料が発生し、出費は多くなる。そこが悩みのタネであった。

やがて、CSOが日本に浸透して事業を手掛ける会社が増えてくると、この「悩みのタネ」である価格に対して、値下げをしてシェアを伸ばす後発企業が現れ出す。いわゆる「値崩れ」だ。では、価格低下はどのようにして実現していたか? それには若手の人材を増やして対応することになる。その結果、未経験者採用が盛んになっていったのだ。

ただ、こんな流れで価格競争=若手の大量採用が続くと、二つの問題が生まれてくる。一つは、教育コストがバカにならないほどかかること。これは逆に「価格高騰」要因となってしまう。そしてもう一つ。やはり未経験の若手だとどうしても高付加価値な営業が難しい。そこで、利用者である医薬品メーカーは、自社のベテラン腕利きMRを新薬営業に向け、CSOから派遣されたMRを既存薬の営業に充てる、といったフォーメーションを取り始める。この動きが広まると、CSO側は、「既存薬担当ということでさらなる料金低下」となり、また同時に「戦略的な新薬の分野の知識が得られない」という二重苦を味わうことになる。

結果、徐々に若手未経験採用から経験者へと軸足を変え始めた。

こうしたことすべてが相まって、若手未経験MRの大量採用という4~7月の年中行事は、次第に影が薄くなってきたのだ。

熟年採用へのアプローチも進化

さて、ではCSOはどうやってベテランMRを採用しているのか? そもそも、こうした腕利き層が採用できないから、次善策で未経験若手にシフトしたといういきさつがあったはず……。

実は、長年事業を営んできたCSOは、どのようなアプローチをすればベテランMRが採用できるか、そのノウハウも蓄積してきたのだ。以下、いくつか示しておこう。

  1. 1、勤務地域を選べる。MRにはとかく転勤が付きもの。学齢児童を持つ年代、マイホーム購入を考える年代になると、転勤は厳しい。ここへのアプローチ。
  2. 2、もう少々年齢が上になると、MRを卒業して営業教育役や内勤部門への異動となった元MRも多い。長年、営業で外勤慣れしている彼らには、こうした新職務になじめない人も多い。彼ら熟年MR卒業組へアプローチする。
  3. 3、大手メーカーではなかなかなりにくい「上級スペシャリスト職」への将来的な登用、という話を提案する。たとえば、BD(ビジネス・デベロッパー)という仕事は、CSOと医薬品メーカーとの間に入り、何人のMRを派遣するか、という契約を取る仕事。この職務は超高給であり成功報酬込みで年収2000万円も可能であったりする。また、研究志向が強い薬剤師有資格者には、MSL(セールスエンジニア的にMRをサポートする)という仕事もある。

もう、価格競争では済まされなくなったCSO業界では、①スペシャリティ(専門分野での強さ)、②BD(メーカーへの提案・営業力)、③コンプラ(情報守秘体制)の3つが、事業差別化のカギという。

そのためには、業界の事情通であるベテラン層が必要となってきたといえるだろう。

同様の「熟年人材獲得」の動きは、医療機械業界においても感じられる。こちらは、大手電機系メーカーが、「国内最後の成長市場」として医療機械に参入していることがその理由と思われる。とりわけ画像診断などの機器領域では、「技術はあるけれど、販路がない」という新規参入企業共通の悩みがある。そこで、既存メーカーの医療機器営業に携わるベテラン層が注目を集める。

そう、意外なことだが、医薬品・医療機械では熟年獲得競争が熱い。

もともと人材流動が盛んな両業界だから、こんなムーブメントが起きたのだろうか?熟年の雇用に頭を悩ます他業界の参考事例ともなれば、日本にとって大きな福音なのだが。

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