EMC業界-輸出産業の意外な求人増。背景にあるものは?

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地力がある中間財メーカー。助走をつけている完成品メーカー。

震災、円高、水害、EU不安・・・。まさに、輸出産業が苦しめられ続けた1年が終わろうとしています。ただ、意外にもこうした輸出産業から転職エージェントに寄せられる求人は減っておらず、採用数も増加! さてこの理由はどうしてなのか。
大手メーカーのこの1年の振り返りをHRmics編集長の海老原がレポートします。※2011/12/15の記事です。

復興特需はこれから。今の好調は「在庫積み増し」

EMC業界-輸出産業の意外な求人増。背景にあるものは?

EUの債務危機で世界が右往左往しているにもかかわらず、転職エージェントへの求人は増え続けている。とりわけ、債務問題で為替相場は乱れに乱れ、余波の円高で一番困るだろう輸出産業=大手メーカーからの求人が堅調なことには、少なからぬ驚きを感じる。

なぜ、こんなトレンドとなっているのか、今回はこのあたりをレポートしていこう。

まず、現在のメーカーの旺盛な求人は、震災復興特需が生んだものと思いがちだが、これは少々間違っているといえるだろう。

確かに、東北地方には少なくないメーカーが拠点を構えている。ただ、その多くは内陸部にあり、直接大きな被害を受けてはいない。製油や製鉄関連のプラントの一部は沿岸部にあるが、こうした設備は抜本的かつ長期的な復旧・新設となるため、緩やかに長い復旧となり、現時点では大きな需要とはなっていない。つまり、自社の復旧のための設備投資というのは、それほど大きくはないといえる。

こうした自社設備の復旧という意味では、製造工場の密集地が直接大被害を受けたタイの水害の方が、一時的な復旧投資が大きくなりそうだと言われている。

一方、自社設備以外の復旧・復興については、第三次補正予算が可決したばかりであり、これからが本番となる。つまり、この部分でも現在の「求人需要」は説明しきれないだろう。

では、現在の人手不足の本当の理由は何か?

その一番の理由は、「在庫積み増し」と言えそうなのだ。震災での被害は、自社設備よりも、中核部品を製造する一部工場の操業停止→余波で自社も製造縮小という形で起きている。この数カ月の製造ブランクにより、市中の製品在庫が極端に減り、流通に支障をきたす状態が続いてきた。それを積み増すためにフル生産の状態が続き、そこで人手不足が起きている。これが、完成車メーカーや家電など、最終製品を作っているメーカーの人手不足と言えるだろう。

中間財メーカーの継続的な求人増の理由

こうした完成品メーカーの「在庫積み増しでの人手不足」とは別に、中間財メーカーはもっと本質的な「人材移動」が続いている。

中間財メーカーの場合、技術の進歩が速く、世代交代が起こるたびに主役の座も変わっていく。さしずめ「日替わり天下」とでもいえるだろうか。そこで好調メーカーが移り変わり、不調となったメーカーから人が流れる。これが長い間続いてきた。たとえば、スマートフォン(以下「スマホ」)ならば、カバーに使われるガラスをとっても、ガラスメーカー同士が「強度」を競って勝者が変わり、そこに樹脂メーカーが割って入り、高強度で軽量なプラスティック製のカバーがシェアを伸ばす、といった具合だ。

もう一つ、こうした中間財メーカーの事業の特徴として、「乗り換え」があげられる。同じような製品技術なのに、納入先がチェンジできるのだ。例をあげるならば、パソコン用のフィルム基板の製品技術を利用して、スマホ用の半導体基板に乗り換えたり、同様に液晶用位相差フィルムをスマホ用に転用したりといったところだ。技術力が高く、そこで生まれたエポックからさまざまな派生品が作られるため、納入先が多岐に及ぶ。そこで、売り手のどこかが不況でも、どこかが好業績といった形でバランスがとれる。先ほどの「日替わり天下」とは対照的だが、こちらはバランスをとりながら長期的に安定成長が続く。そこで、求人需要も継続する。

実は、基礎研究と商品化に時間がかかり、「一攫千金」とはならない地道な事業投資が必要となるこうした中間財の領域では、日本は今でも世界で優位に立つ。人件費が高い他の先進国は、「コンセプト作り」に特化して利幅の大きい最終製品に力を入れ、一方、後発国は「追いつき・追い越しやすい」モジュールを寄せ集めて作れるやはり最終製品が得意分野となる。こうした構図の中で、空白となった中間財の開発で日本メーカーが地道にがんばり続けている、といったところだろう。日本が突出する技術領域のため、世界各国からの引き合いも大きい。当然、オンリー1、ナンバー1の強みで価格決定権を握るため、円高局面でも「日本から買うしかない」ということで影響は少ない。そういったことが求人増につながっているのだろう。

さらには、最近では欧米での訴訟の影響で、スマホなどに使われる韓国勢の電子部品の旗色があまり良くはない。日本の中間財メーカーにとっては追い風になるため、来年も期待したいところである。


振り返ってみれば、日本の大メーカーは、震災に始まり、超円高、タイ水害、欧州危機とまさに踏んだり蹴ったりの1年だったいえるだろう。その中でも、順調に求人は推移し続けた。それをあえて違った見方で語るなら、こんな風にいえないだろうか。

まず、どんな動揺にも耐えうる地力がある中間財メーカーがあること。

そして、曲折を経た完成品メーカーは、復旧途上で複雑化したサプライチェーンを立て直し、そこに円高も伴って、一極集中型の脆弱性を世界に分散することに成功し、さらに、新鋭設備により生産性も向上できた。つまり、来期以降の本格復旧特需や欧州危機からの巻き返しで、全力疾走が始まる前に体制を整えるための1年だった、と。

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