流通・サービス業界-店舗職の採用でもエージェント利用がすっかり定着

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社会構造の変化と新テクノロジーの登場がこの流れをもたらしたようです。

表面に現れた変化から、その真相を探る分析で定評のあるHRmics編集長の海老原嗣生がレポートします。 ※2012/09/13の記事です。

業界特性や商慣習があり、壁が高かった流通業

流通サービス業も本格的に転職エージェントを利用して、人材採用を行うようになってきた。それも、ターゲットとなる人材は、経営企画や人事戦略をつかさどるような本社スタッフではなく、店長もしくは店長候補。私は20年間、人材ビジネスに携わってきたが、まさに“隔世の感”を感じさせる大きな変化だ。

そもそも、転職エージェントとは、経営幹部や先端技術者のみの人材紹介を許可されたところから始まった。難しいスペックでターゲットを絞り込み、ピッタリな人材を紹介する。当然、転職者の年収も「高給」と呼ばれるレンジにとどまる。そんなビジネスだったのだ。

それが何度かの規制緩和を経て、1999年にようやく若手の一般人材にまで対象のすそ野が広がった。ただし、どうしても旧来のイメージが漂うこのサービスは、やはりビジネス街で働くオフィスワーカーを相手にすることが基本だった。

だから、流通サービス業の店長・店長候補の採用が転職エージェントを通して行われるという現在の姿に、驚きを禁じえないところなのだ。

もう少々、歴史を振り返ってみよう。

流通サービス業でも、大規模流通業では10年以上前から、本部スタッフ以外の採用が、それなりに行われてもいた。エージェントが得意とするスペックを絞り込んだ職務といえば、流通業ならバイヤーやマーチャンダイザー(MD)、店舗開発などが思い浮かぶのだが、ただ、そうした専門職の紹介が盛んに行われていたわけではない。確かに、これら職務の求人はエージェントに寄せられはしたのだが、肝心の、その分野で長い職歴を持つ経験者がなかなか集まらないことがネックとなっていたからだ。

また、仮に経験者の登録があった場合でも、職域が細かく分かれているため、同じ流通材でもアパレルと日用雑貨の間では人材の移動はできず、同じアパレル内であったとしても、上位ブランド店から量販店への移動は不可能などという、細かな商慣習の壁に突き当たり、なかなか成約につながらなかったのだ。

かつてはSV職が唯一エージェントの得意領域

唯一、そうした中で、連綿と紹介が成功してきたのが、スーパーバイザー(SV)職だった。自分の担当する地域において5~10店舗の管理を任され、本部との間に入って、それらの店舗に経営指導を行う仕事である。具体的には、本部主導でキャンペーンや季節商品が決められ、その販促を店舗に指導したり、廃棄ロス・欠品ロスなどをPOSデータから紐解いて業務改善提案を行ったりする。かなり洗練されたコンサルティング・ワークのようにも思えるかもしれないが、現実は、店長と一緒に検品のサポートを行ったり、棚の入れ替えやディスプレイの調整を行ったりといった、汗かき系の実務も、もちろん普通についてくる。

この仕事に紹介すべき人は、過去の職務経験はそれほど問われず、対人折衝が苦手ではないことが第一条件となる。職務自体も店舗スタッフではなく、店と本部の間に立ち(時には汗かき仕事もあるが)、大半は営業的に訪問・折衝を行う。つまり、流通業とは言え、ビジネスパーソン的な要素が強く、だから、一般的な営業経験者なら普通に紹介が可能。つまり、転職エージェントに登録している人材層に十分紹介ができるために、成約が多かったのだ。

こうした、半ホワイトカラー的な職務が、流通サービス業がエージェントを使う場合の基本であったのだ。

それが、現在は店長・店長候補の採用にもエージェントが使われ出している。

どうしてこんな変化が起きたのだろうか?

若年人口減少の影響はもろに流通サービス業に

一番の理由として、流通サービス業が人手不足で、他の手段ではなかなか応募者が集められない、という事情があるだろう。

ただ、この話については、「リーマン・ショック前の好景気時期ならいざ知らず、なぜ今ごろに」という疑問もわく。そう、昨年の東日本大震災からの復興需要で確かに人材需要にはひっ迫感が生まれ出してはいるが、バブルやリーマン・ショック前のような驚異的な求人増が起きているわけではない。

では、流通サービス業の人材ひっ迫の理由は何か?

それこそ、明日の日本の抱える問題が、一足早く、流通サービス業に現れたのだろう。

日本の若年人口は1990年代後半をピークに、ここ10余年で3割以上減少している。ここまで減少すると、人材獲得が難しくなりがちだが、それはホワイトカラー分野ではあまり起きない。なぜなら、確かに少なくなった若年層ではあるが、彼らの大学進学率は伸び、旧来以上に大学生は増えている。こうした大量の大学生が卒業後に就職・転職市場に流れ込み、結局、ホワイトカラー分野では候補者が潤沢であり続けるため、人材不足が起きていないのだ。

こうしたホワイトカラー分野への人材の偏在が起きることにより、若年層減少の影響は、非ホワイトカラー分野でもろに出る。ただし、同じ非ホワイトカラー領域でも、建設・製造業は人材ニーズが激減しているため、ここでも人材の不足感は生じない。一方、流通サービス業は今でも旧来と変わらぬ人材需要がある。だから、人材不足感が顕著になる。そんな構図なのだろう。

Webとエージェントの融合で廉価サービス

こうした社会構造の変化が流通サービス業の人材ひっ迫の遠因だとすると、彼らの転職エージェントの利用を拡大させた直接要因がもう一つあげられる。

それが、テクノロジーを利用した、新たな人材紹介手法の登場といえるだろう。

従来の転職エージェントは、転職希望者に対して、キャリアアドバイザーが個別面談を行い、そこから希望と職務レベルを把握して、合致する求人を探して説明を行い、転職をサポートする、という形で行われていた。この手法では、人手を介するためにコストがかかり、当然、サービス提供料金も高くなる。

それがネックとなって転職エージェントの利用が避けられ、流通サービス業の店舗人材の求人では、より廉価な求人広告やハローワークが人材募集の主戦力となっていた。

ところが、昨今は、求人広告とエージェントの中間形態をとって、お互いのよい部分を生かした形で、廉価に採用を行える新手法が浸透している。

たとえば、リクルートエージェントが提供する「Nプロエージェント」では、「求人サイトに広告を出す」「求人サイトの会員(求職者)にスカウトメールを出す」「求人サイトの会員にメール広告を送付する」という形で、応募者を募り、彼らをそのまま紹介する、という形のサービスとなっている。この手法を使うと、複数名の採用を行った場合、従来のエージェントサービスと比べて、3~4割以上もリーズナブルなコストで人材獲得が可能となる。

こんな新手法の普及により、エージェント利用のすそ野はさらに広がったといえるだろう。

世界に羽ばたくサービス業への脱皮を

さて、流通サービス業の店舗人材もエージェントの紹介対象となってくると、こうした職務の内情も次第に見えてくる。

現状では、どうしても流通系の人気が高く、フードに代表されるサービス系の人気が見劣りするといえるだろう。理由はなにか?

流通系は、商品商材も多彩で、そのPOSデータを操りながら、経営を多彩に考えることになる。それだけ複雑な仕事ながら、店舗職は「通過点」であり、能力次第で、比較的早く、店長職などの管理職層に登用され、さらに、店長も数年で卒業し、地域統括などの背広組に昇進する、というステップが見える。

一方で、フードサービス業は、扱い品目も少なく、しかもメニューも固定比率が高い。それだけ、売り上げを左右するような各自の裁量が利く部分も少なくなる中で、店舗職として長期間勤務することになる。店長職への昇進はなかなか難しく、たとえ店長職になれても、その後、本部職への登用は、これまた時間がかかる。

こんなキャリアステップを考えたとき、同じ店舗職であったとしても、流通業の方が求職者のハートをつかみやすい、といえるのだ。

日本のフードサービス業は国際的にみても、非常にレベルの高いビジネスを続けている。衛生的で良質かつ美味しいメニューを、安価に、かつ少人数で提供可能な仕組みがあるからだ。こうしたビジネスモデル自体は、今後、アジア各国に店舗進出しても存分に競争優位性を発揮していくことになるだろう。そう考えると、いつまでも、「現場で長期間」というキャリアステップだけでなく、そろそろ、「能力次第でスピード昇進」、その暁には、グローバルでの活躍も視野に入れた本格経営者に育てる仕組みも用意したほうがよいのではないか。

ハイテク産業はアジアの追い上げで青息吐息の時代、そのライバルのアジアに羽ばたき、アジアで儲ける「フードサービス」が明日の日本をつくる。そのためにも、サービス業が「一皮むけた」キャリアステップとなることを、期待してやまない。

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