金融業界-落ち着くメガバンク、活発化する信託銀行という構図

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不況でも好景気でも、直近のトレンドが人材地図を塗り替える金融業界。

この数年、金融業界では、信じられないほどのショッキングな出来事が重なりました。2008年秋のリーマンショック、2010年のギリシャから始まった欧州危機、そして2012年の1ドル76円という超円高。金融業界を取り上げるたびに痛感するのは、そうした危機によって求人が先細るのでなく、逆に新たなニーズが生まれているということです。異次元緩和で円安・株高の今はどうなのでしょう?レポートはHRmics編集長の海老原です。※2014/04/03の記事です。

買収案件の整理を始めたメガバンク

昨今、メガバンクを中心に、国際監査や海外統括業務など、グローバル人材のニーズが盛り上がっているという。 それも、彼らはIFRS(国際財務報告基準)対応のときのように、本社で内勤となるわけではない。海外の金融機関に赴き、日本の監査基準と現地の監査基準の違いを指導する仕事。そう、向こうで日本型を教えているのだ。なぜ、こんな仕事が必要となったのだろうか。

理由の一端は、2010~2011年にある。この時期は超円高で、加えてリーマンショックとユーロショックで、欧米金融機関が軒並みふらつき、企業価値を下げていた。だから、日本の大手金融機関は、日本円換算でかなりの低価格で欧米の金融機関を多数買収した。

現在は逆に円安になり、また、欧州危機も一服したため、海外金融機関の株価も回復基調にある。そこで、買収を一段落させる一方、すでに現地法人化した買収企業のテコ入れを始めた、といったところなのだ。

国際監査というと、もともとは、海外の基準に日本をどう合わせるか、が主題となり、そうすることで、海外投資家に向けて、日本企業のプレゼンスを高めることが目的となっていた。

今はこの真逆で、海外の現地法人の価値をしっかり把握して、それを日本向けに焼き直すことに力を入れているのだ。そのためには、現地の人たちにも日本型を覚えてもらわなければならない。そこで、向こうに赴き、指導・管理できる人が必要となってきたわけだ。

即戦力は無理。「育てる中途採用」という方針変更

さて、こうした求人には、一体どんな人が採用されるのか。

真っ先に思い浮かぶのが、外資系金融にいる人だが、これは正解とは言えない。彼らは基本、「日本ブランチ」採用であり、海外に赴き指導した経験は少ないからだ。

単に国際会計に詳しいだけではなく、海外事情にも精通していて、さらに言えば、人間性も豊かで現地の人と深くコミュニケーションをとれる人がターゲットとなる。

もちろん、そんなスーパーマンはめったにいない。せいぜい思い当たるのは、総合商社で事業買収やプロジェクト監査を担当している人くらいだろう。がしかし、彼らの場合、給与水準も高く、社内での評価も上々のために採用者はそれほど生まれていない。

スキル的には監査法人にて国際会計をしている人も対象となるだろうが、こちらは、人物面で、なかなか採用に行き着かない。

そこで、奥の手として、グローバルメーカーの財務に籍を置いている若手を採用するケースが増えている。彼らならばこれからの教育次第で、まだまだ伸びしろの大きいと考えるからだ。そう、一種のポテンシャル採用ともいえるだろう。同様な理由で、数字に強く、基礎能力が高いコンサルティングファーム出身の若手もターゲットになりつつある。

異業界でも同格企業からの採用が奏功

メガバンクでは、一時期、システム系のエンジニア採用も盛んではあったが、こちらはだいぶ峠を越えた感がある。初めて、といえるほどの、大型採用が1~2年前に行われ、定着に一抹の不安もあったが、予想に違えて、入社者はかなり戦力化しつつあるという。

銀行のシステムエンジニアの場合、採用者の出自は、航空業界や電力業界など、異業界の超大手企業にいたSEが多かった。いわば「金融の門外漢」なのだが、彼らがなぜ、無事に戦力化しているのだろうか。

彼らは、能力自体は高かったのに、会社の業績が不安定で、転職を決意したケースが多い。つまり、本人能力により会社に居づらくなった、という人たちではないのだ。そして、プロマネとしての仕事は、業界問わず、必要なスキルが案外似ている。開発の実作業はパートナーとなる外注企業にお願いし、自分は、彼らに的確な情報を提供し、進行を管理していく。そして、その状況を経営に伝え、判断を仰ぐことになる。こうしたスキルは、業界が異なるとはいえ、大手企業での“育ち”が生きるのだ。

さらに言えば、彼らが戦力化しつつあるため、中途採用の価値が改めて社内に認知され、昨年ほどではないが、現在もSEの募集は続いている。

資金余りで、新しい融資先の開拓が必要な信託銀行

と、ここまでを振り返ると、メガバンク系は、円高・株安の一昨年までに手を広げた事業や採用を、今は整える段階にあるといえるだろう。

こうした落ち着きを見せ始めた業界とは異なり、円安・株高で、いよいよこれから採用が本格化している業界もある。それが、信託銀行(以下「信託」)業界なのだ。そこでは、「初めて」といえるくらいの大規模な中途採用が始まっている。

信託銀行とは、大手企業を中心に、その余裕資金を預かり、株や債券などで運用することを生業としている。大手企業とは、「お金を預かる」対象であったわけだが、昨今は、そこに変化が生まれてきた。企業から預かったお金が、株高により大きく膨らみ、そのお金をさらに何で運用すべきか、という「新しい事業」の開拓が必要になっているのだ。

そこで、一般の銀行のように、預かったお金を企業に貸し出して、その利ざやを稼ぐ、という融資事業を強化するケースが増えている。こうした流れの中で、いわゆる融資先を開拓する仕事(法人営業)の求人が増加し出したのだ。

もちろん、法人融資という仕事には、融資に関わるさまざまな専門知識や経験が必要なため、真っ先にターゲットとされるのが銀行出身者だ。なかでも、多数採用されているのが、外資系の銀行出身者。その他に、メガバンクなどからも少数ながら採用されているという。

この転職は一見不思議にも思われる。転職後も法人融資をするなら、なぜ一般の銀行を辞めて、信託に移る必要があるのか。

その答えは「風土」の違いにあるという。

信託は前述のとおり、大手法人や富裕層個人の余裕資金の運用、というのがメイン業務だった。それは、夜討ち朝駆けの営業競争というよりも、豊富な知識で信頼を勝ち取り、長い付き合いを続けるという営業スタイルとなる。そのため、組織風土は非常におっとりとしていて、安定・安心感が漂う。そうした社風に魅かれて、信託への転職を決めるケースも少なくないという。

信託の個人向け営業は多彩な人材を受け入れ

同様に、信託は、膨らんだ資金の運用先として、個人向けの融資も強化し始めてもいる。

主力となる商品は、住宅ローン、教育ローン、自動車ローンなどだ。

こちらは個人向け融資となるので、法人向けよりもやや難易度は低くなる。たとえば、与信に関しても、法人向けのように、バランスシートや損益計算書を読み解く必要はない。関連分野にて、営業経験がある程度、あれば、金融知識を習得した後、戦力化できる。たとえば、不動産販売や住宅メーカー出身ならは、住宅ローンの知識はそれなりにあるだろうし、営業力も申し分ない。事実、採用されるケースも多い。また、自動車や外資系生保のセールス、損保代理店のスタッフなども有望だ。

ただし、雇用形態は嘱託(有期)であり、年収ゾーンも400~600万円ほどと、総合職と比べると、多少見劣りをすることは否めない。それでも応募者は多く、採用後も活躍する人が多い。彼らにとってみれば、バリバリと出世の階段を上るよりも、個人営業の腕を活かし、無茶なノルマはなく、身の丈の稼ぎでもよい、この仕事が望ましく思えるのだろう。

こんな形で、信託銀行が、銀行や証券の領域にリーチし始めている。これも、再三書いた通り、株高で運用益が上がりやすい今だからこそできる「攻め」の姿勢だろう。

この余勢を駆って、来年からは、中途の採用数をさらに増やし、しかも、配属先を柔軟に考える「総合職採用」を想定している信託銀行も出てきている。


毎度思うのだが、不況でも好景気でも、直近のトレンドが、業界人材地図を塗り替える。それがこの金融業界だ。今後、さらに景気が伸びようとも、逆に失速しようとも、この業界においては、その都度、時宜を得た採用活動が繰り広げられるのだろう。

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