経済展望と人材採用-ギリシャショック特別レポート(後編)

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景気は短期で回復、長期では・・・。

今回の欧州経済不安がどうなるか-参考となるのは、94~95年のメキシコショックと、97~98年のアジア危機ということがわかりました。3つとも「固定相場制」という無理な為替レートが招いた経済の混乱と読み取ることができるでしょう。では、この先、欧州経済不安はどう収束(または拡大)していくのか。今回は金融と経済に詳しい事情通の2氏に登場頂き、HRmics編集長の海老原を交えた鼎談(ていだん)形式でレポートします。※2010/07/01の記事です。

EU依存度が高い中国、なぜか輸出が絶好調の理由

経済展望と人材採用-ギリシャショック特別レポート(後編)

テレビのニュースで街の声を拾っても、私が社内で企業担当に聞いてみても、まだまだ景気が良いという意見は多くない。しかし、景気は今、絶好調なのだ。

今回、政府が発表したように、リーマンショック後の景気の底は、09年3月。この時期に景気動向指数は底を打ち、そこからゆっくりと回復が始まる。昨年後半からはその足取りも力強さを増し、本年1~3月期は年率換算で5.0%を超えるハイペースの成長となっているのだ。

わが社、リクルートエージェントの業績状況で見てみても、去年4~6月期が転職支援数で底となり、そこから業績は上昇基調、とくに、1~3月は前3ヶ月と比べて15%の伸びを示す、というマクロ数字と全く同じ急回復を見せている。その勢いをそのまま維持し、4月・5月とも業績は前年比1割を超える伸びを記録。

ファンダメンタルズ的には景気は絶好調という中で、今回のギリシャショックにより、景気の中折れはあるのか?

注目されるのは、リーマンショック時に大打撃を受けた輸出産業の動向だろう。確かに、今回もユーロ不安が円の独歩高を招き、1ドル88円、1ユーロ108円といった輸出に厳しいレートとなっている。3月時点でのユーロは130円台半ばだったことを考えると、2割以上の円高。輸出品は現地価格だと2割の値上げ(国内から見れば2割の減収)ということになる。これでは、欧州向け比率の高い、精密・家電・自動車の業績は急降下だろう。

これだけの向かい風が吹くと、たいていは該当産業の求人が止まる。もしくは、動いていても、選考スピードが遅くなり、最終面接で不合格になるケースが多くなる。

ところが。今回は求人が止まることも、遅くなることも、不合格になることもない。数は増え、スピードは速まり、その上、合格率も上がっている。

この理由がどうしてもわからない。

そこで、ビジネス誌のマクロ経済担当に聞いてみた。

「面白い話をしましょうか。5月の中国の統計で、輸出がとんでもない増加を見せたの、覚えていませんか?前年比48.5%増!相手国別に見るとアメリカで5割以上の伸びを見せていますが、EUに対しても4割近い伸びを見せています。

不思議じゃないですか?

ユーロ安でヨーロッパ諸国は輸入がしづらい(逆に輸出はし易い)環境にあるわけですよね。なのに、中国はヨーロッパへの輸出も大いに拡大している。

この理由は簡単です。貿易のうち、産業間の取引はたいてい為替予約が行われ、3~6ヶ月先まで、すでに為替レートが固定されている。つまり、今の貿易は3・4月の1ユーロ130円くらいだったころのもので行われています。このレートだと、ヨーロッパ諸国も輸入が進みます。」

つまり、ギリシャショック以後のユーロ安が産業に影響を及ぼすのは、秋口ころ、ということなのか?

欧州諸国は想定外の好決算が続く!?

ここで、今度は経済紙の株式担当記者が補足をしてくれた。

「今、混乱が起きていますね。これは僕らの間では“おねだり相場”と呼んでいます。株価暴落という市場の反応を見て、あわてた政府が次々と対策を打ち出す。暴落で次の対策をおねだりしている、という意味ですね。

国債購入基金、ドルスワップ、市場への資金供給と3本柱がそろった今、最後のおねだりは何か?

日本やアメリカの金融危機を見れば分かるでしょう。

確かに、各国政府の国債は、基金を通して購入してもらえるから、危機は去りました。ただ、本当の危機はまだ残っています。それは銀行。今、市場に出ているPIIGSの国債の多くを持っている金融機関は、将来これが紙くずになる可能性に怯えている。だから、金融が凍りついてしまった。この“不良債券”を処理することが、最後のおねだり。日本もアメリカもイギリスも、結局、政府や中央銀行が、このためにお金を出している。最終的に、EU各国も金融機関救済スキームが組まれるでしょう。ここで、今回の危機は短期的にはおしまい。」

とすると、今回の金融不安は、メキシコ型の短期V字回復となるのか?

ここで、先ほどのビジネス誌記者が応えてくれた。

「短期的にはまさにそれ以上かもしれませんね。

4~6月期、ドイツやフランス企業は、原材料輸入は為替予約により、高いユーロで決済し、出来上がった製品は、安いユーロで有利に輸出している。ということは、大もうけ。ユーロ不安で欧州企業は最悪、と読んでいた市場は、このカラクリにもうすぐ気づき、株価も反転。実際、4-6月期決算は上々で、欧州諸国の働く人たちの給与も伸びる。為替レートも7・8月までは予約ものがある。あと少しだけ、春は続く。」

経済紙記者もこの意見に深く同意。

「働く人たちの給与が伸びるので、消費も増える。ヨーロッパの経済は、ユーロ安をバネにしばらく上向くでしょうね。そして。今、新聞をにぎわせている、ヨーロッパ諸国の財政引締め。公共事業や車の買い替えなどにバラ撒いていたお金を止める、という話も、PIIGSなどの危機当事者国以外の、ドイツやフランスなどは、“来年度”予算より引き締めることになるのです。つまり、年内一杯は、景気が悪化する要因は少ない。」

「もう金庫はカラ」で、来年以降に本格的な不況

ということは、やはり95年のメキシコショック以後の立ち直りに良く似た、景気回復途上の一次的な足踏みなのか?95年時は、ショック終了後2年以上、景気回復が続いたが・・・。

これには、また二人そろって少し違う、といった顔。

まずは、ビジネス誌記者のこの言葉。

「問題は来年でしょう。確かに国債買取基金や銀行への資本注入などをリーマンショック後のアメリカ政府並のスピードで行いつつある今のユーロ圏では、PIIGS等の不安は取り除ける可能性はある。ただそこも疑問が残る。ギリシャ、ポルトガル、アイルランドは、経済規模で日本の1割程度の小国です。対して、スペインとイタリアは、両国を足すと人口でも経済規模でも日本に匹敵する大きさ。この両国の国家財政をEUとIMFで支え続けらるかどうか、は大いに疑問が残ります。

仮に、これが世界的協調でうまくいったとしても、そこで膨大な財政支出が行われるため、来年以降に景気を下支えするお金は、ユーロ諸国にはもうない。その上、今回の放漫財政の反省から、バラマキは厳しく取り締まられることになる。こうした状況だと、景気が少しでも冷えると、もう全く手が打てない。」

さらに経済紙記者が続ける。

「日本が金融危機に沈んだ98年当時は、日本国内に民間貯蓄が十分にあったため、銀行救済と同時並行で、国債発行により民間預貯金を吸収することで、史上最高額のバラマキ行政を行い、景気の下支えが可能だった。その結果が、ITバブルとなり、産業界はホッと一息をつけた。対して、欧米諸国には、もう国債を発行しても買い取ってくれる企業も人も国もない。財源が全くない今、多分、98年の日本以上の混迷が待っている。」


日本は戦後、14回の好不況サイクルを経験してきた。1サイクル当たりの好況の長さは平均で36ヶ月、不況は16ヶ月となっている。ちなみに、1970年以降の8回あった好景気のうち、その長さが30ヶ月未満のものが5回。そう、大半の好景気は2年半持たずに終わっている。今回の景気回復は、09年3月から数えるとすでに15ヶ月となっている。そう、すでに折り返し地点を過ぎている可能性は高いだろう。

景気は今年一杯持ちそうだが、その後は、後退期となりそうな予感が、金融通・企業通の2記者の言葉からは感じられる。

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