経済展望と人材採用-ギリシャショック特別レポート(前編)

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欧州不安とは、固定相場がもたらした3度目の危機である。

通常だと半年に1回程度でお送りしている、景況と求人に関してのレポート、今回は前回レポートから2ヶ月という短いインターバルで特別編をお送りいたします。ギリシャショックでヨーロッパから景況不安が押し寄せる昨今、株価の下落や猛烈な円高、ドル安、ユーロ安が重なり、風雲急を告げる経済環境下で、企業経営も求人もどう舵を切ればいいのか。レポートは、HRmics編集長の海老原です。※2010/06/24の記事です。

ラテンとゲルマンのすくみ合い

マクロ指標、経済ファンダメンタルズともに絶好調、転職関連の指標も好調、リクルートエージェントの業績も順調、なのに株価は暴落…。なぜこれほどまでに、景況と株価に乖離が生まれているのか。

ざっと今世界で起こっている経済危機の状況を振り返ってみよう。

日経平均株価は4月5日に年初来高値を更新し、終値でも1万1400円に近づく高水域で引けた。ギリシャの国債問題に火がついてからすでにこの時点で2ヶ月を経過している。ここからは、加熱しすぎた株式市場が調整の色合いを深め、1万1000円前後で3週間ほど一進一退を繰り返し、GWの休場に入る直前の4月29日は1万1200円で場を閉じた。つまり、この間は本当に緩やかな調整、今思えば嵐の前の静けさとでもいえたのだろうか。

GWで日本が休場中に、欧米で異変は起こった。S&Pがこの1週間でギリシャの国債格付けを2ランク引き下げ、投資不適格となった同国国債は暴落。入札価格の低下により利回りは10%を超える、まさに「買ってもらえない」「買ってもらえても利子が返せない」状況に陥った。

昨年、ラトビアが同様な状況となった時は、同国が人口にして日本の50分の1、GDPは日本のわずか0.6%という小国だったために、IMFから75億ユーロ(現在のレートで約8100億円)の緊急融資により、危機は拡大せずに終わった。

対してギリシャは人口1000万人を超える。給与水準も日本の約半分という“そこそこ大きな国”。最終的な国債の焦げ付きは15兆円程度になると予測される。従来からリスク度が高い(=償還不能になる可能性がある)ために、その裏返しで金利も高かった同国国債は、海外投資家から「高利回り商品」ということで活発に購入されていた。つまり、この15兆円が焦げ付くと、その大半が海外の投資家の懐を直撃することになる。とりわけ、ギリシャ国債を大量購入していたフランスとドイツの大手銀行は、業績急降下という懸念が生じて来た。そこで、欧州緊急首脳会議がGWから5月初旬に集中的に開催され、ギリシャ救出スキームが話し合われた。

その最中に、GWが開けた日本市場は日経平均が1万200円まで急降下。

ようやく5月7日にEU諸国とIMFの連携で国家財政危機に陥った国々を救うため、75億ユーロ(約83兆円)の基金が創設され、ここで一段落つくことになる。翌日から世界各国の株式市場は持ち直し、日経平均も1万700円まで戻す。

しかし、この直後に下げの本番がやってくる。

まず、EU首脳会議で決めたこの75億ユーロの基金への各国拠出が、果たして当事者となる国の国会で認められるかどうか、の問題。ここで、フランスとドイツの確執が起こる。財政危機がさけばれるPIIGS(ポルトガル・アイルランド・イタリア・ギリシア・スペイン)5カ国は、北方にあるアイルランド(=ケルト系)も含めて全てがラテン系国家。同じ言語圏に位置するフランスは5カ国に融和的。一方、勤勉実直を旨とするゲルマン民族のドイツは、5カ国の放漫財政の尻拭いを国民が許しそうにない。そこでドイツ国内の世論を受けたメルケル首相が、救済スキームに逡巡を続けることになる。

ただし、ドイツはドイツで攻められるべき点が多々ある。まず、統一通貨ユーロは、弱小国にとっては、固定レートの単一通貨のため、為替切り下げによる競争力強化ができない、という不都合な面がある。逆に、ドイツのような輸出強国にとって単一通貨は好都合であり、国境や関税のなくなったEU諸国にドイツ製品がはびこることになる。同時に、こうした貿易不均衡で経済が疲弊したところに、ドイツの銀行が入り込み、件(くだん)の国債購入のように、どんどん高金利でお金を貸し付けていく。つまり、PIIGSの弱体化は、国家の放漫財政だけでなく、ドイツ産業・金融のボロ儲けにも原因がある、ということを強烈に主張しはじめたのだ。

こうした諍いがエスカレートし、しまいにはフランスのサルコジ大統領が首脳会談でメルケル首相に対して、「わが国はEUを脱退する心づもりがある」と恫喝したとの噂(真偽のほどは不明)も流れ、最終的にドイツは株・債権の空売り規制という「ヘッジファンド叩き」で国民のガス抜きをしながら、EU基金への拠出を国会で承認させることに成功。

この直前の5月22日に株価は一番底となる今年最安値をつける。

さあ、第二ラウンドが終わっていよいよ景況不安は終わりか、というところで、またまた、今度はハンガリーの財政危機、続いてスペインの格下げ、ブルガリアでも財政危機、と不安の輪が連鎖的に拡大。日本では6月7日に日経平均株価は年初来安値を更新。1ユーロ108円と、8年半ぶりのユーロ安に直面している。

国債とヘッジファンドが、常に通貨危機の主因

さて、ではこの欧州経済危機は、どこまで続くのか。

こうした国家自体の破産・破綻を「ソブリン(最上級の)・リスク」という。ここ20年の間に似たような騒ぎは2回起きている。

一度目は、94年のメキシコ通貨危機(ショック)。このときも、ドルとの固定相場を敷いていたメキシコが、ドル建て国債を大量発行し、結果、償還不能に陥るという、ギリシャの今の状況と酷似したアクシデントで危機の火が燃え始め、やがて南米諸国の通貨不安を呼び起こし、翌95年4月にドルは史上最安値の1ドル79円を記録。このことがきっかけで、バブル崩壊から立ち上がりかけていた日本の株価は、1ヶ月半の間に24%も下落。ただ、この時は、通貨危機の収束とともに景気は再び拡大し、株価は6月末から2ヶ月で32%上昇というV字回復を見せた(図表参照)。

図表/95年の日経平均株価

二度目が97年のアジア通貨危機。こちらも、米国ドルと連動した半固定相場を敷いていたアジア諸国が危機に晒される。ただし、国家による債務返済が滞ったということではなく、固定相場にワナをしかけたヘッジファンドと、しかけられた側の国との戦いにより起きた危機といえるだろう。

まず、この前提には、アメリカの通貨施策の変更が挙げられる。90年代前半は、アメリカの産業が地に落ちた時期であり、輸出競争力を回復させるために、ドル安を志向するのがアメリカの国策となっていた。日本が強烈な円高に苦しみ、輸出産業が国外流出したのがこの時期となる。

一方で、ドル連動制をとっていたアジア諸国は、通貨安により輸出競争力を伸ばし、この世の春を謳歌することになる。ただ、94年ごろを境に、アメリカの通貨施策が変更される。世界の余剰資金を集め、金融センターとして国力を上げるために、ドル高誘導が始まるのだ。これは、アジア諸国にとっては、ドル連動で自国通貨高となり、輸出競争力を落として成長が低下し始める。一方で、自国通貨高により、従来よりも輸入品が安く買えるため、輸入が増え、国際収支は赤字が積み重なっていく。ここに目をつけたのがヘッジファンドだった。

この国際収支の赤字により、将来的にドル固定制は維持できなくなり、変動性に変われば大幅な通貨安が起きる。それに先回りして、まず該当国の通貨を空売りし、通貨下落後に買い戻せば、利ザヤが稼げる。この思いで、まず、97年7月にタイ国のバーツに対して、ヘッジファンドの空売りが始まる。タイ政府は空売りに対して外貨準備を切り崩してバーツを買い支え続け、準備金不足を起こす。ここでIMFの融資を受け、さらに防衛に出たが、結局ヘッジファンドが勝利して、タイ・バーツは変動相場制となり、従来の為替レートの半分以下の価値へと成り下がっていく。その結果、IMFに借りたお金は、「倍以上」の借金となり、国家財政は疲弊していった。

この成功で気を良くしたヘッジファンドは、インドネシア、韓国と売りを仕掛け続け、年を置いて、98年のロシア危機、99年のブラジル危機へとつながっていく。

この様を、「ハゲタカ(ヘッジファンド)が恫喝し、高利貸し(IMF)がやってきて、やがて、財布は空になる」と揶揄する向きが増え、石原都知事やマハティール元マレーシア首相などによるヘッジ・ファンドバッシングが一方では盛り上がっていく。こちらは、昨今のドイツを中心としたハゲタカ叩きの元祖とも言えるだろう。

このヘッジ・ファンド叩き、確かに正論ともいえなくはないが、そもそもドル固定相場という都合の良い通貨政策を採っていたアジアの国々にも問題はあり、そうした仕組みを長く続ければ、必ず破綻するというだけのことともいえる。現在同様にドル半固定制を敷いている中国の元が、批判の矢面に立たされているように。

この当時、日本の円は完全に変動相場制だったため、こうした通貨危機に巻き込まれることはなかったが、アジア諸国へ投下した資本が焦げ付くこととなり、ここにバブル後の不良債権処理が重なり、金融を中心に産業界は体力を低下させ、やがて98年の金融危機という大きな闇へとつながっていく。

整理してみると、いずれも「固定相場」的な為替レートが引き起こした通貨問題なのだが、メキシコショックは、比較的軽微に短期回復となり、アジア危機は連鎖的かつ深い不況となった。
欧州危機はどちらの先例と似たものになるのか、それとも全く異なる様相を呈することになるのか。ここから先は、最近私が直接意見を聞いた識者の声をまじえ、次回真相に迫ることにしたい。

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