経済展望と人材採用 vol.8-短い求人活況期をどう舵取りするか

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求人はどのように推移していくのかに絞って見ていきます。

レポートはHRmics編集長の海老原です。※2010/04/15の記事です。

求人回復が鮮明となり始めた

今回は、直近2回の不況からの回復期に、求人がどう推移したかのデータを紐解きながら、今年一年の状況を予測してみたい。

まず、前回不況は2002年1月に終了しているが、すでに書いたとおり、求人の立ち上がりは遅く、底打ちするのは03年4~6月期、回復が鮮明になるのは同年7~9月期だった。前々回では、求人の底打ちが99年4~6月期、回復が鮮明となるのが同年7~9月期となっている。ここから、求人がどう回復したか、二つの不況回復期における、リクルートエージェントを通しての採用数推移を、グラフ化してみたのが、下図だ(両年の平均値をとっている。回復当初の採用数を1として指数化)。

図表/景気回復期の採用数推移(年齢別)

図表/景気回復期の採用数推移(職務別)

図表/景気回復期の採用数推移(企業特性別)

図表/景気回復期の採用数推移(地域別)

現在の求人環境は、今年1~3月期に求人回復が鮮明となり始めた、という状況。ここから転職決定数がどう推移するかを見比べて考えてみたい。

外資×若年×首都圏が火付け役

まず、年齢別の採用数だが、こちらは20代前半と後半の伸びが先行し、30代前半、30代後半と年代が上るにしたがって、回復は遅くなっている。不況期には即戦力となる30代前半の採用を残し、逆に、先行投資要因が強い若手の採用を絞ってきた。その反動と考えれば分かりやすいだろう。ただ、両時期とも、20代前半が急進する理由がもう一つある。1999年は法律改正で若年の職業紹介が解禁された年。また2003年は、リクルートエージェント内で「第二新卒対応サービス」が開始された年。こうした特殊要因が重なり、景況以上に20代前半が伸びている可能性がある。そこで、ここは割り引いて考える必要が多少あるだろう。

職務別の採用推移を見ると、こちらは、エンジニア系の先行が見て取れ、営業職が続き、事務スペシャリストの採用が最後となっている。いつの時期でものどから手が出るほどニーズが高いエンジニアについては、景気回復とともに競合に遅れをとらないよう先陣を切って採用を開始し、次に、売上を上げる実働部隊である営業職を採用、逆に内勤部門は不況期には営業部門などからの社内異動による補充でしのげるため採用が遅れる。景況以外の特殊要因として、前々回の不況回復時はITバブルが重なったために、若干ITエンジニアの伸びが大きい、ということが上げられる。

企業別特性では、ベンチャーが飛びぬけていい動きを見せているのだが、こちらも「ITバブル期」のベンチャー熱が非常に高かったことが大きく数字に響いているためであり、03年回復時には、この傾向は見えていない。それよりも、大手が強い動きをし、中小が伸び悩むという傾向の方が正しいといえるだろう。不況期には規模の大小に関わらず応募者が集まるものだが、求人が増えだすと、やはり求職者は大手偏重になるということ。ただし、国内大手の動きは緩く、本格的な採用増となるのは、景気回復から9ヵ月がたったころ。逆に、外資は動きが早く、3ヶ月後から数字が伸び続けている。

最後に、地域別傾向だが、ここでは東海圏の強さが目立っている。ただこちらも、99年・03年ともトヨタ自動車が絶好調だった時期であり、現在、このトレンドがそのまま再現される可能性は低いと思われる。順当に言うと、首都圏の採用増がまず顕著になり、他地域はしばらくしてから火が点く、という展開が予測される。

6月に「カタカナ生保×外資MR」が先陣を切る

さて、ここまでで一旦、景気回復期の採用数の推移をまとめると、以下のようになる。

  1. 1、まず、首都圏から求人は顕著な回復を見せる。
  2. 2、中でも、外資系の企業が、求人市場を引っ張ることになる。
  3. 3、求人回復期は、採りあぐねていた20代若手社員の採用が増える。
  4. 4、外資大手が採用数を伸ばすが、ただし、国内大手は出足が鈍い。

では、このトレンドを下敷きに、本年はどのような展開になるか、具体的な予想をしていこう。

1~4の要素が重なる市場は、どこか?

首都圏・外資・大手・若手、というと、現在はカタカナ生保が採用の独壇場である。

不況で大手が若手採用を控える中、唯一の受け皿として、カタカナ生保が安定的に採用を続けている。そして、このベタナギ状態の波乱要因となるのが、医薬・医療のMR募集だと推測をする。外資・大手・若手という「回復期に強い」要素がそろっているのもこの領域であり、また、4~6月期に強いというのもこの領域の特徴だ。医薬・医療業界の大手は、外資ゆえに、採用予算も毎年年度が変わる1月に切り替わる。採用計画もこの時期に立てるのだが、実際に求人が回り、応募者が集まるのは4・5月。この時期は新卒採用のため、一時的に中途が滞るのだが、5月中盤にはその停滞も終わる。このころから、6・7月が、若手MR採用の活況期となるだろう。

こうして、カタカナ生保・外資MRの若手獲得ガチンコレースが盛り上がるころ、各企業は採用意欲を徐々に高まらせることになる。インターネットや新聞・雑誌などにこの両者の採用広告が増え始めることによるヤキモキ感。転職エージェントの企業担当の動きの変化による切迫感、などが彼らを刺激するためだ。採用広告はわかるが、なぜ、エージェントの担当者の動きも変わるか?若手採用の場合、応募者も多く、採用選考に一手間かかる。そのため、エージェントの担当者も業務量が増え、動きが変わるのだ。

こうした状況の中で、6月ごろに求人熱は盛り上がりを見せ始める。

その直後に夏の賞与。09年度決算は思わぬ増収の可能性が高く、また、昨年6月の賞与は過去最低レベルだったために、前年度比ではプラスとなる公算が高い。つまり、多くのサラリーマンの懐がやや暖かくなる。当然、消費は増えるだろう。見せ掛けの張りぼて消費が、やや本物消費へと趣を変える。それが、消費産業の業績に好影響を及ぼし、波及して多くの業界へ・・・。そう、完全に雲を抜けた状態で、しばらく上昇気流に乗っていく。それが、今年の採用トレンドではないか、と考えている。

景気サイクルを超えた採用戦略作りを

20年来求人環境をウォッチする仕事を続けている中で、いつもながらの話を少ししたい。

この20年間、景気回復は何回も起きている。そのたびごとに、求人環境は改善し、各景気のピークでは、けっこうな採用競争が繰り広げられた。バブル崩壊後のボトムから立ち上がった95~97年、ITバブル真っ盛りの2000年、今回のリーマンショックまでの2005~2008年。いずれも、人材ビジネスは活況を呈し、弊社も年間30%超のペースで転職サポート数を増やした。企業人事は「忙しい」の連発で、採用代行企業も不況期ではありえないような、「おいしい仕事」を企業から受託したりした。

なぜか、それでも、こうした時期を過ぎると、いつもみなが口にする言葉がある。

「景気回復の実感が全くなかった」、がそれだ。

人事、とりわけ採用の前線に立つ若いスタッフは出入りが激しく、他部署に異動してしまうから、ちょっと前のことが部署内にて蓄積しないのだろうか?

いや、それも違うだろう。

かくいう私たち人材ビジネスの側の人間でさえ、同じような感覚を持つ人が多い。つまり、よかった時代は忘れがちで、いつも苦しい苦しいと不平不満を語ってしまう性癖が、人間にはあるのかもしれない。

そろそろこの「本源的な人間の性」に反して、戦略的な採用を期してみてはどうだろう。

「不況だ不況だ」と言っているうちに、求人環境は相当改善し、やがて人材獲得競争は過熱していく。そして、また、張りぼて景気の化粧がとれれば、少しの間、景気は谷を這い、同時に、採用環境は好転する。さらにそのあとには、世界的な選挙イヤーとなる2012年、このころには倹約疲れで老朽化した設備更新のための設備投資熱が頭をもたげ出す。

この上下動サイクルに万年付き合いをするのはやめ、競争が過熱する直前の今、採用前線を広げ、活況期には逆に前線を縮小して効率的な戦略を展開し、また来る短い停滞期に、競合が退くその間に、前線を再び拡大する。

そんな、中期的採用戦略を考える企業が、そろそろ生まれてきてもよいと切に感じている。

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