欧米型人事の光と影、表層と本質(後編)

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強い人事権と柔軟な職務設計が特徴の日本企業。人材スペックの明確化と開かれた人材採用が特徴の欧米企業。

人事専門誌『HRmics』。発行の直後、誌面では紹介し切れない生の情報をお伝えするお馴染みのセミナー、HRmicsレビューを開催しています。今回も、1月24日に東京で行われた最新レビューの概要を3回にわたってお届けしています。今回は、欧米型人事の本質を同誌編集長、海老原嗣生が語った内容の後半部分をお伝えします。執筆は同誌副編集長の荻野です。※2014/02/20の記事です。

空席の玉突き防止がサクセッションプラン

前回は、欧米型雇用の本質は職種別でも地域別でもない、ポスト別契約に他ならないことを示した。ではある人が退社し、ポストが一つ空いたらどうなるか。

以下の図をご覧いただきたい。

図表1:欧米での空席補充

ある役員が辞めたとする。役員の下の事業部長から、ふさわしい人材を補うことにした。ところがこれをやると事業部長が足りなくなり、それを下の役職の部長から補わざるを得なくなる。そうすると部長が減るから課長から補う…という流れが延々と続く。要は玉突き状態で空席が生じ、全体がなかなか安定しないのだ。こうなると時間差で、何人も候補者を審査し昇進させなければならないから、人事もヘトヘトだ。

海老原:「この玉突きが起こらないようにするための仕組み、それが、ある人が抜けた場合の後継者を決めておくサクセションプランなのだ。それが下位職まで用意されると、あたかも、後継候補者が数珠繋ぎのように連なるため、これをパイプラインと呼ぶ。この、後継候補の全社合意を取る場が、タレントパネルとなる。つまり、それらはポスト別雇用をうまく機能させ、いざという場合の玉突き防止のための仕組みであって、ポスト別採用ではない日本企業がそれを取り入れても意味がない」

そう考えると、欧米企業で転職、すなわち、企業側からいうと外部採用がさかんなことも納得がいく。外から採れば玉突きが起きない。そういう理由なのだ。ただし、内部昇進で確保したい、という声も社内では根強い。内部者なら、部下の顔も良く知っているので査定もできるし、社内にコネもある。経営の意思決定スタイルにも慣れている。だから、現場としては、内部人材の抜擢を優先したがる。一報で、玉突きを恐れる人事は外から採りたい。そこでしばしば現場と人事で対立が生じることになる。

任用スペック不足者の育成と、適合者の発掘と

欧米企業が空いたポストを補充する場合、外部採用も、サクセッションプランによる内部登用も、どちらの手段もよく使う。どちらのケースでも、そのポストにはこの人こそが相応しいという説明責任を社内で果たす必要がある。そのためには職務遂行力が決め手となる。日本企業と違い、それが不足している人材を育成目的で登用するケースは少ない。

海老原:「かくして、欧米企業の人事は職務遂行能力に直結した任用スペックの明確化を指向し、ポストに合致するぴったりな人材を発掘して揃えるのが人事の本道となる。現有人材の底上げという機能は自然に弱くなる。まず任用スペックありきの人事といえる」

それに対して、日本企業は任用スペックありきではない。同じポストでも、担当するタスクを自由に変えることができる。現有人材の育成目的を考え、新しい職務を割り当てることができるのだ。

海老原:「役不足の人材を登用し、その成長に応じて、職務もタスクや難易度を上げていくのが日本企業のやり方だ。それに対して、欧米企業は人事が固定された職務にぴったりの人材を探してくる。任用スペック不足者の育成に長けた日本企業、任用スペック適合者の発掘に長けた欧米企業という図式だ」

ポスト別採用から派生した若年採用の仕組み

任用スペック適合者、つまりポスト相応者を重視する欧米企業では、未経験者の入り口が狭くなる。それが若年雇用にも影響を及ぼす。

欧米企業の若年採用といえば、難易度の高い順に、リーダーシッププログラム(LP)、お試し雇用としてのインターンシップ、それにエントリーレベル採用とがある。

海老原:「この3つとも、ポスト別採用ということを念頭において考えると、その存在価値が腑に落ちる。会社としては彼らの能力把握、本人にすれば実務能力の習熟、この両方を兼ねて一流大の修士以上のハイレベル学生に特命任務を担わせる。期間終了後に空きポストがれば、そこに応募して入社となるのがLP。一方、若年者を厳格なポストではなく、単なるアシスタントとして、期間限定雇用を行い、そうして、習熟するころに、空ポストに応募させるのがインターンシップ。仕事の難易度が低いポストに、ある意味、取り換えの利く人材を送り込むのがエントリー別採用だ」

いずれもポスト別採用だからこそ、ポストにはまらない若年者に対して、明確なポストではない「バーチャルな仕事」を用意しているといえるだろう。

それぞれの長所短所

日本企業と欧米企業、人事管理の特徴を対比させたのが次の図だ。

図表2:日本・欧米の人事管理の強み

日本企業は新卒一括採用で毎年、一括補充し、頻繁な異動で組織と人をフィットさせ、役不足者でも盛んに上の役職に登用し育成を促す。あるポストが欠け、ふさわしい人材がなかなか見つからなかった場合、その職務を分解し、兼務という離れ技まで駆使する。

それに対して欧米企業は各ポストに、任用スペックぴったりの人材を内外から調達してくる。日本企業のように、一括採用も頻繁な異動も育成目的の登用も、そして兼務もない。優良人材のキャリアを縦で管理するパイプラインがあるだけだ。

海老原:「強い人事権と柔軟な職務設計が日本企業の特徴で、欧米企業のそれは人材スペックの明確化と開かれた人材採用、と言えるだろう。もちろん、どちらにも長短がある。日本企業は職務を変化させ、任用スペック不足者を育てる=ボトムアップが長所だ。それゆえに一度入った人は育つが、外部からの登用が難しくなり、結果なり重い組織になってしまう。これが短所だ。一方の欧米企業はパイプラインに乗ったトップエリートがますます強くなる点や、外部から自由に出入りできる流動性が長所、それがゆえにボトムが脆弱で組織としての凝集性が弱いのが短所といえる」

人事のオペレーティング・システムが明らかに

人に仕事がつくのが日本企業、仕事に人がつくのが欧米企業、とよく言われる。海老原の今回の話によれば、「人が会社につく」のが日本企業であり、「ポストに人がつく」のが欧米企業、というわけだ。

それが彼我の人事の根幹をなすOS(オペレーティング・システム)の正体だとしたら、その上にどんなアプリケーションソフトを載せるのがいいのか。あるいは内部環境や外部環境の彼我の違いをどう考えればいいのか。そもそも人事の仕事の本質は何なのか。それが次の佐藤博樹・東京大学社会科学研究所教授のトピックスとなる。

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