不況期の採用戦略-採用天国の実情と勝ち抜き方(前編)

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業界別の採用動向と巧みな採用戦略で成果を上げている企業の実例を語ってもらいました。

リクルートエージェントが昨年10月に創刊した人事専門誌『HRmics』。誌名の由来でもある、経済を人事から、そして人事を経済から考察する特集を組む一方で、誌面では紹介しきれない生の情報をお伝えする「HRmicsレビュー」を定期的に開催しています。
今回と次回の2回にわたり、去る7月17日にリクルートエージェント社内で行われた第4回「HRmicsレビュー」、ベテランコンサルタント5名による座談会の概要をお届けします。※2009/10/08の記事です。

座談会出席者

銀行から人が流れる3つのパターン

海老原:最初に業界別の採用動向について話してもらいましょう。金融業界からお願いします。

中田:現在、銀行出身者の転職には3つのパターンがあります。

一つ目は東証一部上場クラスの大企業を担当する法人融資の経験者が企業再生ファンドに移るケース。銀行での待遇は文句ないのですが、法人向けの貸し出し業務というのは縦割りの定型的な仕事が多く、「自分の仕事が社会に役立っている」という有能感が得られないことに悩んで、転職に踏み切る人が多いです。

二つ目は中堅企業の法人融資担当者が、伸び盛りのベンチャーに招かれ、財務の責任者に収まるケース。この場合、かなり優秀な人材が多いですね。

三つ目が大量採用の時期に入行した20代の若手です。行き先は、企業買収の仲介を行うコンサルティング会社やIR関係のコンサルティング会社が多い。「コンサルの仕事が若手に務まるのか?」という疑問はもっともですが、特に買収コンサルの場合、中堅・中小企業の経営者同士の間を橋渡しする仕事なので、財務諸表をある程度読めれば、あとは人間力が勝負になる。若手でも、そういう強みがある銀行出身者であれば十分務まる仕事なのです。

海老原:昔だったら銀行出身者の多くが尻込みしてしまうようなハードな仕事でも、今は「行きたい」という人がいる、という話ですね。同じく企業買収が盛んなメディカル業界はどうですか。

木村:この業界、実は採用が景気に左右されにくいんです。むしろ、各社が頭を悩ませているのが2010年問題です。2010年前後に大型医薬品の特許が一斉に切れるため、薬価が大幅に下落してしまうんです。この影響による業績悪化を食い止めるために、期限切れの薬が少ない他社の買収に各社が躍起になっているところです。

海老原:と言っても、不況に突入した去年あたりから、優秀な人が着実に採れるようになったのではないでしょうか。

木村:そうですね。この業界、好況時にはいい人材が採れない、というジンクスがあるのです。特に他業界からは魅力的に映らないらしいのですが、この不況下、逆に安定性をアピールすることができ、他業界からの転職者がここ半年で増えました。

不況になると増える「異業界への転職」

海老原:メディカル業界というより、不況でも業績が比較的良好な業界、という理由で応募者が集まってくるんですね。同業界の求人が減ると、異業界への転職を試す人が増える。これが不況期における人材移動の大きなポイントです。逆に、業績の浮き沈みが激しいIT業界はどうですか。

廣瀬:エンジニアの求職者は増えていますが、求人は減っています。完全に買い手市場で、募集をかけていれば必ずいい人が採れる状態、まさに採用天国です。ある大手企業の例ですが、なかなか優秀な人が来てくれず、3年間、募集を継続していたところ、つい2週間前、第二新卒という形で、高学歴の優秀な若手を採用することができました。

買い手市場ですから、特に大手から移る場合、待遇が下がるのは必至ですが、気にする人はあまりいません。この時期だから仕方がない、長期的に考え、頑張って後で取り返せばよい、という意識の人が多いです。

海老原:不況期には異業界への転職が盛んになりますが、不動産業界ではどうでしょうか。

中川:結構、盛り上がっている状況です。流通系の用地仕入れをやってきた人がパチンコ業界に転職して、同じような仕事を担当する例が出てきています。待遇は下がりますが、行き先が他にありませんから、辞退する人は少ない。逆に採用する企業にとっては嬉しいことです。

海老原:今までは業界ごとの事情を聞いてきましたが、次は地域特性ということで、東京近郊エリアの様子を教えてください。

花本:私が宇都宮支社に赴任したのが今年4月です。それまでは地場の人だけしか紹介できなかったようですが、今はわざわざ遠方から求職者が来てくれます。最近、工場の総務部長を募集したところ、愛知県から応募があってびっくりしました。こういう例はどんどん増えています。

会社都合で辞めた若手は“金の卵”

海老原:異業界の一流スペシャリストを採れる、前職より待遇が下がっても来てくれる、転勤を大きなデメリットとして考えない。今までの話をまとめると、これが不況期採用の三大メリットでしょうか。第二新卒を中心にした若手の話も聞かせてください。

木村:メディカル業界は元々、新卒重視で、第二新卒の採用には消極的でしたが、ここに来て様相が変わってきました。大学レベルはもちろん、能力やヒューマンスキルといった点からいっても、通常の新卒採用では獲得できない優秀層が来てくれることに各社が気づき始めました。

花本:昨年12月、私が担当している企業が4月に入ったばかりの新卒を対象に、第二新卒の募集を行いました。合格者には今年4月に新卒者として入社してもらいました。社会に一旦出て、それなりの苦労をしてきているので、入ってからも頑張る人が多く、社内に良い影響を与えているそうです。しかも、新卒では採れないようなレベルの高い大学の出身者が採れたそうで、企業はその大学を「新卒採用実績校」として堂々とPRしています。

海老原:会社の仕組みがよくわかった第二新卒を「新卒」として採用することができ、しかも、「こんなメジャーな大学からも入っているんだ」と、就職活動を行う学生たちにもアピールができるということですね。

中田:私が担当している生命保険会社は顧客のライフプランに合わせて、独自の保険商品を売り込む営業スタイルの確立を目指しています。ウェブや新聞に募集広告を出すと苦労なく人が採れるそうですが、最近は不動産系の会社を、自己都合でなく会社都合で辞めた若手にターゲットを絞っています。かなり優秀な人が高い確率で採れています。

海老原:会社都合での転職者なら、頭もハートも強い人が多いはずです。しかも不動産と保険は同じ高額商品だから営業特性が似ているというわけですね。不況下に採用天国が訪れるのは確かですが、そこを勝ち抜くにはそれなりの戦略、目のつけどころが必要、ということだと思います。

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