成果主義はどんな形で日本に馴染んだか

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成果主義はこんな風に企業に根づき、こんな風に社会を変えていくだろう。

リクルートエージェントが昨年10月に創刊した人事専門誌『HRmics』。誌名の由来でもある、経済を人事から、人事を経済から考察するエッジの利いた特集を行っています。同誌編集部は発行月の翌月、誌面では紹介し切れなかった生の情報をお伝えする「HRmicsレビュー」を開催しました。
そこで、今回と次回にわたり、去る2月9日にリクルートエージェント社内で行われた、第2回目「HRmicsレビュー」の模様を紹介します。※2009/03/05の記事です。

今回お届けするのは、その第一部、中村圭介・東京大学社会学研究所教授による「成果主義はどんな形で日本に馴染んだか」というお話です。

■講演者(中村圭介)

1952年生まれ 東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。雇用職業総合研究所研究員、武蔵大学経済学部助教授等を経て、現在、東京大学社会科学研究所教授。主な著書に『成果主義の真実』(東洋経済新報社)、『日本の職場と生産システム』(東京大学出版会)、『変わるのはいまー地方公務員改革は自らの手で』(ぎょうせい)


司会に促され、登壇した中村教授がいきなり聴衆に、こう“謎かけ”をするところから話がスタートした。

中村:次の文章をお読みになり、いつごろに書かれたものか当ててみて下さい。

  1. 1、近年、わが国においても、労務管理に関する議論がなかなか盛んである。年功給から職務給への移行、終身雇用的労働慣行の打破と雇用における流動性の賦与…等々。一般に、このような諸問題が問題としてとりあげられ、議論されているのは…さし迫った実践的課題があるからである。
  2. 2、いま終身雇用は新しい局面を迎えようとしている。内にあっては高年齢化とそれに応ずる定年延長の動き、外にあっては経済や企業の成長鈍化といった状況があるからである。…わが国の賃金は、学歴と性別をベースとした勤続年数を基準としている。…しかしながら、進学率の高まり、技術革新による習熟期間の短縮、女子労働者の技術的・専門的職種への進出、価値観の変化など新しい環境の中で、これら属人的基準は漸次合理性を失うことになる。

中村教授の問いに対し、会場の参加者の或る人は「90年代前半」、また、或る人は「80年代後半」と答えた。皆様はどう考えるだろうか。

種明かしをしよう。どちらもバブル崩壊以降のマスコミ記事から抜粋したものかと思えるが、あにはからんや、(1) は資本自由化による日本経済への影響が喧伝された1962年、(2) は石油ショック後の不況期である1970年代後半に書かれたものである。

中村:不況に見舞われるたび、日本的雇用慣行の見直しを叫ぶのは日本のマスコミの、そして日本社会のいわば悪癖なんです。人事の皆さんは、そういう論調が現れた時は本気にせず、斜に構えるくらいがいい。雑音に惑わされることなく、新たな時代に対応した制度を粛々と整備していくべきです。

成果主義の3タイプ

さて、昨今の“雑音”の代表が成果主義を巡る一連の報道である。1993年に富士通社で初めて導入された成果主義だが、現在では多くの企業へ普及浸透をみせている。

成果主義の普及状況

資料出所:中村圭介『成果主義の真実』(東洋経済新報社,2006年)より

この成果主義に対して、マスコミは当初より「いよいよ日本型雇用が終わり、日本も欧米型になる。大変な事になるぞ」と危機感をあおり、導入後、運用の見直しをする企業が現れると、今度は「うまく行くはずがない。疑問だらけの制度だ」とバッシングを続けた。

そんな中、マスコミの論調に惑わされず、仲間の研究者とともに黙々と企業調査を進めた中村教授は、成果主義は結局3つのタイプに分かれる、と分析した。

中村:1つ目は「素朴な成果主義」。これは車を1台売ると10万円出す、といった、まさに結果が全ての原始的なもの。いうならば、フーテンの寅さんの世界で、この方式を取り入れている企業はほとんど無い。にもかかわらず、成果主義を攻撃する人が念頭に置いているのがこれなのです。

2つ目が「プロセス重視型成果主義」。売上高や利益、コストといった数字はしっかり見る。でも、それだけではなく、どんなプロセスを経て、その数字が出てきたのかまで、きちんと検証して人を評価する制度。3つのうちで最もメジャーな制度がこれです。例えば百貨店の婦人服売り場。『今シーズンはこういう商品を中心に品揃えしましょう』というトップの方針に沿って販売活動を行い、その結果の数字が評価される。方針は無視して、数字だけ達成しても評価されない仕組みです。

最後の3つ目が「分離型成果主義」。何を分離するかというと、成果と評価です。成果としての数字自体は評価せずに、『こういう力を発揮して下さい』という推奨能力をあらかじめ決めておき、その発揮度合いを評価するという、ユニークなやり方です。

司会:最初の素朴な成果主義は論外として、プロセス重視型、そして分離型と、従来の能力主義とは、何がどう違うのでしょうか。

中村:上記のプロセス重視も分離主義も結局、発揮した能力を計っている事に他ならないから、従来の能力主義管理の延長と考えて相違ないでしょうね。しかも、この能力主義発展型成果主義とて、課長職以上にのみ導入された。若手は全く昔のまま。つまり、日本型が壊れる、成果主義は普及しない、というマスコミの論調は、またしても空騒ぎだったのです。
成果主義の対象者はご存知の通り、課長職以上であり、役職のない若い人は従来通りの能力主義で評価されています。しかも、課長以上に適用されている成果主義も、上記のプロセス重視型か分離型であり、いうならば、従来からある『査定』を厳しくしたに過ぎません。日本型雇用といっても、その実態は着々と進化しているのです。

「給与の上がらない熟年があふれる社会」の到来?

しかし、制度の運用実態は変わらずとも、結果として大きく変わった事が2つあるという。

中村:従来の能力主義は、毎回査定されて、能力がたまっていく、それが基本給のアップにつながる、という概念だった。ところが、プロセス重視にしても分離主義にしても、『それはその半年間に能力が発揮されたかどうか』であり、次の半年は全く洗い替えで最初からやり直し。つまり、能力の蓄積という考え方が無いのです。継続調査をしたわけではないのですが、多くの企業は、管理職になっていない熟年層でも、最近は定期昇給をやめていると聞きます。つまり、日本の社会では、ある年齢以降になると、基本給が自動的に上がる、という伝統が無くなりました。この事が、けっこうこれから色々な変化を引き起こすのではないでしょうか。

90年代の人事制度変更をめぐっては、「成果」なのか「能力」なのかを取り上げる事が多かったが、その裏には、「上がりすぎた中高年の給与をどうするか」という根本問題があった。そう考えると、中村教授が指摘する「40代以降給与は自動的に上がらない仕組み」は、当然の帰結であり、「成果」云々はそれこそ添え物だったのだろう。 ただ、この結果、昇格しない限り「定年まで基本給が上がらない」熟年世代が多数産み出される事になる。HRmics的には、そうした熟年層を見てきて、以下のような心配を思い浮かべていた。

  1. 1、20年近く昇給がない状態で、人はモチベーションを維持出来るのだろうか?
  2. 2、基本給アップは昇格しかない。とすると、上級ポジションが空かない限り、昇給はない。ならば、他社で上級ポジションが空くとそこに転職、というキャリアになっていくのか。

給与の上下動がその場限りで終わることの弊害は、長期キャリアに対して何かしらの問題を起こすかもしれない。

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