低迷景気を読む-欧米の友情、そして日本の底力

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マクロな視点から見た日本の動きや兆しについてお伝えします。

3月11日午後2時46分に発生した東日本大地震。マグニチュード9.0という、観測史上日本最大の大地震は、日本全体を恐怖と悲しみの渦へと陥れました。以来50日が過ぎ、ようやく東北地方の製造業も、少しずつ操業を再開する企業が増え始めています。ただ一方で、この地震により日本経済の先行きを危ぶむ声が日に日に高まり出してもいます。識者やマスコミの悲観的予測は果たして正しいのか?HRmics編集長の海老原嗣生氏に緊急レポートをお願いしました。※2011/04/28の記事です。


4月17日の日経新聞には、トヨタ自動車が日本各地の工場での操業を再開するという記事が紙面を飾っていた。同日付の別紙では、半導体のルネサスエレクトロニクスが東北地区の工場を再稼働させるというニュースも掲載されている。震災の影響で、ゴールデンウィークのライン調整期まで「開店休業」状態が続くのではないか、という暗い予想を吹き飛ばすかのように、日本の大メーカーは底力を見せている。第二次世界大戦後、奇跡のような復活を遂げた「日本」という国は、お家芸の粘り腰を見せるのか。

私はそんな問いかけに「Yes」と力強く答えたい。

東北・北関東関連の工場群を巡り、震災復興の状況をリアルタイムでレポートして詳細をご報告しようと、4月初旬から、地元企業や同地に取引先を多数抱える大手メーカーにアポイントを入れていた。ただ、そこでの反応は予想通り、「今、取材は無理」というものばかり。状況自体が好転している企業も、近辺で大きなダメージを受けていまだに立ち直れない仲間たちを慮って、なかなか前面には立ちにくいという事情があるのだろう。そうした意味で、私としては自分のウリでもある「ミクロ」な企業経営状況について、今回はあまり語ることができない。

代わりに、マクロな状況について、金融スペシャリストや企業経営者から聞いた話をもとに、以下、書いていくことにする。

日本だけに許された「金融緩和」継続

低迷景気を読む-欧米の友情、そして日本の底力

日本復活の一つ目のキーワードは「円安」だ。これから1年程度、大幅な円安基調となるということが、衆目の一致する見方となっている。これについての説明から始めておこう。

前回3月の景気観測レポートでは、景気対策・流動性対策として、日米欧各国が、金融緩和競争を繰り広げ、その結果、過剰流動性が高まっていることを指摘していた。中国を除く新興国株が史上最高値、欧米株もリーマンショック後最高値となり、勢いづいたお金の動きは、土地・穀物・原油など資源関連にもなだれ込み、結果、各国がインフレ基調を強め出した。こうした景気の過熱に対して、まず中国がジャブジャブのお金を引き上げるために利上げに動き、続いて4月に欧州中央銀行が利上げすることを宣言。アメリカの金融緩和もQE2((量的金融緩和第二弾))の期限である6月をもって終了することが色濃くなってきた。こうした中で、現在のバブルは早晩崩壊せざるを得ない、というのが大方の見方といえただろう。

夏から秋までの間に、株価も商品価格もピークアウトする。それから景気はしばらくの「黄昏期(不景気入りまでのタイムラグ)」を経て、来年早々に下降に転じるのではないか。こうしたメジャーなシナリオに対して、少し状況が変わってきた。

震災の日本経済は、下手をすると流動性の危機(土地や株などの資産を換金できなくなる。資金需要が増えて、企業は資金繰りに困る)に陥る可能性が高いため、当分の間、日本は金融緩和を続けざるを得ない。この日本のともすれば隊列を乱す行動に関して、今回ばかりは欧米各国も容認をしている。これが、経済に二つの変化をもたらすと指摘する人が多いのだ。

一つは、バブル崩壊の後ろ倒し。欧米各国の資金が引き揚げに向かう中、日本の金融緩和による資金供給により、バブルは一気に冷えることなく、ゆっくりと緩やかに下降に入る。ちょうど、日本の本家バブルが崩壊する直前、不動産融資の引き締めに対して住専を通した迂回融資という調整弁を用意したのと似た状況と言えるのだ。これは、ある面欧米各国にとってもそんなに悪い話ではない。

OECD最終ランナーにはいつも救いの手

ただ、このことは、「円安」という欧米にとっては嬉しくない(日本のみ嬉しい)状況をももたらす。日・欧米の金利差を利用して、日本にて低利で資金を手にいれ、それをドルやユーロで運用して利ザヤを稼ぐというキャリートレードが、足早に円安をもたらすことになるからだ。この結果、1ドル100円~120円ともなるとどうなるか?多くの日本企業の輸出採算レートは85円以下に下がっている。仮に1ドル110円にでもなれば、ドル建て価格を2割引きにしても、現在の採算レートより4%以上利益を稼げる。要は、「とんでもなく日本有利」な状況となるだろう。

(ちなみに、95年の円高阻止のための協調介入時は、4か月で79円だったドルが100円台に戻っている)。

「いくら震災後で弱っているとはいえ、ここまで欧米は日本に譲歩をしてくれないのではないか?」

欧米ハゲタカ論者は、そんなシニカルな見方をするかもしれない。しかし、過去20年を見ると、OECDの最終ランナーに堕ちた国には、いくたびも「通貨安」という救援の手を差し伸べてきたという歴史がある。91~92年のポンドショック(英国)、97~98年のウォンショック(韓国)、2009年のユーロショック(欧州各国)。いずれも、4~6割の範囲の通貨安が起き、それにより競争力を増した該当国の輸出産業が経済を引っ張る形で、復活を果たしている。

これは単に「慈悲的」な思いだけでコンセンサスが生まれるわけではない。ある面経済・産業共同体的な分業体制にある先進国間で、1国がつまずくことは世界全体に暗雲を漂わせることにもなる。そこで、こうした特別救済策が自然発生するのだろう。

公的指標と会計処理のGapがセンチメント転換の基調を作る

この円安とは別に、日本経済が活気づく要素はまだいくつかある。

(震災復興需要についてはあえて書かないが)まず、5~6月に後ろ倒しになった企業決算。ここでは「想定ほど悪くない」数字となる可能性が高いのだ。これは一つには震災が3月11日に発生したため、その後の混乱などは、決算に正味3週間程度分しか反映されていない、という誰もが想定できる理由が一つ。もう一つは、この時期の販売減は全国で見ると1~2割程度。大手メーカーは海外売上シェアが高いので、全世界売上で見れば、1桁台のパーセンテージとなる。対して、製造はラインが止まったため、相当打撃を受けている。要は、販売はそれほど減らず、製造(=仕入原価、製造工程費)があまりかからない、という利益押し上げ要因が生まれているのだ。

鉱工業生産高やGDP統計にはこうした販売前の半製品・在庫の増減もカウントされるために、マイナスがしっかり反映されるが、企業決算では原価計算を交えてもやや甘めに算出される。結果、公的データで「悲観」を大幅に織り込んだ株価が、「それほど悪くない決算結果」で、ポジティブサプライズを受ける。

これが、5~6月のセンチメント(心理面)好転の後押しとなる可能性は高い。

長期的にこの状況を分析すると、日本企業の4・5月は、製造不足を在庫処理により販売を維持した、と整理することができる。これは言葉を変えれば、余剰在庫の少ない筋肉質な経営状況を作ったということになるだろう。7月以降も、電力需要キャップなどがあるため、在庫積み増しが進まず、筋肉質のままで、今年の後半を迎える。この時期に前述のとおり、ようやくバブルの終わりが見えだすだろうが、在庫を抱えていない日本企業は、思いのほか不況風を受けなくてすむ。

要は、先憂後楽、今苦しい分、あとで楽になるという構造になりつつある。

なんとかする国、日本の底力再確認の機会

まだ震災の余韻冷めやらず悲しみにくれる中、うれしいニュースは着実に増えつつある。

原子炉汚染水処理施設は、6月中旬稼働予定が5月末から稼働が視野に入ってきた。東京電力の夏場の電気供給量は、こちらも4月上旬試算で5,350万Kwまで引き上げられた。たぶん、5月の連休明け以降は、次々に正常稼働を始める企業も増え、6月の声を聞かないうちに川下メーカーまでパーツ不足は解消されるだろう。そして、夏場の電力不安さえ、供給積み上げと、省エネにより乗り越え、復興需要が重なって、景気は力強く勢いを増すのではないか。

こんな一連の動きが整ったとき、私たちは今一度、日本という国を見つめなおせるはずだ。意思決定に遅く、何事にもはっきりした意思を示せず、世界の中で置いてけぼりになると文句ばかり言われたこの国の底力を。ひとたび難局に立ち向かえば、アメーバのように変幻自在に形をかえ、「不可能」をいつの間にか成し遂げるこの国。そしてその原動力は、慮りと共同推進力という、他国に全く例を見ないユニークな国民性―。

東日本大震災は、とてつもない悲しみを日本にもたらしたが、禍転じて福となすためには、まず、新しい日本の絵図をこの機会に作り上げること。そして、我が国の素晴らしさ強さを再確認すること。被災した皆様の労に報いるためにも、この二つに私たちは責任を持っていくべきと感じている。

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