人事とゲーミフィケーション

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ストーリーとしての人事戦略を立てていますか?

損保ジャパンの調査によると、今夏、会社員のボーナスの平均支給額は2003年の調査開始以来、過去最低の61万1000円。昨年夏より6万5000円も減りました。ボーナスの減少は働く人たちの懐だけでなく、志やモチベーションも貧しくさせます。どうしたらいいのか。HRmics副編集長の荻野がささやかなヒントを綴ります。※2012/08/02の記事です。

内発的動機、高めていますか

ボーナスだけではなく、給与のほうはもっと頭打ち状態だ。1人当たりの給与の総額を示す「現金給与総額」(厚生労働省)は、この10数年あまり、デフレの影響もあって長期低落傾向にある。給与が伸びないということは、昇進や昇格も活発には行われていないということだ。

さらにこんなデータもある。内閣府がまとめた報告書「日本経済2011~2012」によると、社内失業者と同義の「雇用保蔵者」の数は2011年9月の時点で465万人。日本の全雇用者の数は同時期に5460万人(総務省「労働力調査」)だから、雇用保蔵率は8.5%、会社で働く約12人に1人は余剰人員ということだ。そういう人たちは昇給や賞与増はもちろん、昇進にも縁遠い人たちであることは言うまでもない。

事実、こうしたデータを裏付けるように、昨年あたりから、業界問わず、人員削減のニュースを頻繁に目にするようになった。

長年、昇給はなく、賞与もふるわない、昇進なんて夢のまた夢だが、退職の肩たたきに遭わないだけ、まだましと考えようーーー平均的な会社員の胸のうちはこんなところだろうか。会社に向かう足取りも自然に重くなるはずである。

人事の皆さんには釈迦に説法かもしれないが、心理学に、外発的動機、内発的動機という言葉がある。前者は「昇給させる」「昇進させる」「さぼったら罰を加える」といった外からのプレッシャーによるものであり、後者は「その仕事自体が面白い」「好奇心が満たされる」「顧客や仲間に感謝されてうれしい」といった内なる欲求から発する。

昇給や昇進は外発的動機の最たるものといえるだろう。が見てきたように、昨今は、「リストラに遭いませんように」という後ろ向きのものを除けば、十分な外発的動機づけを行うだけの余裕が日本企業にはない。であれば、働く意欲を高めるために、もう一方の内発的動機づけの重要性が増しているといっていい。

サイコロ給にスマイル給、バッジ評価システム

最近、ゲーミフィケーションという言葉が聞かれるようになった。英語でいうとgamificationだが、その意味は「game(ゲーム)」と「fication(~化する)」に分けて考えるとわかりやすい。日本語にすると「ゲーム化」、すなわち、「ゲームという遊びのノウハウをゲーム以外の分野で活用すること」である。

このゲーミフィケーションの考え方を、人事や仕事の仕組みに取り入れる企業が増えている。つまり、仕事自体や、その会社で働くことにゲームの要素を付加するわけだ。意図したものかどうかはともかく、そのことで内発的動機の向上につなげている。

たとえば、自ら「面白法人」と名乗るカヤックというIT企業が鎌倉にある。その名の通り、「面白い存在であること」「面白く働くこと」に徹底的にこだわっている。

たとえばサイコロ給である。毎月の給料日前、全社員がサイコロを振り、その出た目の%に基本給をかけた額が、給料にプラスされるという珍妙な仕組みだ(基本給30万円の社員が6を出したら、1万8000円がプラスされる。いずれの目でもマイナスにはならない)。といっても、きっかけは至って真面目、「給料は上司の匙加減で決まるものだが、人の評価は曖昧そのもの。サイコロで決まるぐらいがちょうどよいのではないか」という、まさに遊び感覚、ゲーム感覚で導入されたものだという。

支給金額0円のスマイル給という制度もある。毎月ランダムに、各人が評価する社員が割り振られ、その社員のよいところを各自が評価する仕組みだ。それは「○○給」として本人の給与明細に記載されるとともに、評価の理由も含め、イントラネットにも公開される。人を評価する眼と、○○をつけるネーミング・センスも問われるのだ。

たとえば、まっすぐな仕事ぶりを評価する「仕事直給」、言葉だけに頼らない、“コミュニケーションの達人”ぶりを褒め称える「阿吽の呼給」など。繰り返すが、支給額は0円。が、ツボにはまったら、金額には換算できないほどの嬉しさを本人は感じるのではないだろうか。

ゲーム的要素をもっと濃厚にした企業もある。こちらもIT企業のシンクスマイルには、カヤックのスマイル給をもっと進化させたような社員同士の評価システムがある。

仕組みはなかなかよく考えられている。自社の行動指針に基づき、「サンクス」「スマイル」「ナイスアクション」「挑戦」「チェンジ」などの10種類のバッジに加え、「顧客感動」「お洒落」「奇天烈」「アイドル」「MVP」といった5種類の特別バッジが用意されており、それらのバッジを上司や同僚、部下が送り合うことができる。それどころか、顧客や外部のユーザーが個別の社員に送ることもできるのだ。

バッジといっても電子データだが、そのデザインは種類に応じてかなり凝っている。半年に1回集計を行い、獲得数や種類に応じて、昇給や昇進、異動、インターンシップからの採用決定などが決定される(同社HPより)。

このやり方が面白いのは、「バッジをやり取りする」というゲーム的要素を通じ、自分の長所(=バッジが多い)と短所(=バッジが少ない)を認識するとともに、自社の行動指針を自然に会得していくという点だ。

もっとも、自分の短所が毎回、クローズアップされるのは辛い。自分が不足しているバッジと交換できるトランプのジョーカーのような特別バッジがあったら、もっと盛り上がったりして―――おっと、行き過ぎだ。これはゲームではなくて、本当の人事評価システムの話だった。

すべての業務をゲームにせよ

半導体の精密加工装置でトップシェアを誇るディスコには、京セラのアメーバ経営を参考にした「WILL会計」という管理会計システムがある。部門間で生じる「喜怒哀楽」を制度化したものだ。

具体的には、他部署に迷惑をかけると架空の罰金が生じ、逆に恩恵を与えると架空の報奨金がもらえる。例えば、営業部門が製造部門に対して製品のキャンセルや納期の変更が生じた場合、営業部門が製造部門に罰金を支払う。逆に、営業部門が製品の出荷月を3ヶ月前までに製造部門に知らせておけば、製造部門から報奨金をもらえる。各人の賞与額はWILL会計の値に影響されるようにもなっているから皆、真剣だろう。まさにゲームといっていい。

昨年10月からは、この個人版である「個人WILL」が導入された。社員一人ひとりの収入と支出を可視化する仕組みだ。そのため、仕事一つひとつに値段がつくようになっている。なかには、社内オークションにより担当者が決まる仕事もある。個人WILLの値が高い上位者の名前は公開されることになっているが、人事評価に結びつくわけではない。

こうした制度の背景には「すべての業務をゲームにしたい。社員が楽しんで働けば自然に会社が強くなる」という同社の関家社長の考えがあるという(『日経ビジネス』2012年6月18日号)

仕事におけるゲーム的要素といえば、営業マン個人の成績を棒グラフにし、その伸長を日々確認させて各人を競わせる古典的やり方があるが、3社とは明らかに違う。3社の共通点は、企業理念や行動基準が明確で、しかも、その浸透に日ごろから力を入れていることだ。

カヤックの企業理念は「つくる人を増やす」、シンクスマイルのそれは「したことない。を減らす」、ディスコには「Always the best, Always  fun(=何事においても常に最善を尽くし、同時に楽しむことを忘れてはならない)」という行動指針がある。そうした基盤があるからこそ、諸制度にゲーム的要素を加えることができるのだ。結果、出てくる敵をひたすら倒す、という単純なものではなく、ある物語や世界観のなかでプレイヤーが遊ぶロール・プレイング・ゲームの要素が濃くなる。

世界一売れたゲームとしてギネス登録もされている、かのスーパーマリオブラザーズ。主人公マリオは、キノコ王国のピーチ姫を救い出すべく、長い旅に出た。そのストーリーと仕掛けに世界中の人が熱狂した。御社は、多くの人が腕をさすり、思わず参加したくなるような物語=ストーリーとしての人事戦略、をもっているだろうか。これからの人事にはゲームデザイナーのような能力が必要かもしれない。

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