派遣法-制定から法改正への流れ

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鳩山政権の発足後、次々と新しい政策が打ち出されるなか、産業界が固唾を飲んで見守るのが、民主党が選挙時の公約に掲げた派遣法改正の行方でした。

今回はまず、そもそもの派遣法制定から今に至る法改正の流れをHRmics編集部の荻野が解説します。※2009/12/24の記事です。

間接雇用を禁じた職業安定法

派遣法-制定から法改正への流れ

自らが雇用した労働者に対して、指揮命令を自ら発して働いてもらう。これが一般的な社員と会社の関係だ。ところが人材派遣の場合、自ら(派遣元)が雇用する労働者を他社に派遣し、その派遣された先が指揮命令して労働者を働かせるという図式になっている。直接雇用と間接雇用の違いである。

これは、実は職業安定法が禁じている労働者供給事業にあたる。敗戦直後の1947年、GHQの肝いりで制定された同法は、「労働者供給事業=中間搾取や強制労働につながる、封建的な雇用関係」という認識に立ち、労働組合によるものを除き、すべての労働者供給事業を禁止した。

一方で、労働者供給事業とよく似た契約形態がある。請負である。発注者の注文に従い、請負人が自ら雇用した労働者に指揮命令を発して働いてもらい、完成した仕事の成果を収め、代金をもらう。民法に定められている契約概念であり、戦前から「社外工」制度として既にあった。

当初の職業安定法は、労働者供給事業と同じく、請負も規制の対象としたが、高度成長期に規制が緩和され、1952年から造船業や鉄鋼業などでの請負の利用が黙認された(正確には復活した)。工場内の清掃・運搬、機械の修理・保守作業などである。

派遣法成立前夜のできごと

こうしたブルーカラーの仕事と同じことがホワイトカラーでも発生するようになった。アメリカのマンパワー社の日本法人、マンパワー・ジャパンが設立された1966年頃のことだ。同社は事務処理や経営相談といった業務の請負を行い、商社やプラントエンジニアリング会社を主な顧客としていた。英文タイプ、テレックス、外為業務など、英語を必要とする業務をこなす人材の不足が深刻であり、そこに目をつけたのだ。

日本企業も続々とこの分野に参入。センチュリー&カンパニー、パソナ、タイムス、テンプスタッフ、マン・フライデーといった会社である。当時、派遣という言葉はなかったから、事務処理サービス業(形態は請負)と呼ばれていた。仕事に従事するのは英語の得意な20代の女性が中心だった。

この間、労働省は数度にわたり、マンパワー・ジャパンの実態調査に乗り出し、職業安定法違反で告発するかを関係各庁と協議していたが、産業界のニーズの高さなどを斟酌し、告発を断念。代わりに新しい法制度の準備を進めていく。1978年、労働省内に「労働力需給システム研究会」が発足、労働者派遣事業を需給システムのひとつとして位置づけるべし、という提言を発表するに至る。

その後、紆余曲折を経て、1985年にようやく成立したのが労働者派遣法である(施行は翌年)。正社員重視の日本的雇用をあくまで阻害しない範囲で、職業安定法が禁じる労働者供給事業の例外を定めたものであった。

最初の適用は13業務。そこから原則自由化へ

1986年当時は、港湾運送、建設、警備業務の3つを禁止業務と定めたうえで、ソフトウェア開発、事務用機器操作、通訳・翻訳・速記、秘書、ファイリング、調査、財務処理、取引文書作成、デモンストレーション、添乗、建築物清掃、建築設備運転・点検・整備、受付・案内・駐車場管理等の13業務が認められた(ポジティブリスト)。これらの業務の習熟者は、専門性があるために市場からのニーズも高い。つまり、企業側と対等な関係を築ける、ということが許可の前提だった。

さらに、雇用される労働者の性格により、派遣事業は2種類に分類されていた。派遣会社に常時、雇用されている人のみを派遣労働者として扱うものと、一時的な登録者も派遣労働者として扱うものである。前者は「特定労働者派遣事業」と呼ばれたが、雇用期間の定めがなく、派遣先での就業がない待機期間でも規定の月給が支払われる、つまり事実上の正社員である。一方、後者は「一般労働者派遣事業」と呼ばれ、狭義の派遣スタッフを指す。ちなみに、前者を営むには厚生労働大臣に届け出ればいいが、後者の場合はより厳しく同大臣の許可が必要になっている。

その後の派遣法改正はこの対象業務拡大の歴史といってよい。1986年に、機械設計、放送機器等操作、放送番組等演出の3業務、続く1996年には、研究開発、事業の実施体制の企画・立案、書籍等の制作・編集、広告デザイン、インテリアコーディネータ、アナウンサー、OAインストラクション、テレマーケティングの営業、セールスエンジニアの営業・金融商品の営業、放送番組等における大道具・小道具の10業務が追加され、当初の業務とあわせて26業務が対象になった。

続いて大きな改正が行われたのが1999年。港湾運送、建設、警備、医療関連、物の製造業務以外は原則自由(ネガティブリスト)とした。ただし、受け入れ期間に制限があるものとないものとがある。従来から許可されていた26業務は期間制限なし、それ以外に新たに自由化された業務は、契約上限期間は原則1年だが、派遣先事務所の過半数代表が了解すれば3年まで認められる。

さらに2003年の改正により、翌2004年から製造業でも派遣の活用が認められるようになった。製造業まで派遣が認められると、請負という名のもと、派遣に近い事業を展開していた会社は、その存在意義が問われることになる。わざわざ厄介な業務管理責任者を置き、直接雇用者とは指揮命令関係も築けない不自由な「請負」よりも、派遣にした方が事業展開が容易、ということで、請負会社の派遣免許取得が進んだ。その結果、2004、2005年の2年間で、なんと派遣事業所数は一挙に65%も増加することになった。

リーマンショック、そして政権交代が梃子になった「派遣法改正」

こうした請負→派遣という流れをさらに進めたのが、マスコミや監督官庁による“偽装請負”バッシングだった。事業的には製造業への派遣を行っているにもかかわらず、従来この分野では派遣が認められなかったため、“請負”という名目で実質的に派遣事業を営んでいた会社が2004、2005年に次々と摘発されていく。その“薬”が効いた結果、製造業の間接雇用は、請負から派遣へと切り替えが進んでいった。

この流れが、2006年あたりからガラリと変わり始める。ワーキングプアや格差、という言葉に象徴される“貧困・格差”論の台頭である。この論調のきっかけとなったのは、2006年のOECD報告だった。同報告では、「日本は貧困率が13.5%に達しており、これは、OECD加盟国の中で、アメリカについで2番目に高い」こと、そして「その原因は、非正規雇用の増大にある」という趣旨が盛り込まれていた。実際にはこの貧困率の基礎となる国民経済基礎調査を詳細に見ると、年収200万円未満の世帯のシェアは、49%が高齢者、20%が無職、12%の自営業であり、非正規は6.8%に過ぎない。年収150万円未満に絞ると、高齢者の割合は50%を越え、非正規は6.3%にまで小さくなる。つまり、OECDの明らかなミスリードが非正規労働バッシングの嚆矢となり、派遣問題はマスコミの好餌となっていく。

この一番悪いタイミングでグッドウィル、フルキャストなど、一部の派遣会社の法令違反が発覚し、完全に“派遣=悪”という流れができあがった。

2008年11月、政府(当時の自民・公明連立政権)は日雇い派遣の原則禁止などを内容とする派遣法改正案を提出する。

そこに襲ったのが昨年秋のリーマン・ショック。自動車や電機産業で雇用調整が急速に進み、派遣労働者が次々と雇い止めにあった。「派遣切り」という言葉が流行語となり、住む場所をなくした労働者を救済しようと、東京・日比谷公園に年越し派遣村が作られたのも記憶に新しい。

こうした流れを受けて、2009年6月、当時は野党だった民主党・社民党・国民新党が製造業派遣や登録型派遣の原則禁止などをうたった派遣法の改正案を共同で提出するが、2009年7月の衆議院解散によって、先の政府案ともども審議未了で廃案となった。

政権交代後の10月、長妻昭・厚生労働相は労働政策審議会に、製造業派遣や登録型派遣のあり方も含め、制度のあり方についての調査および審議を諮問。政府は審議会からの答申を年内に受け取って改正案を作成し、来年1月から始まる通常国会で成立させようとしている。次回(派遣法 - 過去の改正案との比較と労使の対立点)では、審議会で行われている議論の中身などを詳しくレポートしたい。

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