バブルいよいよ盛ん。実体経済は今年一杯安泰か?

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ITバブルを生んだ教訓は、現在の経済状況にどんな示唆をしているか?

レポートはHRmics 編集長の海老原嗣生氏です。※2011/03/17の記事です。

「非伝統的施策」がITバブルを生み出す

バブルいよいよ盛ん。実体経済は今年一杯安泰か?

91年4月のバブル崩壊後、日本経済は不動産や有価証券の価格下落によって生まれた不良債権の処理に手をこまねいた。ただ、当時は比較的財政状況が健全であり、金利も崩壊当時5%以上の高水準にあったため、財政出動と金利低下により、破綻を後ろ倒しにし続けることになる。そうして「かげろう景気」とよばれる緩やかな景気回復で時間稼ぎをするうちに、アジアのIMFショックに巻き込まれる形で、97、98年の暴風雨に巻き込まれることになる。

この時期、橋本不況と呼ばれる金融危機に陥り、北海道拓殖銀行、三洋証券、山一証券、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行と、上場している都銀・証券・政府系銀行がバタバタと倒産。追い詰められた日銀が、世界に先駆けて「非伝統的金融施策」に打って出ることになった。つまり、「従来ならば、中央銀行が市中の銀行にお金を貸し出す利子を安くすることにより、銀行にお金がまわり、結果、銀行が企業にお金を貸しやすくなるため、市中にお金が回る」という「伝統的施策」をとってきた。

ただ、この方法だと、バブル崩壊で担保となる不動産や証券の価値が目減りしている中では、「いくら貸しても、返してもらえそうにないから、怖くて貸せない」となるため、貸し出しは増えない(これを流動性の危機と呼ぶ)。こうした場合には、中央銀行が決済を肩代わりして、銀行の不安を取り除く、という行為に出る。たとえば、銀行が持っている手形や債券などを担保に中央銀行がお金を貸し出したりする策がとられている。手短かに説明すれば、銀行にたまった危ない資産を中央銀行が買い取るから、それで市中にお金が回る、と考えればよいだろう。こうした「流動性を回復させるための新たな施策」を「非伝統施策」とよぶ。

この非伝統的施策と伝統的なゼロ金利政策が相まって、99年度に流動性が高まり始める。その結果、金余りが生じ、00年のITバブルへと突き進むことになった。

つまり、「非伝統的施策」という伝家の宝刀により作られた、人為的バブルだった、と言えるだろう。

リーマンショック後、日本のITバブルを再現

さて、こうした「人為的バブル」のメカニズムが理解できたところで、いよいよ、現在の状況について、説明を試みたい。

08年までの世界経済のバブル期に、過剰流動性により膨らんだ資産が、バブル崩壊による流動性の危機で一転、不良債権化し、欧米金融機関はとんでもない額の不良債権を抱えることとなった。その結果、手元資産が換金できない状況で、資金繰りに困った米国大手金融機関が倒産の危機に瀕する。08年3月にまず、ベア・スターンズが行き詰まり、ここで、FRBは不良債権に瑕疵特約をつけて、JPモルガンに救済を斡旋する。この瑕疵特約こそ、「不良債権になったらFRBが買い取りますよ」に他ならない。9月には、同様に苦境に陥ったリーマン・ブラザーズを人身御供のように見放したことにより、史上最大の金融機関破たんが起き、ここからバブル崩壊は規模、スピードを増していく。

市場の警戒感が高まった中で、身動きの取れなくなったAIGグループにも瑕疵担保特約を付けてバンク・オブ・アメリカに、住宅金融公社のフレディマックやファニーメイ(貸出資産総額400兆円!)はついに政府管理下に置く、という事態となった。この代償として、FRBは1.75兆ドル(約150兆円)の債権買い取りを行う(=現金が放出される)こととなり、市場は金余り状態となった。

この結果、金利は下がり、流動性は高まり、危機をしのいだ。同時に、各国で財政支出による景気回復施策が大盤振る舞いで行われ出す。

欧米・日・中・韓で、土木・環境・住宅投資のほか、エコカー、エコ家電などほぼ類似した施策が一斉に行われ、景気は09年初頭を底に、回復軌道に乗った。

いたずらが重なり、不要かつ過大な再緩和が

さて、これで「何でも買います」の非伝統的施策を終えれば、市場の金余りは解消し、バブルは起きなかった。スムーズな景気回復軌道に乗る直前に、いくつかの悪戯が起きる。

その一つが、景気回復時に当たり前に起こる「踊り場現象」。これは、エコカー、住宅購入支援などの経済対策をやめるために起きるものだ。その瞬間一時的に景気は足踏みをするが、その後、着実な景気回復軌道に乗る。アメリカは4月に住宅支援を打ち切り、欧州諸国は3~6月にエコカー買換えを終了させた。

が、この瞬間に、あまりにもタイミング悪く、アイスランド島火山の噴火、ギリシャショック、アメリカでの「国勢調査終了(=調査員の失業)」、中国利上げなどが重なり、景気不安が増幅される。こうして、「景気は回復軌道にある」にもかかわらず、二番底不安は高まり、さらに11月初のアメリカ下院中間選挙をにらんだ、景気対策要望が強まる中で、FRBは不要な「再金融緩和」に走ってしまった。これが10月に決まったQE2=6,000億ドルの債権買い取りである。

このQE2が確実視される中で、日本も負けじと、一足先に35兆円の金融緩和が行われた。日米の「不要かつ過大」な緩和により、市場は金余りとなり、その矛先は、まず新興国の通貨および株式市場、続いて、欧米の株式市場、さらには日本市場へと向かう。

新興国の株価は軒並み「史上最高」となり、欧米は「リーマンショック前」水準に並び、日経平均でさえ、昨年9月の二番底から25%も上昇。

余剰資金はちょっとでも材料があれば、容赦なくそこへと向かい、ジャスミン革命に揺れる中東諸国事情に飛びついて、原油価格は100ドルを突破・・・。まさに、バブルとしか言いようのない展開が繰り広げられている。

本サイトの過去の記事にて、その様を以下のように予想していた。

「ここまでの超金融緩和に、追加経済対策が重なれば、あと数か月後に景気は再び加速を始めるのではないか?これが今回の予測となる。その後、景気はどうなっていくのか?(中略)バラ撒かれた先進国の通貨は、結局、投機的な動きとなり、資源や新興国の株・不動産などに向かうだろう。(中略)明らかに、バブルの入口に立っているといえるだろう。」

結論、内需拡大はこれからが本番。景気はもう少々続く

このバブルを加速する要因が日本にはまだある。

昨秋の二番底騒ぎの中で、民主党政権は、景気対策としての補正予算を打ち上げた。その予算案は、ねじれ国会で自民・公明におもねるうちに、いつしか額が当初案の3倍以上に膨れ上がり、真水で5兆円という「立派な」不況時並みの補正予算となってしまった。

この金額の実効が上がるのは、まさに今から。企業業績の回復が鮮明になり、新興国を中心にバブル感漂う中で、5兆円もの炎上予算がばら撒かれる構図だ。

結果、明らかにこれから、バブルはピークを迎えるだろう。

さて、その後、この勢いはいつ、どのように収束していくのか?

金融緩和による過剰流動性は、QE2が終了する今年6月には低下を始める。この前後が、ひとつの目途となる可能性は高い。

そうして、株価・商品価格などがピークアウトした後、実体経済がどうなるか。

前回報告したように、89年にバブル株価がピークアウトした後、91年4月に不況入りするまで、1年半という期間を要している。同様に、00年4月に、光通信の「とばし」発覚でITバブルは崩壊したが、景気下降は7か月後の11月からとなっている。そう、株価のピークアウトから、実体の下降に移るまでにはけっこうな時間がかかる。ましてや、今回の景気拡大は、しばらく尾を引く可能性が高い。

その理由は内需だ。

昨年12月の賞与は、通年業績が不透明の中で、企業は「出し惜しみ」したため、業績の割に、前年比1.4%(上場企業平均)という微増に終わった。代わって、決算を終えた6月の賞与は、相当なアップとなるだろう。昨年後半は、エコカー、エコポイントにより、自動車や家電などの耐久消費財にお金が回り、日常消費にその分おはちが回ったというところもある。そのため、抑えに抑えた日常消費へと、ようやく今年の賞与以降はお金が回る。こうした影響もあり、実体経済は、今年一杯、うまくいけば年度末の来年3月あたりまでもつのではないか?

昨今、内需の代表選手でもあるIT業界の求人が、日に日に勢いを増している状況などからも、そんな気がしている。

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