間違いだらけの「新卒一括採用批判」を斬る!(前編)

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企業現場と労働市場を無視した暴論はいらない

リクルートエージェント発行の人事専門誌『HRmics』。発行の翌月、誌面では紹介しきれない生の情報をお伝えするHRmicsレビュー(無料セミナー)を開催しています。恒例となりましたが、今回も2回にわたり、9月27日に東京で行われた第10回HRmicsレビューの概要をお届けします。今回は同誌編集長の海老原嗣生氏による「間違いだらけの「新卒一括採用批判」を斬る!(前編)」です。以下、同誌副編集長、荻野氏にレポートいただきます。※2011/10/20の記事です。

新卒一括採用、7つの批判点とは

「今回は新卒一括採用のメリットではなく、一括採用の批判がいかに的外れか、を説明したい」と海老原は冒頭で念を押した。海老原いわく、一括採用に対する批判は次の7つに集約される。

(1)学生の本分たる学業を阻害する
(2)採用活動が一時期に集中し過ぎている
(3)採用活動のスタートが早過ぎる
(4)総合職採用だから大学の専門が生かせない
(5)正社員になるチャンスが新卒時に限られる
(6)既卒の就職チャンスが奪われる
(7)欧米型採用を見習え

このうち、今回は(1)から(5)を、残りは次回にレポートしたい。

早速(1)から、海老原による反論を見ていこう。

就職活動の始まりは企業ごとに開催されるセミナーだが、リクルートの調査によると、開催のピークは大学3年の1月末から2月にかけてとなっている。インターンシップへの応募も含め、それ以前に就活を始めたとしても、せいぜいネットの閲覧や書類作成程度であり、とても「学業阻害」とまで言えるレベルのものではない。

そして実際の内定が出るピークが4年の4月上旬。そう、意中の企業に入れた学生はそこで就活が終了するのである。そこから丸々1年、やる気さえあれば好きなだけ勉強できるはずなのだ。

表1:現実的な就活スケジュール

海老原:「HRプロの調査でも同じ結果が出ています。つまり、上位校の学生の場合、9割近くが4月中に内定を獲得し就職活動を終わらせている。果たして彼らが勉学に励むか。励まないでしょう。学生の学業意欲を阻害しているのは就活ではなく、特に文系学部の、つまらない授業のほうではないでしょうか」

通過儀礼を経ないと次に進めない

(2)一時期集中という批判についてはどうか。これも、「就活の内実を理解していない意見だ」と海老原は斬り捨てる。なぜか。ほとんどの大学生が最初は大手著名企業ばかりにチャレンジし続けるが、運よく入れるのはほんの一握りだ。入れなかった学生は、そこから、著名企業、準大手企業、中小企業という具合に、志望企業のランクを下げていく。そうやって、就活における相場観が調整され、現実的な選択を行うようになっていくのだ。そこまでに通常は半年近くかかる。

これを通年採用にしたらどうだろう。限られた期間、全員一斉に走るからこそ、期待値がすばやく調整される。これを通年まで広げると、そのメカニズムがなかなか働かず、いつまでも大手著名企業の内定獲得という夢を見続けることになる、というのだ。

下図は新卒採用市場の全体像である。大卒就職希望者の総数は年間45万人、うち超大手に入れるのが2万人、主要大手が5万人、中堅・中小企業が25万人から30万人となっている。両者のギャップ、つまり、8万人から13万人が新卒無業の人たちであり、社会問題となっているのはご承知の通りだ。

図表2:新卒採用市場のリアル

 

超大手はその人気ゆえ、高偏差値大学の学生を採用することができるが、それらの卒業生の総数は超大手の総枠である2万人の倍以上もいるのが現実である。この狭き門めがけ、それ以外の学生も殺到するため、熾烈な競争が繰り広げられる。

海老原:「アイドル歌手、プロ野球選手、東大生、いずれも多くの若者が一度は憧れる存在ですが、本気で目指す若者はほんの一握りです。なぜなら、かなり早くに、能力が少しくらいあっても自分には無理だ、という相場観が形成されるからです。ところが就職の場合は違います。エントリーがオープンなため、ひょっとして……と誰もが甘い幻想を抱いてしまう。だからこそ、第一志望に短期間で落ちまくることが肝要なのです。荒療治ですが、それこそが就職相場観の形成のために不可欠な通過儀礼なのです」

通年ということになると、いつまでも相場観が形成されず、それこそ学業にも支障が出てくるのは明らかだろう。

的外れな批判は続くよ、どこまでも

(3)採用活動の開始が早すぎる(から後ろ倒しせよ)という論点に移ろう。「就職内定状況調査」(厚生労働省・文部科学省)は毎年10月1日と翌年4月1日時点の内定率を調べているが、それによると、両者の間で毎年25~30%程度の差が出ている。平成21年3月卒の場合、10月1日の内定率は69.9%であるのに対して、4月1日は95.7%となっている。

海老原は、たとえば半年間、採用活動を後ろ倒しにした場合、現在の10月1日内定率が4月1日内定率の数値となる可能性を指摘する。平成21年度の場合、本来9割を超えるべき卒業後の内定率が3割も下がってしまう可能性があるということだ。「それはそれで困る」と関係者は言うはずではないか。

新卒一括採用を批判するのは大学関係者に多いが、(4)大学の専門性が活かせない、というのも彼らがよく口にする言葉だ。これに対しては、「大学の勉強が社会でそのまま通用する国はない」と海老原は説明する。

多くの人が企業に入って就く仕事は万国共通、具体的には営業、経理、総務、製造といったところだが、いずれも、この学部、この学科を出ていたら必ずなれるというものでもなく、逆にいえば、どの学部、どの学科を出ていなければ絶対につけない、というものでもない。世界のどの国でも、多くの人は大学の専門と関係が薄い仕事につく。学問と職業の連携は曖昧なのだ。

ただ、一部の専門職種は違う。たとえばアメリカの場合、ロースクール出身だと有利な法務、MBA(経営学修士)取得者が優遇されるマーケティング、CPA(米国公認会計士資格)をもっていないと話にならない会計などだが、いずれも採用数はほんの一握りだ。

海老原:「日本型雇用の本質を理解していない人が多すぎます。定期の人事異動があるので、上司、地域、そして事業の変更という3つの再チャレンジが可能なのです。それでも駄目なら、職種さえも変えられる。欧米企業では考えられないことです。企業は解雇という手段に訴えることなく、部署・部門間の人員過不足を埋められる。働く側は再チャレンジの機会が随時与えられる。双方にとって非常に大きなメリットがあるのです」

図表3:日本型総合職は再チャレンジで適材適所に

大企業が確かに新卒重視、でも中小は中途重視

(5)正社員になるチャンスが新卒1回だけになるのはきつい、という批判はどうか。これに対しても、以下、3つの点から海老原は反論した。

まず中小企業の場合は新卒よりも中途を重視しているという事実。たとえば、労働政策研究・研修機構が2004年に行った調査によると、「中途よりも新卒重視」と答えた企業は従業員1000人以上の中堅・大企業であり、それ以下の中小企業は「新卒より中途重視」と答えている。これで正社員になるチャンスが新卒時だけではないことがわかった。

次に、2007年の就業構造基本調査を引き、20 歳から24歳の既卒者のうち、未就業者(新卒無業者+1年以上の離職者)9万4000人が正社員として採用されているという数字を示す。これでフリーターなども企業が積極的に採用していること、正社員になるチャンスは卒業後も存在することがわかった。

では「中途よりも新卒重視」の大企業には新卒時に入るしか道はないのか。これも違うのである。そう、大企業は中小企業の若年社員を「第二新卒」として積極的に中途採用していることを忘れてはならない。

海老原:「結局、就職が決まらず大学を出てしまった若者は、その後、中小企業で正社員になっていきます。そう考えると、就職相場観を早めに形成し、多くの大学生の目を、はじめから中小企業に目を向けさせる施策が必要ではないでしょうか。ただしこれは男性に限られます。女性大卒の場合、年齢が上がるにつれて、正社員率は右肩下がりに減っていく。女性は明らかにキャリアを阻害されているのです。新卒一括採用批判よりこちらのほうがよほど大きな問題だと思います」

残る2つの論点とまとめについては次回レポートしたい。

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