派遣法再改正の動きを追う-現場から上がってきた改正派遣法の問題点

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現場でどう受け入れられているのか。再改正に向けて最前線でどんな議論が行われているのか。

既報の通り、昨年10月から、厚生労働省が大学やシンクタンクの研究者らを集めた「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が月数回のペースで開催されています。昨年10月から改正派遣法が施行されていますが、この会は、あるべき派遣制度の姿を原点に立ち返って考え、今後の施策に生かす、という目的で始められたもので、ここでの議論は今後の派遣制度の変化を占う内容といえるでしょう。去る4月23日、同会第12回を傍聴してきたHRmics副編集長、荻野がその内容をレポートいたします。※2013/05/16の記事です。

改正派遣法、8つのポイント

会自体は厚生労働省12階の会議室で、10時少し前に始まった。後方に多数の傍聴席が用意されていたが、空席が若干目立った。

今回の議題は「2つの論点抽出」であった。ひとつは改正派遣法の施行状況を踏まえたうえでの「新たな論点」の抽出、もうひとつは、これまでの研究会での議論を踏まえたうえでの「深めるべき論点」の抽出である。

まず改正派遣法の施行状況について、事務局(厚生労働省の担当者)から資料の配布と説明があった。東京、大阪、愛知の三大労働局で収集した情報をまとめたものだ。

それを理解するには、改正派遣法の中身を理解しておかなければならない。本連載でも過去記載したが、改正ポイントは以下の8点である。1から7が派遣会社に関わる事項、4、7、8が派遣先企業に関係する事項である。

  1. 1、グループ企業内派遣の8割規制 派遣会社の派遣先が同じグループ内企業に偏っている場合、派遣会社が本来、果たすべき労働力需給調整機能が果たされなくなるので、派遣会社がグループ内に派遣する割合を全体の8割以下に抑える。
  2. 2、マージン率の公表 派遣会社は労働者や派遣先が適切な派遣会社を選択できるよう、自らの取り分であるマージン率を公開しなければならない。
  3. 3、無期転換措置 派遣会社との雇用期間が通算1年以上の労働者を雇用する場合、派遣会社は、労働者の希望に応じ、①無期雇用の労働者として雇用する、②紹介予定派遣の対象とする、③無期雇用への転換促進のための教育訓練を実施する、といった措置を採らなければならない。
  4. 4、均衡を考慮した待遇の確保 派遣会社が派遣労働者の賃金を決める際、派遣先で同じような業務に就いている労働者の賃金水準や派遣労働者の能力を考慮しなければならない。教育訓練や福利厚生などについても同様である。派遣先には上記の参考になる情報の提供が求められる。
  5. 5、待遇に関する事項の説明 派遣労働者に対し、派遣会社は派遣料金、賃金の見込み額、待遇、自社の事業運営の現状、派遣制度の概要などを明示しなければならない。
  6. 6、日雇い派遣の原則禁止 派遣会社、派遣先双方で十分な雇用管理責任が果たされておらず、労働災害頻発の温床ともなっていた、雇用期間30日間以内の派遣は禁止。例外が2つある。ひとつは、専門性が高いため、労使交渉において労働者の力が強い専門業務である場合、もしくは(ア)60歳以上の人 (イ)雇用保険の適用を受けない昼間学生 (ウ)生業収入が500万以上あり、副業として日雇い派遣で働く人(エ)世帯収入500万円以上の主たる生計者ではない人、を派遣する場合である。
  7. 7、離職後1年の派遣禁止 直接雇用すべき労働者を派遣労働者として活用することで労働条件が切り下げられることがないよう、派遣会社には離職後1年以内の労働者を元の勤務先に派遣すること、派遣先にはそうした労働者を受け入れることを禁じる。
  8. 8、労働契約申し込みみなし制度 派遣先が違法派遣であることを知らず、かつ、そのことに過失がない場合を除き、違法状態が発生した時点で、派遣先が労働者に、派遣元と同一条件、同一内容の直接労働契約の申し込みをしたものとみなされる。ただし、施行は2015年10月1日。

続出する「日雇い派遣原則禁止」への批判

このうち、最も労働局からの情報が多かった、つまりは現場への影響が強かったといえるのが、6の「日雇い派遣の原則禁止」だ。

事務局の報告によると、日雇い派遣を従来通り、続行する場合、雇用期間を30日より長くして、複数の派遣先で日雇い派遣に従事させるというやり方で対応する、例外に該当する業務や日雇い可能な労働者で対応する、というやり方をとる派遣会社が多い。派遣会社が日雇い派遣可能な労働者を囲い込んでしまい、そのあおりで仕事が来なくなった労働者から苦情が出た、というケースも報告された。「年収500万円以上である」という形式的な誓約書を提出させたり、実際の就労日数はそれより短いのに、31日以上の契約を結び、従来通りの日雇い派遣に従事したりしている派遣会社もあるという。

規制が厳しくなった日雇い業務から撤退し、日々紹介へ移行した派遣会社もある。ただ、その受け入れ先が以前の日雇い派遣時と同様、安全管理体制を整備しないまま、日々紹介により労働者を受け入れている例が報告された。

「改正法施行後、目立った労働災害は生じていないが、ユーザー側(派遣先・紹介先)の安全管理体制は日雇い派遣でも日々紹介でもあまり変わっていない」というのが労働局の見立てだ。

日雇い派遣の規制強化に関して当の労働者の意見は、以下のように否定的だ。

  • ・例外規定の年収要件が高すぎる。少しでも収入を得たい人が働けなくなるのはおかしい。
  • ・育児や介護といった事情を抱える、年齢が高いので通常の派遣は無理等の理由で、日雇い派遣で働かざるを得ないのに、今回の改正で就業機会が奪われた
  • ・派遣会社の担当者に家計状況を明かすのに抵抗感がある
  • ・日々紹介に切り替えたら、収入が下がった

いずれも、改正前に指摘されていた欠点が露わになったといえるだろう。

そもそも、日雇い派遣が問題になったのは、悪質派遣業者によるブラックな事業運営があった。たとえば、①消耗品代・登録料などの名目での中抜き、②常識を超えたダンピング受注による低給与、③労災保険加入の不徹底、④通常派遣のように「年金・保険」加入義務がない(この分の費用負担が派遣会社にかからない)にも関わらず、通常派遣並みの就労者還元率だったこと、などがあげられる。

解決すべきはこうした問題であり、そこを徹底すれば、本来、「原則禁止」にして直接雇用化する必要もなかったはずだ。なぜなら、直接雇用にした方が、むしろ「身分の不安定さ」「安全管理の不安」などの根本的問題が、解決されるどころか一層深刻になるからだ。

「上に政策あれば、下に対策あり」か

それ以外の改正点については、以下のごとくである。

「グループ企業内派遣の8割規制」については、関係派遣先への派遣割合を下げるため、派遣会社間で派遣先の紹介を行い、派遣料金の数%を手数料として徴収しているケースがある。ともあれ、こうした形でも派遣先企業を増やしていき、「普通の派遣会社」に一歩一歩近づけば、法の趣旨にはかなうだろう。

グループ内の内部事情に通じていたり、深い専門知識を備えている人材を生かすため、という理由で、8割規制の見直しを促す派遣会社の声もあるというが、それは企業都合ともいえそうだ。なぜならば、そこまで企業にとって重要な存在ならば、直接雇用として、グループ内異動ですますべきともいえるからだ。そもそもが、一般職や専門職などを廃止して、そうした職務についていた社員を派遣に付け替えて始めた専ら派遣会社が多かった。つまり、正社員の身分圧迫という問題があるからこその8割規制なのだろう。

「マージン率の公表」は事業年度が終了したばかりなのでまだこれから、という派遣会社が多いが、その値を賃金の交渉に使う派遣労働者も出てきているという。

「マージン率の公表」はそもそも、大きなくくりで(たとえば、事務・製造・販売・サービスなどの分類)で、大手派遣会社は従来から公表していた。これをどこまで細かくするか、という話だが、拙速には詳細を公表できない理由があった。企業からもらう派遣料金と、就業者に支払う派遣給与をそのまま公表すれば、その差分がすべて派遣会社の利益となっている、と大きな誤解を生むからだ。実際は、まず、有給休暇分の積立費用(有給未消化ならば、買い取る派遣会社が多い)、社会保険料の企業負担分(1か月を超える派遣契約者は、原則必加入)など大きくいえば本人のインカムにつながる割合が、差分の約半分を占める。そうした部分も精査して数字に落とさなければならない。だから時間がかかるのである。

「均衡を考慮した待遇の確保」は、配慮は行っているものの、待遇面での具体的変化に現れているという例は少ない。均衡待遇の確保に重要な、派遣先の従業員の賃金情報は派遣の契約時に派遣会社の営業が聞き取りを行って把握する例が多い。ただ、賃金情報の提供を渋る派遣先も少なくない(代案として、賃金構造基本統計調査の職務・企業規模・地域・勤続年数を掛け合わせた数値を利用するのはどうだろうか。そもそも、派遣のような「市場給」を基本にすべき業態ならば、個社ごとに差異が生まれるのはおかしいだろう。そうした前向きな議論が期待される)。

「離職後1年以内の派遣禁止」については、パートなどの非正規社員の労務管理を事業所単位で行っている全国展開の大企業においては、過去1年間に退職した直接雇用社員をすべて把握することは困難であり、完全遵守は難しい、という声があがっている。

この場合、定年退職者が例外とされているが、60歳以前から雇用契約を更新し、65歳で雇い止めされた労働者は対象とならないことに対する苦情が寄せられている。さらに、「日雇い派遣の原則禁止」と相まって、日々紹介で受け入れた労働者を派遣で受け入れる場合、このルール、つまり離職後1年の派遣禁止に抵触してしまうので、日々紹介を手軽に使うことができなくなっている、という意見もあった。これらの諸問題を踏まえると、短期間の非正規雇用者に関しては、「離職後1年以内」規定を緩和する方向への再改正などが、現実的対応といえそうだ。

紹介予定派遣の活性化が新たな論点に

続いて議題が移り、これまでの研究会での議論を踏まえたうえでの「深めるべき論点」の抽出である。優良派遣会社の選別と表彰をどうするか、派遣先が担う責任をどう強化すべきか、派遣制度の仕組みを労働者にどう広めていくかなど、いくつかの論点が出されたが、最も発言が多く、盛り上がったのが紹介予定派遣についてである。仕組み自体はあるのに、企業の活用度合いが低い。それはなぜか、ということである。

これに関しては、ある委員から、紹介予定派遣の活用率は確かに低いが、通常派遣から正社員に登用されるケースが結構ある、という指摘があった。こうした形で、通常派遣→紹介派遣→正社員(「結果、紹介派遣」と呼ぶことにする)というケースは多い。現在では年間10万人を超える正社員が生まれているという。

これはなぜか?実務を熟知していればよくわかる。いわゆる普通の「最初から紹介派遣」だと、正社員になりたいから、と職務についたのに、正社員になれるかなれないか、不安を抱えながら3か月も4か月も働くことになってしまう。そうした正社員希望者は、転職先として複数の企業に応募しており、「即正社員採用」という企業があれば、そちらに行ってしまうのだ。それでも、まだ現在失業中の人ならば、「最初から紹介予定派遣」を使うかもしれないが、現職ありで転職活動をしている人などは、わざわざ現職を辞めてまで、不安のある紹介予定派遣など利用しない。

逆に、現在派遣中の人ならば、こうした問題は全く発生しない。非常に能力もあり、風土的にも合っている人なら、「よかったらうちで正社員に」と声をかけられれば、それに乗る人も多いだろう。それが、10万を超える成約を生んでいるのだ。こうした現実が、審議の場では語られないことに、隔靴掻痒感を感じざるをえなかった。


ようやく成立した改正法が、現場でどう受け入れられているのか、再改正に向けて最前線でどんな議論が行われているか、大まかなイメージはつかめたことだろう。次回は、同じこの場で発表された派遣労働の実態調査の内容を紹介したい。

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