派遣法再改正の動きを追う-3つの調査比較から見えてくる「派遣労働者の実像」(後編)

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派遣労働者向けの紙調査・ネット調査・JILPT調査を比較してみます。

前回に引き続き、4月23日に行われた「今後の派遣制度の在り方に関する研究会」で配布された資料、つまり、派遣制度の実態を把握する目的で、この会のために昨年12月に厚労省が実施した調査の中身を他の調査と比較したうえで、HRmics副編集長、荻野が読み解きます。※2013/06/06の記事です。
お時間のある方は前回の記事をまずお読みください。(派遣法再改正の動きを追う

3つの調査の概要

今回比較した3調査の概要をまず説明しておこう。ひとつは有効回答2,088の派遣労働者向け調査である。派遣会社を通じた紙による郵送方式で行われたので、以下、「紙調査」と呼ぶ。

同時期、この「紙調査」と同時期(2012年12月)、ほぼ同じ質問内容で行われた「ネット調査」がある。こちらは20歳から69歳の派遣労働者、4,000名が回答している。

「紙調査」と「ネット調査」、いずれも厚労省が「派遣の在り方研究会」のために行った調査であるが、何が違うのかというと、対象者の現在の派遣形態である。「紙調査」は常用雇用型が65.9%、登録型が23.2%(わからない・不明10.9%)、「ネット調査」は常用型が53.4%、登録型が41.3%となっている(不明5.4%)。

さらにもう一つ、今回、派遣労働者に対する似たような調査を取り上げている。労働政策研究・研修機構(JILPT)が2010年2月から3月にかけて行った「派遣社員のキャリアと働き方に関する調査」(以下、「JILPT調査」と呼ぶ)である。こちらは有効回答が4,473で、そのうち、常用型が43.4%、登録型が56.5%である。

これら3つを比較していくわけだが、その鍵を握るのは、常用型と登録型の比率。ご存知のように、常用型は派遣会社の正社員に近く、派遣といっても雇用が非常に安定している。このことが調査結果にどのような違いをもたらしただろうか。

一言では括れない「派遣労働者」

さて、前回は年収や契約期間といった定量的な質問が中心だったが、ここからは定性的な質問が主流となる。

派遣という働き方について、当の労働者はどう感じているのか。

最初になぜ派遣社員になったのか、これを3調査で比べてみたい。

「紙調査」の1位は「働きたい仕事内容を選べる」(18.0%)で、それに「特に理由はない」(15.6%)、「正社員として働きたいが、職が見つからなかった」(11.0%)が続く。

図表1:派遣という働き方を選んだ理由(複数回答、%)

「ネット調査」の1位は「正社員として働きたいが、職が見つからなかった」(38.8%)、次が「好きな勤務地、勤務期間、勤務時間を選べる」(33.6%)、3位が「働きたい仕事内容を選べる」(26.3%)となっている。

図表2:派遣という働き方を選んだ理由(複数回答、%)

「JILPT調査」は選択項目の文言が多少異なるが、1位は「正社員として働きたいが仕事が見つからなかった」(36.6%)、「好きな勤務地、勤務期間、勤務時間を選べる」(23.8%)、「私生活(家庭、趣味、看護、介護)との両立が図れる」(23.3%)となっている。

図表3:派遣社員になった理由(複数回答、%)

ここでは常用型の比率の高さが回答に影響していることが想像される。常用型の多い「紙調査」では、「正社員になりたかった」の項目の得点が他の2つに比べて低いのは、派遣社員というより、すでに「正社員」のように働いているからだろう。

「JILPT調査」の3位に、「私生活との両立」という女性ならではの項目が入った。実は回答者の女性割合は、「紙」調査が38.7%と最も低い。最も高いのが「ネット調査」で73.5%、「JILPT調査」は69.6%となっている。

派遣労働者といってもやはり一言では括れないということがお分かりいただけるだろう。見てきたように、常用型と登録型の割合如何によって回答傾向が大きく違うし、さらに男女差も影響してくるというわけだ。

こうやって、3調査を比較して見てくると、「紙調査」の代表的回答者は40代の常用型男性ハイスキルエンジニア、「ネット調査」は登録型の製造業派遣に従事する30代男性、「JILPT調査」が20代の登録型で働く女性事務職のように思えてきた。

派遣先への不満は少なく、今後も派遣で働きたい

この3調査には「派遣先への不満」という共通質問事項もある。その結果も見ておこう。

まず「紙調査」。特に「不満は感じない」が58.2%で1位、2位がぐっと下がって、「休暇が取りにくい」(11.7%)、3位が「派遣先の従業員との人間関係が難しい」(9.4%)となっている。

「ネット調査」でも、「特に不満は感じない」が40.1%で1位、2位が「派遣先の従業員との人間関係が難しい」(20.7%)、3位が「補助的な仕事しか任せてもらえないため、長く働いても職業能力が向上しにくい」(17.4%)となっている。

「JILPT調査」では例によって回答項目が異なる。「賃金が低い」が30.2%で1位、次が「問題点が全くない」(22.7%)、3位が「有給休暇が取りにくい」(15.4%)となっている。

総じて、不満は低いように思えるが、どうだろう。

では、今後はどんな働き方を希望するのだろうか。

「紙調査」では、「今のままの働き方がよい」と「正社員として働きたい」が41.4%と同率1位、2位がぐっと下がって8.6%の「派遣会社で無期雇用される派遣労働者として働きたい」だった。つまり、派遣労働者のままでよい、という回答が多くを占めている。

「ネット調査」では、これが変わる。「正社員として働きたい」が60.7%と1位、2位が19.3%の「今のままの働き方がよい」、3位が19.2%の「派遣会社で無期雇用される派遣労働者として働きたい」という結果だった。

「3年先の働き方」を聞いた「JILPT調査」ではまたさらに変わる。すなわち、「派遣社員を続けている」が31.1%で1位、「わからない」が30.3%で2位、「正社員になっている」が16.7%で3位だった。興味深いのは、女性ならではの「家庭に入っている(仕事をしていない)」が8.0%で次の4位につけていることだ。

ここでも、3調査の回答者プロフィールを考えれば、その結果は合点がいく。

「紙調査」の回答者は常用型エンジニアが主体で、その人たちは常用型、すなわち、派遣会社の正社員だから、給料は高く、雇用も安定しており、今の働き方のままでいい。

「ネット調査」の回答者は登録型の製造業派遣従事者が主体で、今の働き方には不満をもち、早く正社員になりたいと考えている。

「JILPT調査」は事務派遣中心で、働く場所や時間、仕事内容を自分で決めることができ、正社員のようなわずらわしさがない。しかも、自分の学歴やキャリアからすれば、とても正社員としては働けない超大手企業で働いている今の境遇にかなり満足している。

こんな構図が見てとれる。

遵守されていない派遣可能期間の設定

前回、今回と「派遣では十分なお金が稼げないはず」、「雇用が不安定なはず」、「派遣という働き方に対する不満が高いはず」、この3つの仮説が事実かどうか、3調査を比較しながら見てきたが、いかがだろうか。もちろん、この問題を厳密に考察するには、正社員や契約社員に対する同様の比較調査が必須となる。

繰り返しになるが、派遣という一言で括ることの間違い、すなわち、登録型と常用型では就業形態や待遇、そして就業意識がまるで異なることだけはご認識いただけたのではないか、と考えている。

といっても、今の制度が万全だと言いたいわけではない。例えば今の制度の問題が顕在化した項目も「紙調査」にあった。

派遣可能期間に制限がある業務と、ない業務があるのはご承知の通りである。派遣可能期間の制限がある業務に派遣されていた労働者のうち、上限に達する直前か、もしくは達した後、同じ派遣先で部署を変わったことが「ある」と答えた人が14.1%いた。その部署が、変更前に派遣されていた部署とどんな関係にあるか、を尋ねたのが表4である。

図表4:変更前に派遣をされていた部署から見た関係(%)

派遣法で制限の対象となる派遣期間とは、「事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務」についてである。この場合、「異なる部」「異なる事業所」に移った場合は、法律違反にはならないだろうが、「同じ課・グループの中の異なる係・チーム」はもちろん、「同じ部の中の異なる課・グループ」はグレーといえるのではないだろうか。しかも、変わった先の仕事内容は「変更前に派遣されていた部署とほとんど同じ」と答えた人が50.6%もいた。これは籍と席だけ移って、仕事は前と同じ、ということではないか。

こうした実態が明るみに出ると、「取締りを強化せよ」という議論が起こるかもしれないが、「使い勝手が悪い」というのも事実であろう。「派遣の在り方研究会」には業務ごとの派遣可能期間の制限という措置が意味あるものなのか、原点に立ち返ってもう一度検討していただきたいものだ。

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