能力主義と成果主義、コンピテンシーの真実〈3〉

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なぜコンピテンシーに対して誤解が消えないのか

リクルートエージェントが昨年10月に創刊した人事専門誌『HRmics』が去る2月9日に開催した読者向けイベント、「HRmicsレビュー」の模様をお伝えします。
今回は、同誌編集長、海老原嗣生による「人事制度設計上のポイント再整理」です。
日米の評価制度の違いから、日本におけるコンピテンシー、成果主義導入の背景について語った前回、前々回に引き続き、コンピテンシー研究の変遷を振り返り、新しい人事評価制度の提案を行います。※2009/05/14の記事です。

HRmics編集部
■海老原 嗣生(えびはら・つぐお)プロフィール
(株)ニッチモ 代表取締役 HRmics編集長
(株)リクルートエージェント ソーシャルエグゼクティブ
(株)リクルートワークス研究所 特別編集委員
人材育成学会理事

1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。事業企画や新規事業立上げに携わった後、リクルート ワークス研究所へ出向、『Works』編集長に。2003年よりリクルートエイブリック(現リクルートエージェント)にて数々の新規事業企画と推進、人事制度設計等に携わる。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。近著に『雇用常識のウソ』(プレジデント社)


司会「前回でコンピテンシーに対するモヤモヤが大分晴れた感じがします。そもそもコンピテンシーに対する誤解が生じたのはなぜでしょうか」

海老原「コンピテンシーはアメリカ出自の概念ですが、研究が進むにつれ、本国でも学問的意味と、人事実務での意味とで違いが出てきたからなのです」

ハーバード大学教授・マクレランドが、好業績の外交官と平均的な外交官を比較し、仕事上の行動にどんな違いがあるのか、を探ったのがコンピテンシー研究の始まりだった。その後を継いで、詳細な要素分析を行い、コンピテンシー・ディクショナリの体系を作り上げたのがボヤティスである。これを境に、コンピテンシー研究の担い手は二方向へ分岐する。一方が、心の知能指数と呼ばれるEQ研究で知られるゴールドマン、さまざまなコンピテンシーを統合したメタ・コンピテンシーという概念を唱えたホール、といった組織心理学者たちであり、もう一方が、コンピテンシーの強弱を計る行動観察手法を編み出したスペンサー、「コンピテンシーは状況に応じて変化する」と説いたローミンガーなど、主に人事コンサルタントもしくはそれに近い立場の人間だった。

なぜコンピテンシーに対して誤解が消えないのか

海老原「組織心理の人は、資質や特性、パーソナリティに近いものとしてコンピテンシーをとらえ、一方の人事コンサルは職能に近い概念、ただし「発揮」されている事を前提とした能力と見なしたのです。見方の違いですから、どちらが正しいのか、というのは論じても詮無い事です。ただ、日本企業が人事実務で活用する場合、発揮能力と捉えたほうがその効用が大きくなる。このことは前回申し上げた通りです。日本にこの概念を持ち込んだ人事コンサルタントは、発揮能力に軸足を置かず、行動特性としてコンピテンシーを紹介した。このことが、コンピテンシーを分かり難いものにしてしまったのではないでしょうか」

90年代の企業人事は、それまでの下方硬直性の強い職能資格をフルシャッフルして、新しい賃金体系を作り上げねばならなかった。概念自体が非常に職能に近い「発揮能力」では、それまでとの違いが分からない。その状態で、給与のみ変更したら、社内は不平不満の嵐になる。そこで、行動特性よりの言葉を用い、新制度をソフトランディングさせたのだろう。海老原はそう指摘する。

「例えば、行動特性寄りの立場をとる人たちは、『コンピテンシーとは持続的に再現される行動特性』と説きますね。ならば、一度コンピテンシーを獲得してしまえば、永遠にそのコンピテンシーは保持できるはず。つまり、コンピテンシーベースの人事制度なら、もう行動観察型の査定が不要になってしまう事になる。だって、いつでも発揮され続けている筈なのですから。そうならないから、毎回行動観察型の評価が必要になる。とすると、行動観察型の査定をコンピテンシーとセットで導入することは、矛盾になる筈なのです。」

この説明は、言葉が入り子になっていて分かり辛いので、転職エージェントの実務に即した以下の説明が分かり易いかも知れない。

「例えば、法人向けの高額商品でトップセールスだったAさんは、顧客コミュニケーション能力も、課題発見能力も、解決策の企画・提案能力も抜群だった。とすると、対人折衝・課題発見・解決などのコンピテンシーが相当高い筈です。ただ、彼が、個人向けの低価格商品の営業に転職すると、全く業績があげられない、という事例を何度も見ているのです。同じ営業だから、対人折衝・課題発見・解決などのコンピテンシーが利用可能な筈なのに、一方では優秀で、一方ではダメダメ。つまり、コンピテンシーとは、共通な汎用的能力ではなく、業界や商品特性によって、かなり形が変わっている『職能』的な概念の方がシックリくるのですね。」

実際に海老原は、アメリカでクリールマンやハル、スクノバーなどの実務型の有名なコンサルタントと会い、ソリューション事例を見て、「なんだ、単なる職能じゃないか」と確信したという。その一方で、職能を「発揮型」に変えるだけで、下方硬直が劇的に取り除けるという事も知ったのだ。続きは次回で詳しく説明しよう。

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