派遣規制

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派遣規制で派遣就労者は大変なことになっている!

世間で言われているキャリアに関する通説や、常識となった諸データに関して、本当の現実は全く異なることを伝えていきます。今回はなにかと触れることが多かった派遣就労に関する現状について、公的見解と現実の違いについて、書いていきます。レポートは、「通説批判」で定評のあるHRmics編集長の海老原嗣生氏です。※2011/03/03の記事です。

またまた、派遣に関する大新聞のミスリード

派遣規制

ようやく昨年度の労働者派遣事業に関する報告が、厚生労働省より1月19日に発表となった。なぜここで「ようやく」とわざわざ書いたか。実は、あまりにも事情をわかっていない新聞報道が、10年10月の「速報版」発表時になされていたからだ。

以下、その時の大手2紙の概略を見てみよう。

  • ・派遣労働者24%減少 昨年度 厚労省発表「派遣切り」影響鮮明に
    (2010年10月6日 読売新聞)

    厚生労働省は6日、2009年度中に派遣労働者として働いた人が前年度比24.3%減の延べ約302万人となり、5年ぶりに減少したと発表した~(中略)~自動車産業などで相次いだ派遣切りの影響が鮮明に出た格好だ。
  • ・派遣労働者:42%減少…過去最大の下落幅 09年度速報
    (毎日新聞 2010年5月26日 23時09分)

    厚生労働省が26日発表した2009年度の労働者派遣事業の報告集計(速報版)によると、派遣労働者として働いていた人は延べ約230万人で、前年度の確定値に比べて42.4%減と、5年ぶりに減少した。~(中略)~製造業などを中心に人材派遣契約を打ち切る“派遣切り”が相次いだことが大幅減につながった。

この記事を書いた記者は、派遣に関して全くの素人としか言いようがないだろう。以下、少しでも人材ビジネスに関わったことがある人ならすぐにわかる常識的な話を書いておく。

  • ・両方の記事では、派遣労働者について、「302万(読売)」「230万(毎日)」という数字が踊っている。これは「就労者」を指してはいない。登録型派遣で登録だけしている人の数が大量に含まれている。登録しても働かない人は多いし、複数社に登録している人も多い。また、年間1日だけ派遣で働いた人も「1人」とカウントされる。そのため、この数字は実態の2倍以上で推移し続けている。実態を表す数字は、「常勤換算数値」として報告書に付されている。こちらは、09年度が156.8万人、10年が145.4万人となっている。
  • ・両誌の記事では、10年度の速報版と09年度の確報版を比べている。速報版の集計数値は、全事業所の7割程度であり、ここから確報版の数字は大幅に増える。09年度も速報版から確報版で約5割、就労者は増えている。

つまり、速報版と確報版を比べれば、4割5割は数字に違いが出て当然なのだ。こんなむちゃくちゃな状態で、「24.3%減」「42.4%減」と断じてしまう大新聞とは、いかがなものだろうか。

しかも、それは、「登録しているだけの人」「複数社登録マルチカウント」を含んだいい加減な数字。

さらに言えば、その原因は「派遣切り」だという。

派遣切りされるはずの「非常時雇用」は逆に増加!

先月発表された10年度の確報版に沿って、詳細を見ていこう。

  • ・派遣就労者数 156.8万→145.4万(7.3%減)
  • ・製造業派遣 25万→24万(4.3%減)

いかがか?24%減、42%減という記事がいかに実態を反映していないか、よくわかるだろう。就労者は1割も減っていないのだ。

では、この減少は「派遣切り」が原因だったのだろうか?これも、データを少し見れば間違いだとすぐわかる。

製造業派遣の就労状況の内訳を見てみよう。

  • ・常時雇用者(「派遣切り」などできない無期限雇用)16.7万→15.1万(10%減)
  • ・非常時雇用者(いわゆる「派遣切り可能な有期雇用」)8.7万→9.3万(6.4%増)

どうだろう?派遣切りが起きているはずの「非常時雇用」は増え、逆に、派遣切りが起きないからと奨励された「常時雇用」が減っている。全く言われていることと逆だという状況がわかるだろう。

09年の大幅減に続く10年の減少の真相は?

派遣就労者が昨年減少した原因は、派遣切りだと簡単に片付ける前に、現実的に業界でどのようなことが起きたかを少し説明しておこう。

以下、派遣事業に詳しい社団法人日本生産技能労務協会 理事の出井智将さんが書かれているHPより抜粋をして紹介したい。

「平成22年2月8日付けで公表された標記につき、3月~4月の2か月間各地の労働局において、集中的な指導監督を実施するとされ、また、定期調査等も実施され、現在派遣元のみならず派遣労働者、派遣先に対して、労働者派遣法第51条に基づき、立入検査が実施されていると会員から報告を数多く受けております。

  1. 1、(中略)突然派遣先にアポイントもなく訪れ、派遣先担当者が不在であっても、派遣スタッフを拘束し、被疑者でもないのに、「あなたのやっていることは、違法なことだってわかっている?」と違法であると決め付け尋問をした。
  2. 2、専門26業務派遣適正化プランの指導監督に伴い、担当官がアポなしで訪問し、派遣先責任者がいないので、内勤社員が調査協力をお断りすると「断るなら行政命令を発動するからそのつもりでいろ」といわれ、社長が急返戻ってきて対応した。担当官は、5号業務で「電話1本とっても、自由化業務だ」と決め付け、派遣先に是正指導をすると言ってきた。銀行のハイカウンター業務であり、従来の解釈と異なる見解ではないかと指摘したところ、「本省にも確認した」と述べ、具体的な確認内容について一切答えていただけなかった。
  3. 3、定期調査等に伴い、派遣スタッフは、派遣先の個別の部屋で午前9時から午後6時まで8時間拘束を受けた。警察権限がないのに、どのような根拠で身体の拘束をするのか聞くと「労働者派遣法第51条に基づく。もし調査を拒否すると法第61条第5号(検査拒否等)に該当し、30万円以下の罰金だ」と脅かされた。
  4. 4、12月の最終営業日に、電話が掛かってきて、「調査は午前0時を超えるから覚悟しておけ」といわれた。これはさすがに問題ではないかと職業安定部長に申し入れをしたところ、「本日はいい」との連絡があった。
  5. 5、派遣会社の社員が、聴取内容を帰社して確認したいと申し上げたところ、労働局の担当官から強圧的に署名を求められ、やむなく真実とは違うとは思いつつも押印した。

労働局の担当官に、立入検査権限が認められるとしても、派遣労働者、派遣先、派遣元の内勤社員等に対して、強圧的に、長時間にわたって身体を拘束するのは、問題です。スタッフ個人を8時間にわたって拘束するのはいかがなものでしょうか。聴取書の作成についても、強圧的に署名押印させられる等問題のあるケースが散見されます。派遣労働者等は、被疑者ではありません。

労働局の対応について、速やかに実態を把握し、適正に行政権を行使していただくよう要望致します。」

上記は、日本人材派遣業協会から「専門26業務派遣適正化プラン等に係る立入検査等に伴う対応について」という形で、所管官庁に要望として出されたという。

09年のリーマンショック後に大幅減少した反動で、本来なら10年度は派遣就労者は増えてもおかしくはない状況だった。それが、2年連続の減少となった背景には、こうした監督強化により、派遣を活用する企業、そして何よりも派遣希望者が減少したこともあったのではないだろうか?

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