日経平均株価は1万3,000円。半年前に8,000円台だったことがもう今は昔、といった感がします。地価の反転上昇を指摘するメディアもあります。そんな景気のアップトレンドがすっかり馴染んできた中で、その主役ともなる不動産業界はどうなっていくのでしょう。求人だけでなく、景気や資産運用にも詳しいHRmics編集長の海老原が、建設・不動産業界についてレポートいたします。※2013/04/18の記事です。
アベノミクスで株や土地などの資産価格が上昇に転じ、不動産業界が活況に沸きはじめたというニュースを耳にする。求人環境からみても、この話は総じて正しいのだが、ただし、細かく見ると、企業によって温度差があり、その差が徐々に広まり出したともいえそうだ。特に大手デベロッパー間で勝ち組、負け組の明暗がはっきりしている。
その分水嶺となったのはリーマン・ショックだろう。ショック前の地価高騰期に仕入れた物件を損切りして放出してもまだ体力があった企業は、ショック後の安値仕入れができたため、現在、好業績を維持している。一方で、どん底時点で息が上がっていた企業は、現在のバブル前の活況期に指をくわえてみているだけ、という状況だ。
前者の勝ち組の代表は、バックを持っていたため、資金力に余裕があった冠系の大手だろう。しかも昨今では、単体のマンションや商業施設建設というよりも、抜本的な都市再開発案件が注目されており、その方が売上も利幅も大きい。こちらのノウハウもやはり冠系大手が積んでいるため、アベノミクス景気に乗って順調に高度を上げている。
逆に、リーマン・ショック前にイケイケだった新興系や独立系は、ショック後の最悪期に力尽き、さらには、慣れない大型再開発案件に手を出したところが、ノウハウ不足が露呈して、青息吐息となっている例がかなり多い。
さらにもう一群、面白い存在もある。バブル処理が尾を引き、リーマン前の活況期に波に乗れなかったかつての負け組企業の中に、そこそこ復活し始めているところを見かけるのだ。高値仕込みが少なかった分、傷も浅いと、かつての失敗が良い薬となったといえるだろう。
これら復活組には共通要素がある。まず、施工部門を持っていること。企画・施工の融通性や機動力があるということだ。そして、管理子会社で実績があるところがリフォーム事業に力を入れていること。こちらは、日銭収入があるので資金ショートが起きにくく、また不況にも強い。何よりビルの老朽化で顧客が増えている。そして、顧客となったビルやマンションオーナーからの評価が新規開拓につながることにもなる。
さて、では勝ち組からはどのような求人が増えているのか。もちろん、常時、ニーズが絶えない、電気設備施工や技術士などのスペシャリストには相変わらず求人が寄せられているが、昨今の特徴は、若手未経験の営業職が格段に増えている、ということだ。
とはいえ、若手の営業職はどの業界でも比較的求人が多いために、今でも獲得競争は厳しい。かと言って、業界未経験者を採用した場合、教育に一苦労するため、なかなか戦力とならない。しかし、人気業界とはいえない不動産業では、そこまで間口を広げざるを得ない。そこで、誰でも即戦力となりうるような販売フォーメーションを敷いて、こうした悩みを解決し、採用の敷居を下げているのだ。
たとえば、マンション販売を例に説明していくことにしよう。
まず、営業フローを完全分業制とし、受付・案内担当と商談・契約担当にわける。事務アシスタントや販売・接客業などの出身者で人当たりのよい人を受付・案内担当とし、商談・契約担当については、何らかの営業経験があり、顧客折衝力のある人をつける。こうして、購入希望者につつがなく対応しながら、物件を紹介していく。そして、不動産やローンなどの専門知識が必要な商談に至った場合は、金融関連に詳しい社員や建築士を待機させ、サポートを行う。こうしたフォーメーションのため、未経験者でもむりなく一線に立てるのだ。
ただし、こんな「誰でも今すぐ営業に」体制だと、新人期を過ぎた後の将来が少々不安になるかもしれないが、そこは心配ご無用。ちゃんと将来性もあるのだ。
たとえば、受付・案内担当は若年で採用されれば、都下やドーナツ圏の安価物件で比較的若い顧客層に接して業務を熟練し、年齢を重ねれば都心の高額物件で、熟年層相手の担当となる。金額が上がれば、対応もより高度な接客が必要となる。こうして腕を磨き、収入も上げていくというキャリアになる。
一方、入社後に商談・契約担当を任された人は、これを振り出しに、設計部門や内勤、金融関連などの他部署に移動し、それぞれの知識を積み上げていく形でキャリアを磨いていく。
そうして本社の該当部門に残るケースもあれば、前述のように、アドバイザーとして専門知識でサポートする仕事を任される人もいる。こうしたキャリアプランを持つ企業では、それぞれの専門知識を無理なく吸収することが望まれるために、素養が高い人に絞った採用を行っている。現在は不況明けで若手の求人がそれほど多くないために、こうしたスペックの厳しい採用もそれなりにうまく進んでいるが、夏以降、求人活況期に入ると、この部分での求人について、応募者が少なくなる可能性が高そうだ。
一方で、ローテーションさせずに商談・契約担当にとどめるという方針の企業も存在する。こちらは、顧客折衝力の高い即戦力を採用している。20代から40代まで幅広い採用となるため、求人活況期でも採用がスムーズに進むのではないだろうか。
さて、建設・不動産業界の活況が裏打ちされるように、不動産投資信託(リート)が史上最高値を更新し続けている。確かに国内的には、直近最安値から4割もの高騰だが、実物ではなく証券であるため、利用者需要よりも海外の投資家の動きに左右される部分が多い。そこをもう少し突っ込むと、いくら国内的に4割も高騰していても、海外からみれば、円安のためドル建て価格は1割強しか上がっていないことになる。ボトム比1割強のアップでは、まだまだ天井は程遠いだろう。ということで、海外からの資金還流は当分増えると予測される。
そうしたトレンドを背景に、外資系の不動産金融企業が、再び日本で活動を活発化させている。とはいえ、欧米系ファンドはまだまだ動き始めたばかりで、その方向性は見えづらい。今後の動きを予想するためには、リーマン後も撤退せず息の長い投資を続けて、日本市場を熟知したアジア系、なかんずくシンガポール資本の投資ファンドの動きに注目しておきたい。
彼らは、二つの軸を強化し始めている。一つは、高齢化需要を見据えた高齢者向けの分譲マンションであり、もう一つが、アマゾンの成功に触発された物流センター作りだ。EC(電子商取引)のますますの発展とともに、即日配達、低価配送を実現する物流センター作りには力が入ると読んでいるのだろう。
こうした動きにともなって、物流センター作りに関わる求人も増えているが、こちらはなにせ求職者不足。流通系で大規模モールやショッピングセンターなどを開発していた人材などなかなか集められない。そこで、30歳以上でPM(資産管理)、AM(物件管理)経験が5年以上あること、くらいに条件を広げて採用を行なっている。
さて、ひと足早く活況期に近づき、人材枯渇感が高まるこの業界では、なんとか知恵を絞って採用をする動きが、こちらもひと足早く始まった。このあと各業界の人材需要が高まると、さらにもうひと工夫が必要な段階に入るだろう。
いや、それよりも、この業界には、さらに人材難に輪をかけるようなビッグイベントが秋に控えている。それは何か、この連載を読んでいる人ならもうお気づきだろう。
そう、オリンピック開催地の決定打。9月にそれが東京とジャッジメントされた場合、業界は、嬉しい意味での人材払底に苦慮するのではないだろうか。
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