パート・バイトの社保加入論議で、忘れられた人たち

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「企業負担の増加」や「女性の社会進出の足かせになる」といった意見が反対意見の主流だが、さて本当は何が問題なのか?

世間で言われているキャリアに関する通説や、常識となった諸データに関して、本当の現実は全く異なることを伝えていきます。パート・バイトにも年金と保険を!という動きに対して、待ったをかけているのが今回の話。HRmics編集長の海老原嗣生氏のレポートです。※2011/04/14の記事です。

パート・バイトで社会保険に入りたくても入れない人は何人いるか?

パート・バイトの社保加入論議で、忘れられた人たち

またまた、ちょっと本質とずれた弱者救済案が、新聞をにぎわせている。

  • ・非正規社員も厚生年金に 首相、加入条件緩和の意向
    (朝日新聞/2011年3月5日)

会社員が対象の厚生年金の加入条件を緩め、非正規雇用の労働者にも対象を広げる考えを示したものだ。

雇用の流動化や就職難から、パートの主婦に加え、最近は若い世代にも非正規労働者が急増している。本来は自営業者を対象にした国民年金加入者のうち、今では雇用されている労働者が4割を占める・・・現行制度では、非正規労働者でも労働時間が正社員の3/4(通常週30時間)以上なら厚生年金の対象になる。年金改革論議の中で、こうした条件を見直していくことになりそうだ・・・」

首相が音頭をとり、最大の労働団体の長である古賀連合会長も共鳴する。さて、この話は何が問題か?

たぶん、「非正規社員、1,700万人」という大きな数字が頭にあり、また、さんざん叩かれてきた派遣問題も重なって、「こんなにたくさんの人が、まともな保障を受けていない」という先入観に駆られていると思われるからだ。

まず、あたり前のことだが、法人企業に雇用される限り、正規だろうが非正規だろうが、以下の条件を満たす限り、基本は社会保険に加入せねばならない。

  • ・概算で週28時間(正社員の3/4以上)以上勤務している
  • ・雇用契約が1か月を超える

法人の場合、この条件にかなう限りは、従業員を社会保険に加入させる義務がある。よく、「派遣社員は無保険」と勘違いをしている人がいるが、これは、上記の条件を満たさない場合か、よほどの違法経営をしている派遣事業主に限られる。ちなみに、派遣協会が例年出している「派遣社員1万人調査」によれば、上記2条件を満たす派遣社員のうち、企業の保険に加入できていない(無保険・国民年金)就労者は、2.2%となっている。この2.2%自体は問題であるが、「派遣社員は無保険」というのは誤解だとわかっただろう。

では、上記、「週28時間未満」「雇用契約1か月未満」という就労者はどのくらいいるだろうか?これらの人は、基本は「就労時間の短いパートタイマー」か「契約期間の短いアルバイト」にカウントされることになる。この数を2009年の労働力調査より算出すると、1,153万人という数字となる。ただ、パートでも28時間以上働く人はいるし、同様にバイトでも1か月を超える契約も珍しくはない。そうした人たちには「社会保険加入義務」が生じるために、本来なら彼らをこの数字から除いて、本当に社会保険に入れない人の数を算出すれば、もっと小さな数になる。ここでは、最大限見積もって、「1,153万人」が短時間・短期間労働のため、社会保険に未加入の可能性がある、というにとどめておこう。

さて、この1,153万人全員が、保険に入れないかわいそうな人か?

これも実は問題あり。

なぜなら、この1,153万人のうち、「他者の保険に加入している」か「自ら加入を拒む」人たちがいるからだ。それを精査しておこう。

まず、他者の保険に加入できる人。これは、学生や主婦など「被扶養者」扱いになる人たち。労働力調査から引けば、パートとバイトの学生が108万人ほどいる。次に主婦。これが非常に多く、692万人。合計でぴったり800万人が、「他者の保険に入っている」と考えられる。
次は、「自ら加入を拒む人」を概算してみよう。こちらは主に、60歳以上のパート・バイト者がその対象となる。60~65歳の人は、社会保険に加入すると、俗につなぎ年金と呼ばれている「在職老齢年金」の給付が受けられなくなる。そのため、この年代で社会保険を脱退する人が非常に多い。しかも、60歳以降は国民年金を支払う必要がないため、脱退しても、自費で支払いを続けるのは「健康保険」だけでいい。ただし、脱退するためには方法は二つしかない。一つは、「役員(非従業員)」となること。もう一つは、「週28時間未満の短時間労働者」となること。もう言わずもがなだが、ほとんど多くの人は後者を選ぶ。

こうして60歳以降のパート・バイトが増えていく。その数、男性で45万人、女性は(主婦を概算で差し引いて)64万人。合計109万人。

ここまでを合わせて、純粋に「入りたくても社会保険に加入できない短時間労働者」を出しておこう。

1153-108-692-109=254万人。これが、「最大限」に見積もった、短期・短時間就労による保険未加入者となる。

この問題が一向に進展しない理由

確かに、この254万人は多い数字だろう。しかし、一方でここを論議の的とすると、学生・主婦・老齢者の「入りたくない・入る必要がない」人たちの問題も起こる。さらにいうと、パート・バイトを多数活用している流通・販売・サービス業の団体からは(新たに企業分の支払い義務ができるため)「反対」、一方、現状は扶養者分の保険を肩代わりしているその他企業の団体からは(肩代わり義務がなくなるので)「賛成」という、綱引きが繰り返される。同時に、「主婦労働にキャップをつけ130万円規定の撤廃」を叫ぶ、女性活用促進派と、「主婦の権利を守る130万円規定死守」派の、「女性支援団体」同士の論議も起きるだろう。

つまり、収拾がつかない状況となり、結論が先送りになる可能性が高い。

より現実的なステップを踏むべきではないか?

それは何か?

忘れ去られた3つの「非加入」問題

まず、超大きな問題として、正社員(無期限契約)でも、全く法の目の届かない無保険者がいる。それは、「従業員5人未満の自営業」で就労する従業者たちだ。

ちなみに、「雇い人あり」の自営業者は163万もある。仮に、これら自営業者が1社平均1.5人を雇っていたとしても、250万人近くの「無保険者」を生み出している。

もっと大きな存在と考えられるのが、業務委託という名ばかり「自営業者」の存在。拘束時間や業務形態自体、全く従業員と変わらないのに、扱いだけが「業務委託」となっている、いわば管理・雇用責任を無視した社会保険逃れ。イギリスなどでは、構内労働をする限り、すべての就業者(業務委託を含む)に社会保険と有給休暇の企業負担を義務化している。同様の施策を用いて、「雇用逃れ」を徹底的に取り締まること。この「雇用逃れに入りそうな人たち」はどれくらいいるか、正確な数字を出すことができない。可能性ある数字を拾うと、労働力調査で見る限り、「その他非正規」が139万人、雇い人なしの自営業(名ばかり自営業)が421万人、両方の合計で560万人となる。このうちの3人に一人が「雇用逃れ」であれば、187万人という数字になる。

この「小規模自営業の従業員」も「雇用逃れの業務委託」も、「正規同様」の長時間勤務の人が多々いるだけに、28時間以内の就労者よりも、悪質性が強い。

まだもう一つある。超短期労働者、いわゆる日雇いの問題だ。同じく労働力調査を見れば、日雇い労働者は110万人いる(扶養者・老齢者含む)。彼らには、日雇特例健康保険という種別の保険が用意されているが、このハードルが高い。まず、月13日相当以上の就労が加入条件となっており、これ以上の日数を勤務できない労働者は対象とならない。次に、この保険への加入(保険手帳の申請)は自らが社会保険事務所に出向き、住民票を携えて行わなければいけない。さらに、保険料は印紙という形で随時払い、しかも、その保険料は日額賃金により変動し、そのうえ、この半分を雇用した事業者からも印紙という形でもらわなければならない、と何重にもハードルがある。こうした「日雇い保険の障壁」も早急に手をつけるべき問題だろう。

これらの、異論が比較的起こりづらく、しかも困窮の度合いが高い人たちの問題を、後ろ倒しにしてまで、なぜ、議論がなかなか進まない「非正規のパート・バイト」問題に日が当たるのか?

この理由をズバリ指摘しておこう。

要は、「非正規は1,700万人」とひときわ大きな数字。何でもひっくるめて語られるのが非正規問題であり、その中身が精査されていないのだ。大方の常識は、「その大半が、パート・バイト(これは正しい)」であり、それも、正社員の口にあぶれた若者が多数を占めている、といった勘違いがそこにはある。主婦・学生・高齢者を除くとその数はずいぶん小さくなり(最大でも254万人)、しかも、主婦・学生・高齢者には非加入の既得権があるために、一向に話が進まなくなる、という現実は置き去り。

こうして見えづらい「小規模自営業の従業員」「雇用隠しの業務委託」「日雇い保険のハードルの高さ」といった、困窮度合いの高い課題は後回しにされる。

逆に、これら3つの「早めに解決ができそうな」部分だけでも先回しで政治解決していけば、救われる人も多いし、政治への信頼も少なからず取り戻せるのではないか、と私は思っている。

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