なぜ好景気なのに賃金が下がったのか?2つの幻惑要素

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経団連傘下の超大手企業が、何年かぶりにベア(ベースアップ)を行うという報道が新聞を賑わせています。

ところが、その正反対のニュースが2月21日の大手新聞の一面に踊りました。「首相要請届かず・・・(日経新聞)」「フルタイム勤務者の月給、4年ぶりに減少(読売新聞)」「昨年の平均給与は4年ぶり前年割れ(産経新聞)」「初めて男女とも前年下回る(毎日新聞)」・・・。
アベノミクス第1の矢として景気回復を重視する政権の方針は、賃金アップには届かなかったのでしょうか?データのことならこの人に聞くことにしましょう。HRmics編集長の海老原嗣生が真相を解説します。※2014/03/06の記事です。

説明になっていない厚労省リークをそのまま載せた大新聞

安倍首相が経団連に賃上げ要請しても、給料はその反対にダウンしている!という切なくなる情報が2月21日の朝刊各紙にならんだ。以下、代表的な記事をあげておく。

フルタイムで働く人の2013年の月給(残業代など除く)の平均額は29万5,700円(前年比0.7%減)で、4年ぶりに減少したことが20日、厚生労働省の賃金構造基本統計調査でわかった。厚労省は「景気回復への期待から仕事は増えたが、介護業界や非正規など、相対的に賃金が低い雇用が伸びたことなどが原因」と分析している。~中略~男女別では、男性が32万6,000円(前年比0.9%減)、女性が23万2,600円(同0.2%減)~(2014年2月21日 読売新聞)

この記事をもとに、テレビではワイドショーやニュースが後追いで盛んに景気が給与に反映されていない!という拡散報道が続いた。

ただ、ここでよく考えてほしい。

実は、昨年までは、3年連続上昇!だったということ。

たとえば、2011年は東日本大震災とタイの大洪水という二つの大きな経済を揺さぶる事件が起きた。2012年は原子力問題、円高、税金高などに対する民主党政権の対策不足を揶揄して、盛んに「企業経営の6重苦」などが叫ばれた時期だ。CI(景気動向指数)的にみると、2012年3月から12月は明らかに景気下降期でもある。

それと比べると、2013年はいたって平穏無事に景況回復が続いていた。少なくとも、一昨年や3年前よりはいいはずなのに、それが、どうして、ダウンなのか?

この理由としては、「非正規」や「介護職」というのはあまり説明にならないだろう。

なぜなら、非正規や介護職は、昨年だけでなく、一昨年もその前も増えているからだ。このあたりに対して、政府発表をマスコミもうのみにせず、真剣に咀嚼してほしいところだ。

要は、昨年のみ何が変わっていたのか。

雇用延長が努力義務から義務化した影響の大きさ

数字を追って、種明かししていこう。

まず、男女別でみると、男性は額で約3,000円、率で0.9%、女性は額で約500円、率で0.2%と、男性の落ち込みがかなり大きい。それが、昨年に限って起きたのはなぜなのか?社会変化を注意深くたどると答えは一発でわかる。2013年4月以降、60歳以降の継続雇用が、努力義務から義務化された。この雇用延長は、かなりの割合で「非正規化」している(図表1)。

図表1:年代別非正規雇用数(男性)

すでに、2007年以降の努力義務時は、それでも、再雇用率は7割弱にとどまりっていた。それが昨年から高率になったため、55~64歳の非正規雇用がぐんと増えた。2013年は前年と比べて10万人も増えている。2012年はマイナス2万人、2011年は2万人増と大勢に影響がない程度の増減であったことと比べると、大きな差がつく。これが理由の一つといえるだろう。

二つ目の理由もこの延長にある。2013年は、ベビーブーマー世代の先頭(1947年生まれ)が、65歳を超える年でもあった。そのため、再雇用も終了・・・ではなく、企業によっては、再々雇用延長が起きている。中小企業などを中心に、人材不足の企業は熟練労働者を古くから再々雇用してきた歴史がある。だから、これも継続的な流れなのだが、そもそも、65歳に到達する人が今までは2重の意味で少なかった。一つは、60歳で雇用終了する人が多かったから。二つは、世代人口が少なかったから。それが、2013年は、2007年から始まった雇用延長の努力義務化で65歳に到達する人が多く、しかも世代人口が多いため、一気に65歳超の年齢の非正規雇用が増えたのだ。

その数は11万人にもなる。

55歳から64歳の層と合わせて、中高年非正規が2013年は21万人も増えた。対して、2012年は同1万人減、2011年は同2万人増。こうした壮年期社員よりも格段に低い給与で働く中高年非正規の存在が、平均月給のダウンに大きく寄与していると、私は考えている。

調査した6月は、生産拡大よりも在庫吐き出し時期だった

ほかに理由は考えられるだろうか?

推測の域からは出ないが、調査時期が6月1日という微妙な時期だったことも、理由に挙げられそうだ。

この時期の景気回復は、図表2からわかるとおり、民間消費が先導役となっていた。企業はまだ回復が本物かどうか様子見をしていた段階であり、だから、生産拡大には乗り出さず、その帰結として、旺盛な消費に対して、「在庫取り崩し」で対応していた。図表2では民間在庫が著しくマイナスになっていることからもそれがわかるだろう。

図表2:2013年4~6月期GDP寄与率

つまり、昨年の6月時点では、景気回復は企業経営には寄与したが、雇用や賃金には跳ね返っていなかった。そのことが二つ目の理由といえる。

気の早い話だが、それでは来年はどうなるか?

まずは、高齢者非正規の増加だが、60~65歳の非正規雇用に関しては、来年はまだまだ増える。65歳に到達してこの年齢枠から卒業する雇用者の数と、60歳になって雇用延長でこの枠に入る人の差引でプラスマイナスは決まる。基礎人口自体は、卒業する人のほうが多いので、一見マイナスになりそうに見えるが、雇用者人口となると、「努力義務」時代の7割弱雇用と「義務化後」の10割近い雇用との比較となるため、入ってくる人口の方が多い。義務化してから5年が経過する2017年まで、この傾向は続くだろう。

もうひとつ。65歳に達した人の再々雇用はどうか?こちらは、65歳人口がピークになる2014年までプラスは続く。つまり、まだまだ「マイナス寄与」となる。

だから「フルタイマー雇用者の平均給与」はマイナスが続く可能性はある。が、この面は、逆に考えれば、「雇用が伸びている」のだからそれほど問題にすべきではないだろう。厚労省には、年代別平均給与も合わせてサマリー発表してもらえると(詳細データでは発表している)こうした誤解は生まれなくなると思う。

ただ、年齢別平均給与で見ても、給与が下がり続けたら、それは大きな問題だ。後段の「景況要素」と給与の関係で考えても、企業が本腰を入れて生産活動に乗り出したら、給与はアップしなければおかしい。それがつながらなかったときこそ、マスコミは本格捜査に乗り出すべきだろう。

昨今の状況だと、生産拡大をしたとしても、為替不安がある限り(また円高に戻ることを恐れ)、正規雇用を増やさず、雇用終了の容易な非正規を増やす可能性が高い。そうした形で2014年に、老年ではない非正規が増え始めないことを望みたい。

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