新卒求人倍率と主要企業採用数の落とし穴

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今年は就活生も安泰?いえいえ、安心は禁物です。

4月25日付の大手新聞各紙には、大卒求人倍率(リクルートワークス研究所発表)に関する記事が掲載されていました。アベノミクスで景気が好転したため、求人倍率はリーマンショック後の低位底這い状態から、大きく好転、1.61倍をつけました。これは、リーマンショック直後の2010年卒(採用活動は2009年)の1.62倍、2006年卒(同2005年)の1.60倍と同水準で、なかなか良好な数字です。しかし・・・。
海老原嗣生氏(HRmics編集長)が現実をレポートします。※2014/06/05の記事です。

500名以上の採用予定企業がなんと34社?

人気大手企業の大学新卒採用数とはどのくらいか、ご存じだろうか?

たとえば、今年3月22日の日経新聞には、主要100社の採用予定数が掲載されている。その「新卒採用予定数」を見れば、今年就活しているわが子を持つ親御さんは小躍りをしてしまうかもしれない。それぐらい「大きな数字」が並んでいるのだ。

ざっくり書くと、採用予定数が多いのは、イオングループの3000名が圧倒的な1位で、三菱東京UFJ銀行の1550名。続いて、同じメガバンクのみずほフィナンシャルグループが1365名。僅差で1350名のトヨタ自動車が続き、さらにJR東日本と東芝グループとセブン&アイ・ホールディングスが1200名でならぶ。そのほかにも、三菱電機1170名、ファーストリテイリング1000名と、実に9社が楽々1000名を超える。ここまでの合計でなんと1万人にもなるのだ。

採用予定500名を超える企業は34社と全体の3分の1。ここまでで総採用予定は3万人に迫る。なんとも景気よく見えるこの数字は、現実とはかなり異なる。にもかかわらず、一部マスコミがこうした数字を二次利用するために、誤解がますます広まってしまう。

どこに問題があるのか。

まず、これは「大卒」のみの求人数ではなく、高校・短大・専門を含んだ数字なのだ。

しかも、表中にその細目が示してある。イオンで8000名が非大卒、同様にセブン&アイ・ホールディングスで300名、トヨタ自動車540名、三菱電機300名。JR東日本は、学歴別を非掲載だが、後述する、東洋経済新報社の『就職四季報』での実績発表から見ると、大体4~6割が非大卒となっている。

つまり、大学以外の数字がかなり多く混ざっているのだ。

さらに、大卒のみに絞っても、『就職四季報』の実績調査などから見て、銀行や証券、NTTなどには一般職・地域職などの職務限定型採用が含まれる。

ここまでを除外して、大卒総合職のみに絞ると、大体採用予定数は3分の2程度まで減ってしまう。つまり、この34社で大卒総合職のみの採用予定枠を出せば、2万人程度となるだろう。

しかもこれはあくまでも「予定数」なのだ。好景気で各社が採用に熱を入れると、内定者のバッティングが増え、そのため、内定を出しても実際に入社に至る人の割合が減っていく。結果、内定未充足という企業が多くなる。さらに言うと、このいかにも人気企業という名前の会社群にも、「~グループ」という発表をしている会社が多々ある。こうしたグループ表示では、あまり人気のない傘下企業も多数含まれるため、それが全部「人気企業」というわけにはいかない。

こうした諸事情が重なるため、新聞が掲げる採用予定数と、現実の就活の体感値にはギャップが生まれてしまうのだ。

人気100社合わせても、採用ギネスは3万に遠く及ばない

さて、それではウソ偽りない「大卒×総合職×人気企業」の採用数はどのくらいになるか。

これに関して公的データはもちろんない。私的データでも、未発表企業があり、実数は確定できない。が、おおよそのところを推測する方法はある。

前述の『就職四季報』には、大手や冠系などの人気企業約1000社が掲載され、このうち、600社弱の企業が、採用数を詳細に掲載しているのだ。

このうち人気ランキング上位100社に限っても、例年、50~60社の詳細数値が確認できる。

この発表企業の数字から1社平均の採用数を求め、それを100倍することで、人気企業100社の概算推計値が作成可能だ。

私はこの手法で、2012年度発行の拙著『就職に強い大学・学部』(朝日新書)にて、2001年から2010年までの10年間を調べてみた。結果、この10年間の人気100社の採用数ミニマムは2003年の、約1万2000人。逆に最大は2009年の約2万6000名となった。

ちなみに、公的数値としては、厚生労働省「雇用動向調査」に、新規学卒別、企業規模別の入職数がある。こちらは「人気100位」という絞りはもちろんできないが、従業員数1000名以上という緩いくくりで大手の採用数が過去から把握可能だ。この数字で見る限り、2009年の大手の大卒採用数はバブル時代ピークの1991年を抜いて、ギネス数字を示している。それほどの採用絶好期においても、人気企業の採用総数推測値は2万6000名ほどにしかならない。

このことから、いくつかの現実が見えてくる。

一つは、好景気(2009年)と不景気(2003年)でも、人気企業の採用数は2倍程度にしか膨らんでいないこと。

もう一つは、最大にゆるい時期(2009年)でも、その採用数は2万6000名、それは即ち、全卒業生(約55万人)の5%にもならない数であり、超難関Sランク大学(東大、京大などの旧帝大プラス早慶)の卒業生(約4万人)よりもはるかに少ないのだ。

ご利益が少ない文系学生

まだまだ考えねばならない現実を語っておこう。

先ほど明示した採用予定数500名以上の34社のうち、16社がメーカー・インフラ系の企業となる。こうした企業は基本、技術者の採用が圧倒的多数を占める。たとえば、東芝は採用予定の75%が技術者、三菱電機で74%、トヨタは86%、日産でも83%、ホンダ85%、富士通70%とこんな数字となる。

つまり、メーカー・インフラ系企業の大口採用は基本、技術者に広げられているのだ。この大きな枠に応募できるのは、理系、いや理系でも機械・電気・情報がメインでその他の学科では厳しい。

つまり、文系や機電以外の理系にとっては、「大口採用しているメーカーやインフラ系の16社」については、あまりご利益にあずかることができない。こうした現実を理解して引き算をしていくと、人気企業の採用数は、好景気でも、いわゆる普通の学生の数とは全く不釣り合いなほど、少ない。

空気に流されず、まず構造把握を

われわれ日本人は、雰囲気や場の空気を大切にする。だから以心伝心で人の心に応える「おもてなし」が得意なよき一面を持つ。ただ、その一方で、空気や雰囲気に流され、実態を見失うというよくない一面も持つ。

就職問題もこの「空気」でずいぶん誤解が広まってしまったところがある。

不況だろうが、好景気だろうが、人気大手に入れるのはほんの一握り。学生はいつだって圧倒的多数が「それ以外」の企業に就職している。

そして、かつてリーマンショック前の好景気でも7万人程度の学生が就職を決められずに大学を卒業した。好景気でも、とても多くの学生が就職できずに苦しんだ。

「今年は好景気だから大丈夫」という前に、この構造を深く受け止めるべきではないか。

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