少子化には、貧困対策よりも女性のキャリア支援を

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「結婚・出産=キャリアの終わり」を脱することが必須なのです。

悩ましい数字が新聞記事をにぎわしています。「昨年の婚姻数は戦後最少」「出生率1.39で回復足踏み」「第一子出産30歳超す」……。新聞もテレビも、こうした晩婚・少子化について大きく取り上げていますが、その原因を「貧困」とする論調が目立ちます。本当にそれだけが原因なのでしょうか?働く女性にとっては非常に気になるこの話について、HRmics編集長の海老原が、ズバリと斬っていきます。※2012/07/12の記事です。

「年収が増えると子供も増える」のウソ

「若年層の雇用環境が悪化し、将来への不安が大きいことが背景」

「仕事や賃金が不安定なため、結婚・出産をためらう若者が多い」

「内閣府の調査によると、20~39歳の未婚男女の約9割が結婚したいと考えているが、その半数以上が経済的な不安を抱えている。20歳から49歳の男女に、希望する数の子供を持たない理由を聞いた別の調査でも、「お金がかかりすぎる」が最多だった」
(以上、日経新聞6月6日朝刊 社説および5面)


う~ん、何でもかんでも貧困のせいにしちゃうのね、と唸ってしまうような文言が並んでいる。まずは、この話が正しいのならば、こういうことになるだろう。

「高年収ゾーンは子供をたくさん産んでおり、逆に、低年収家庭では子供を持たない」

仮説が正しいかどうか、早速データを探ってみよう。以下、第13回の出生動向基本調査(厚生労働省、2006年)より数字を拾っている。対象は2000年以降に結婚した家庭である。

図表1:出生子供数別、妻の現在の従業上の地位別にみた妻の年収

図表2:出生子供数別、妻の現在の従業上の地位別にみた夫妻の年収

詳しく見ていこう。妻が正規雇用の世帯をみると、子供なし世帯の妻の収入は342万円。これは子供1人の249万円よりも高く、2人以上の350万円に肉薄する。パートを見ると、子供なし世帯が118万円で子供1人(66万円)、2人(50万円)よりも高い。

「子供のいない世帯は貧困だから」という傾向は見てとれず、むしろ、子供のいない世帯ほど妻の年収は高いともいえそうな数字だ。

これを夫婦合計の世帯年収とすると、さらに傾向が顕著になる。妻が正規雇用・無職の場合で、子供なし世帯が最も年収が高く、妻がパートの世帯でも、子供1人の世帯よりは、子供なし世帯の年収が高く、それは子供2人世帯に肉薄している。

やはり、子供なし世帯の年収が低いとは全く言えない数字といえるだろう。

出生動向基本調査には、もっと端的に「子供を産まない理由」を聞いた項目がある。

それを以下、図表にしておこう。

図表3:理想の子供数を持たない理由

子供が欲しいのに現在0人という世帯で、金銭的理由は18.1%にとどまり、「欲しいけれどできない」(60.2%)や「高年齢」(41.0%)よりもずいぶん少ない数字となっている。金銭面が理由となるのは、2人以上欲しいのに現在1人の世帯(44.0%)や、3人以上欲しいのに、現在2人という世帯(71.1%)となる。まっとうに考えれば当たり前の話だが、欲しい子供の数が増えれば増えるほど、金銭面がネックとなるが、現在0人の理由としてはそれほど大きな要因とは言えないのだ。

高年収こそ、結婚を希望しない現実

ただし、ここまでは、既婚者の調査となる。未婚者の場合も見ておく必要がありそうだ。そもそも、年収が低いがために、結婚できずにいる女性がいるかもしれないということを検証したい。

こちらも同じ出生動向基本調査の「独身者調査」にピッタリの項目がある。

図表4:独身生活の継続以降と年収(女性)

くっきりと見てとれないだろうか。そう、年収が高くなるにしたがって、「独身生活を続けてもいい(YES+ややYES)」が増えていく。

同調査からも類似データをもう一つ見ておこう。学歴と独身継続意向の関係だ。

図表5:独身生活の継続以降と最終学歴(女性)

こちらでは、大卒の独身継続意向(YES+ややYES=35.2%)が短大専門(27.3%)、高卒以下(29.1%)よりも高くなっているのがわかるだろう。

ここまでのデータは、何を語っているのだろうか?

まず、既婚者については、低収入だから産まないのではない。産まなければ高収入でいられる。だから産まないという事実。

そして、独身者に関して言えば、高収入になれば、結婚に頼らなくても生きていけると、独身志向が高まっていく。つまりここでも、低収入で結婚しないというよりも、高収入を維持したいからこそ結婚しない、という新たな軸が見える。

もうそろそろ、日本社会はこの事実に気づくべきではないか?

そう、今でも日本社会は、家事・育児は女性の担当、という暗黙の了解の上に成り立つ。たとえ、育児休暇や短時間勤務制度が整おうとも、その制度は、あくまでも女性が活用することが大前提となっている。
とすると、子供を産んだ後の女性には、その後、産休・育休・短時間復職のほぼ全てが押しつけられ、結果、10年近く昇進・昇格からは見放されることとなる。そう、子供を産むこと=男性同等のキャリアアップをほぼ諦めることと同義だろう。

そんな状態なら、できる既婚女性は出産を後ろ倒しにし、同様に、輝く独身女性は結婚を二の次に考えていくのではないか。それが、これらのデータの指し示すところだろう。


かつて、中卒が最終学歴のメインだった1950年代。15歳で社会に出た女性たちは、30歳までに15年もの猶予期間があった。今は、女性でも大卒が主流となり、学齢は7歳ものびて、社会に出るのは22歳以降となっている。社会人見習いの間にあっという間に20歳後半ともなり、それから30歳までに仕事も恋も実らせる、というのは、タイムスケジュール的にかなり厳しいといえるだろう。

その“ハードスケジュール”に輪をかけて、せっかく実りだしたキャリアが中断し、多くはそのまま先細りになる、というもう一つの辛い条件が重なる。

これでは、高学歴・高収入の女性が結婚や出産から遠ざかる理由も理解できるだろう。貧困というわかりやすい理由でこうした女性の悩みを糊塗するのではなく、もっと本気で考えるべきだと、強く主張したい。

日本は、非正規の半数以上が主婦である。日本の共働き育児世帯での男性の家事育児参加率は、欧米の半分以下、3分の1程度である。こんな「結婚・出産=キャリアの終わり」状態から女性が脱することができない限り、少子化にピリオドは打たれないのではないか。

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