電気・電子・機械メーカー - 日本型雇用、最後の牙城に意識変革!?

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電気・電子・機械技術者の就労意識が変化してきている。

大手自動車メーカーがこぞって四半期決算を好業績で終え、通期利益予測も大幅上方修正。半導体も3四半期連続業績伸長、家電はエコポイントで売り上げが前年比アップ、と業績回復が鮮明となってきた電気・電子・機械メーカー。果たして人材需要も回復に向かいつつあるのか。業界トレンド講座、今回は「電気・電子・機械メーカー」を取り上げます。レポートはおなじみHRmics編集長の海老原です。※2010/03/11の記事です。


業界全体の動きをみると、こんな流れになってきたと総括できるだろう。

  • ・昨年6月まで→全く求人がない状況
  • ・昨年6~9月→求人はちらほら見られるが、スペックが厳しく、ほとんど書類が通過しない
  • ・昨年10~12月→書類は通過するが、内定にはなかなか至らない

つまり、昨年は「休業状態」だったのが、「開店休業」に変わったといったところだった。 これが昨今は、採用まで至るケースが増えている。その裏事情について説明してみたい。

本体・本流の採用はまだ。周辺技術と専業からの雪解け

電気・電子・機械メーカー - 日本型雇用、最後の牙城に意識変革!?

まだ、半導体でも家電でも自動車でも、大手完成品メーカーが本格的な採用を開始したとはいえないのが実情だ。採用活動を活発化させているのは、いずれの業界でも基幹部品やモジュールなどを作っている専業メーカーや商社である。大手本体での採用があったとしても、その主体は、本業関連のエンジニアではなく、従来から弱かった周辺技術の先端エンジニアに限られている。

自動車関連を例にあげると、採用活動を活発化しだしたのは変速機や電装系のパーツメーカーであり、完成車メーカー本体では、たとえば電池関連や材料系、モーターといった周辺技術のエンジニア採用がポツポツと始まっている、といったところだ。

主要パーツメーカーや先端特化したファブレスなどの場合、納品先の完成品メーカーは複数にわたり、どこか一社が業績が悪くても別の会社からの受注で業績をカバーできる。そのため、比較的思いきった採用ができるのだろう。一方、エコポイントなどの優遇政策により不況が和らいでいる完成品メーカーは、景気の二番底不安が完全に払拭できていない。現在、業績回復途上の増産で求人ニーズ自体は社内にわき起こっているのだが、比較的人材層が厚い本流エンジニアの採用は止めて、「今しか採用ができない」周辺分野の採用のみを開始したというのが、「採用側」の事情といえるだろう。

根強くあった、求職者の同業・大手志向

さて、もう一方で、「働く側」の事情はどうか。

重厚長大メーカーといえば、やはり終身雇用と年功序列が色濃く漂う企業群であったが、徐々にこの意識が変化しつつある。

メーカーというと、好不況の波にさらされ、生産調整と雇用調整を余儀なくされるイメージがあった。しかし、ここにはいくつかのショックアブソーブ機能がビルトインされていた。社内にいる非正規雇用者、半社内である協力会社群、専業・パーツ系メーカーなどがそれにあたる。本体正社員ではなく、彼らが雇用調整の任を負わされがちなのが、悲しい宿命でもあった。そして、この流れがあるために、働く側では、非正規よりも正規、協力会社よりも専業・パーツメーカー、専業・パーツメーカーよりも完成品メーカーという意識が強くなり、それがまた、完成品大手メーカーでの長期雇用につながりもした。

もう一つ、エンジニアはやはり技術力の高さに魅かれて仕事を選ぶ傾向が強い。そのため、各業界の大手企業へのあこがれが強く、たとえ超大手でも別業界にはあまり転職意欲がわかない、という傾向も強くあった。

つまり、「中小<大手<大手完成品」「他業界<同業界」という意識が厳然と流れていた。昨今なぜそれが変わったのか?

ITや自動車が受け皿となり、業界クロスオーバーが進んだ

一つには、IT産業と自動車産業の急伸長が挙げられるだろう。90年代末から2000年代初頭まで、金融不況のあおりを受け、重厚長大メーカーは業績不振に悩み、業界ヒエラルキーの上位に立つ大手メーカーさえも、リストラを余儀なくされていった。そうした各業界の窮地を救ったのがIT産業だった。主に弱電系や制御ソフトなどの技術者が、大量に業界の垣根を越えることになる。2002年以降は、大手自動車メーカーが今度は受け皿となり、こちらは、IT、弱電、素材、半導体、塗料など幅広い異業界出身者を迎え入れた。こうして、まずは「同業界重視」の価値観が徐々に崩れ出す。

2005年前後になると、好景気の波に乗り、各メーカーとも業績絶好調となったため、この流れは小休止となったが、働く側の意識には確実に「異業界の大手企業」という選択肢が芽生えだしたといえるだろう。

100年に一度の不況で「総倒れ」状態から意識変革が

こうした中で、2008年暮れのリーマンショック後に「100年に一度の不況」がやってきた。ご存じのとおり、今回の不況では、電気・電子・機械メーカーで、悪影響を受けない企業は皆無に等しかったといえるだろう。

当然、大企業で希望退職が募られることになる。この数字自体は、新聞報道で騒がれるほど多くない(新聞報道は非正規社員の契約終了やグループ内出向をも含む)のだが、それでも、先端技術者でもこの募集に応じる人たちが多数現れた。大規模なラインの縮小や事業部自体の廃止を行った企業で、該当分野にいる技術者が、配置転換で社内に残るとすると、違う勤務地への異動は当たり前、弱電から重電など全くの異分野への異動も日常的であり、異動先での仕事も畑違いだから限られてくる。たとえば、購買や試運転などを任されたケースなども聞く。こうした中では、自主的に「希望退職」に応じる技術者が多数現れることになる。

「電気は西へ」「機械は北へ」

さて、彼らはどのような転職をすることになるのか。

まずは、数少ない異業界の超大手の求人に応募することになる。たとえば、半導体企業にいた人が、自動車電装部品大手のチップ関連の求人に多数応募したりする。もちろん、このような競争倍率では、内定はおろか、面接に至ることさえ、狭き門となる。

次に彼らが動くのは、世界戦略が成功しているアジア系の超大手同業メーカーとなる。ただし、世界の最先端を快走する彼らにとっては、専業メーカーの専門特化したエンジニアがスペックにかなっていたりする。そして何よりも、英語力が必須となる。とすると、超大手の汎用エンジニアはやはりなかなか採用までは至らない。

曲折を経て、やはり自分の知識が生かせる専業パーツメーカーやファブレス、もしくは専門商社などにも応募の矛先を向けていくことになる。ただし、こうした企業の採用規模は小さく、圧倒的な買い手市場となりがちだ。このころまでに、彼らは40~50社の不合格通知をもらうことになる。リクルートエージェントに登録して3か月程度たったころだろう。

転職市場の厳しさを、肌身にしみて感じ始める時期だ。

開発・設計希望という条件も揺らぎだし、FAEや生産技術などでも応募する人が増え、どうしても開発・設計にこだわるなら、地方の中堅・中小企業への応募も辞さないという気持ちになっていく。

この流れに従って、電気・電子系であれば、首都圏求職者が東海地区や関西地区で転職することが増え、同様に、機械系では福島・仙台での転職者が増えている。要は、「電気は西へ」「機械は北へ」という導線だ。


昨今、電気・電子・機械技術者の就労意識が変化していることが、ひとしきり理解いただけただろうか。このレポートの通り、その起点は100年不況による業界総倒れにある。ただ、それだけでは、これだけの意識変革はなされなかったとも思っている。

最終的に西や北の専業パーツメーカーへの転職に至るまで、転職活動は半年近くにもなり、応募社数も100に迫ることになる。そうしたマラソン的な転職活動に伴走し、随時、本人自身では気づかない「転職先」をナビゲートする、転職エージェントの存在があって、この意識変革はなされた。私たちエージェントが、少しばかり世の中を変えられたのではないか、と人知れず満足感を抱ける一瞬でもある。

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