「新卒と中途採用」リミックスの方程式(前編)

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雇用の世界的な共通傾向から紐解き、新卒・中途の最適な採用方程式を明らかにします。

リクルートエージェントが昨年10月に創刊したのが人事専門誌『HRmics』です。発行の翌月、誌面では紹介しきれない生の情報をお伝えする「HRmicsレビュー」を定期的に開催しています。今回から3回に分けて、去る9月15日にリクルートエージェント社内で行われた、レビューの概要をお届けします。
今回と次回は、HRmics編集長の海老原嗣生が、雇用の世界的な共通傾向からひも解き、新卒・第二新卒・中途の最適な採用方程式を明らかにします。※2009/10/29の記事です。


日本人は大学を出たら一生、同じ会社に勤め続ける。これに対して、40歳になっても、50歳になっても、いくらでも転職口があり、多くの人がいとも簡単に転職していくのが欧米諸国だ……。

どちらも事実とかけ離れた「本当のようなウソ」、ということは、それぞれの国民でさえよく分かっていない。他国のことになればさらに怪しくなる。日本人は欧米のことを「転職社会」、欧米人は日本のことを「終身雇用の国」と見なしがちだ。

こうしたステレオタイプな見方に対して、海老原は2つの比較データを突きつけ、反証する。

ひとつは平均勤続年数を日本とヨーロッパ各国で比べたもの(図表1、2)、もうひとつは年代別転職率を、同じく日本とヨーロッパ各国とで比較したデータだ(図表3、4)。

図表1:日本の長期雇用者の割合(厚生労働省)/図表2:ヨーロッパ各国の年代別平均勤続年数 (OECD)

図表3:日本の年代別転職率(厚生労働省)/図表4:ヨーロッパ各国の年代別転職率

勤続年数から見ていくと、日本では、15年間以上、同じ企業に勤続している人が40代で60%以上、25年間以上、勤続している人が50代で50%以上もいる。これを見ると、確かに「日本=終身雇用の国」という印象を受けるかもしれないが、早とちりは厳禁である。ヨーロッパでも実情は同じなのだ。イギリスを除けば、40代で勤続15年、50代で勤続20~22年が平均値となっており、日欧で、ほぼ似たような傾向が見て取れる。

世界中で、35歳から40歳を境に転職率が激減する

次に転職率も見てみよう。日本は昔から、20代前半の転職率が年10%前後と非常に高いが、30代半ばで4%、40代前半で3%と下がっていく。そこからは横ばいか、逆に少し上がっている。

一方のヨーロッパでは、相対的に転職率は高いが(グラフの目盛りが日本のそれの2倍以上になっていることに注意!)、30代後半になると10%前後に落ち、年齢が上がるとともに日本と同じく、右肩下がりで値が推移していく。

海老原:「若者はなぜ3年でやめるようになったか、という本がありますが、昔から20代前半の転職率が最も高かった。逆に、35歳から40歳を境に転職率が激減する。35歳以上で転職する人もいますが、新規の転職者は非常に少ない。ジョブホッパーといっていいでしょう。これが昔から日本では一貫している。そして、世界共通の転職傾向なのです」

ではなぜ35歳から40歳という年齢を境に転職率が急減するのか。

転職の壁、すなわち課長の壁

その問いに対して、海老原は端的にこう答える。「35歳から40歳というのは課長になる年齢です。どこの国の企業も、課長になる人は内部昇進が基本で、中途採用はしないからです」

労働経済学者、小池和男氏の労作『アメリカのホワイトカラー』(東洋経済新報社)に、アメリカの代表的企業AT&Tで、30年間延べ4万人に対する調査を実施したところ、課長になった人の90%が内部昇進組で、中途入社組はたった10%だった、という話が紹介されている。「世界有数の転職社会」というイメージがあるアメリカでさえこうなのだ。

海老原:「仕事ができれば課長になれるわけではありません。巧みな営業ができる、経理の知識が豊富、といった専門能力の他に、部下の人となりや特徴を把握している、社内稟議や意思決定の仕組みがよくわかっている、人脈が豊富で社内連携に長けている、といった力も必要なのです。その企業ならではのマネジメントスキル(企業内特殊熟練)と言っていいでしょう。中途採用者に、その力を期待するのは無理というもの。そこで30代前半までの係長クラスを採用し数年後に課長クラスに育てる、という採用が世界各国で行われているのです」

管理職は内部から登用されるケースが圧倒的に多い。その結果、40代で勤続15年、50代で勤続25年という数字につながるわけだが、経理マンを例に、もう少し詳しくキャリアの道筋を見ていこう。

図表5:一般的な経理マンのキャリア人生

日本の多くの大企業では、22歳で入社し、30歳で係長に、そして35歳で課長に昇進するのが一般的だ。

ある人が経理に配属されたとする。最初に割り当てられた仕事はフットワークのよさが求められる債権管理の仕事だったが、上司の期待によく応え、入社3年目で管理会計、5年目で財務会計の仕事を任される。こうやって、経理部内で3つの仕事を経験した後、20代後半になり、営業部門への出向を命じられた。

海老原:「これが日本型総合職の典型的な育成法です。主領域で、幅広い知識や経験を身に付けさせた上で、係長になる直前に、たとえば営業に異動させる。これによって、経理のみに凝り固まらず、顧客企業や営業スタッフの視点を身につけることと、他部門の人間との人脈を作れるという2つのメリットがあるのです」

もう少し、この経理マンのキャリアを追ってみよう。営業から経理に戻って係長に昇進し、再び経理にて税務やIRのリーダーも任されて、経理全般の知識を身につけた後、「お前ならできるはずだから、M&Aをやってみないか」と言われて挑戦。その仕事が評価され、35歳で、めでたく課長に昇進することができた。

こうした社内生え抜きのM&Aスペシャリストの場合、たとえM&Aの仕事がなくなったとしても、その他の経理職務はもちろん、営業やIRの仕事まで担うことができる。中途で採用したM&Aスペシャリストだと、こうはいかない。M&Aの仕事が社内でなくなった場合、行き場がなくなってしまうのだ。その結果、会社を退職せざるを得ず、いくつもの会社を渡り歩くジョブホッパーとなってしまうのである。

「課長の壁」と新卒、中途との関係

ジョブホッパー化せず、「定着するスペシャリスト採用」を行うには2つの策がある、と海老原は指摘する。

一つ目は、同業で同規模、しかも風土が似ている企業から採用することだ。部内における仕事領域の振り替えと部署異動を経験し、同じような能力を持っている可能性が高いからである。足りないのは社内人脈だが、これは2、3年も働けば構築するのは可能だ。ただし、こういう人材が転職市場に出ている確率は非常に低いため、スカウトやヘッドハンティングに頼らざるを得ず、コストが過大になるという欠点がある。

二つ目は、若年時に採用し、社内で複数職務を経験させる、という一般的な採用である。

海老原:「つまり、課長になるまでに専門領域で5つ、他部門で2つ、合計で7つくらいの職務を経験するはずです。その中のいくつかを社内にて経験できるように、年齢に応じて採用スペックを考えていけばいいわけです。たとえば、25歳なら経験が全くなくても、その後に6職務は経験できる。だから未経験者でOK。これが20代後半だとあと3職務程度しか経験できない。ということで、採用領域で2職務程度は経験した人を採用すべき、となるわけです」

以上、人が一つの会社に入って中間管理職まで育っていく仕組みを見てきたが、これが採用の話とどう結びつくのか、いぶかしく思われた人がいるかもしれない。どっこい大いに関係があるのだ。

日本企業の場合、新卒とは、いくつかの仕事を経験しながら能力を磨き、30代半ばにおける「課長の壁」突破を目指して、その企業ならではのマネジメントスキルを身につけていける人材ということになる。

中途採用とは、年齢相応の能力やスペックを持ち、その後、社内にて複数職務を経験することにより、「課長の壁」を突破する力を培える人材ということになる。

次回はいよいよ本論、この定義を踏まえ、新卒、中途をどのくらいの比率で採用すればいいのか、景気動向も踏まえたリミックス方程式を紹介したい。

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