IT業界(1/3)「見えてきた不況の出口」

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IT業界の回復の兆しは、採用市場からも見えてきます。

採用や教育など人事関連の実務に追われて忙しい毎日の皆さまに、この連載を通して広くビジネス全体を知っていただく機会をご提供していきます。今回から3回にわたって、IT業界の動きをレポートします。

典型的な設備投資産業にあたるITの場合、不況の影響がいち早く業績に現れました。ただ、一方で恒常的に人材不足が叫ばれる業界でもあるため、多少、不況風が弱まるとすぐに人材獲得が再開されます。今回はその「回復の始まり」をHRmics編集長/海老原がレポートします。※2009/08/27の記事です。

データ的にボトムを脱したIT業界

「今年の後半からITや電気電子などのハイテク産業で徐々に人材ニーズが盛り上がり出す」というレポートを6月の連載で行った。この読み通り、IT業界では不況底打ちのシグナルが次第に観測できるようになっている。

リクルートエージェントのIT業界からの新規求人のボトムは2月、転職決定人数のボトムは4月となっており、対前年比の転職決定人数ではサービス・流通などこれから不況が本格化する業界と比べて、14ポイントも良い数字。明らかに、不況の最悪期は脱した感がある。

ただし、求人・決定ともに例年の数字に比べればまだまだ非常に低いレベルで推移しており、力強い回復はもう少し先、といったところだろう。

「悩んだ末に採用」が増加

「悩んだ末に採用」が増加具体的に動きが始まった分野・企業の話に移る前に、転職エージェントの転職者の動きをもう少し分析してみたい。

不況下でもIT技術者はやはり貴重な人材であることに変わりはない。昨今では大手企業や外資系企業の求人が減少しているために、今までなかなか応募が無かった中小独立系企業にも、経験豊富なIT技術者が集まるケースが多々見られる。求人難だった企業にとっては、千載一遇のチャンス、といえるだろう。

ところが、採用する側の中小独立企業は、一方で仕事が激減している。「こんな優秀な技術者を採らないのは勿体無い」と思いつつも、それに先立つ原資が心もとない。そこで、こんな会話が企業と転職エージェントのRA(リクルーティングアドバイザー)の間で交わされることになる。

「とってもいい人ですね。昨年までの好景気なら、すぐに内定のハンコを押してます」
「何か問題がございますか」
「本人にはまったくありません。ただ、彼が入って担当すべき仕事が今、現実的に無い状況なのです。逆に、これからしばらく営業活動をしてみて、彼にピッタリの仕事が取れたら採用、というのではいかがでしょうか」

この結果、最終面接を終えた後、数週間、判断を待たされるケースが出てくるのだ。この間に、採用側の企業は必死に営業を行い、案件を募る。

さて、この結果がどうなるか。2~3ヶ月前は待ちに待った結果、「案件が取れなかったので不合格」という割合が非常に多かった。ところが、6月あたりからはちらほら「良い案件が取れたので内定」というケースが見られ出し、6月末の最終決定数がIT業界は当初想定よりも6%も高い数字になった。この傾向は続いており、7月は「待てば海路の日和あり」といった雰囲気が漂い始めてもいる。

不況脱出を示す「悩み→内定」増

転職エージェントは、こうした日々の営業活動結果が積み重なって膨大なデータとなっている。そのデータとミクロな営業活動とを参照しながら読み解くと、業界の採用トレンドが見えてくる。今回の例などは、不況の出口を示唆する良い傍証となるのだ。

何度か指摘したことなのだが、不況の入り口においては、企業の採用プロセスの進行が非常に遅くなる。「ちょっと前なら確実に採った」ケースが、悩みに悩んでなかなか結論が出ないからだ。

同様に、不況の出口においても企業の採用プロセスは遅くなる。こちらは、「ちょっと前なら確実に採用しない」ケースで、悩みに悩んでなかなか結論が出ないからだ。同じ進捗の遅れでもまったく正反対な業界展望が読み取れる。

今回のケースはもろに、この後者に当たる。悩みに悩んだ結果、採用する確率が増えていくと、晴れて不況脱出へ、となる。IT業界の現状は、きれいにこのステップに乗っている。応募~内定までのスピードは、昨年同期に比べて約0.9日の遅れ。最終面接~内定までのスピードは同0.7日の遅れ。膨大なデータが母数になるため、数字自体は微かな変化ではあるが、確実に着実に好転を示すシグナルが現れている。

経験則から言えば、あと半年程度でこの業界の求人はまた活況感を帯びることになるだろう。その後は再び人材獲得は難易度を増す。とすると、競合が少ないここ半年の間に、ハイスペックなITエンジニアを十分採用できるか・否かが、不況後の企業業績を左右するヒントになるといえるのではないだろうか。

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今回は、転職エージェントでの転職者・企業の動きから業界全体の傾向を読み取るレポートでした。
次回(IT業界(2/3))以降は、具体的にどのような分野・企業で採用が活発化しだしたか、をお送りします。

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