コンシューマ業界-なぜか元気。日用品メーカーと内需産業

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業界に閉じていた日本の採用市場が変化しつつあります。

3月11日の東日本大震災からまもなく5ヶ月が過ぎ、政治的混迷をよそに、日経平均株価は既に震災前の水準に戻り、企業の経済活動は着実に復旧しつつあります。その勢いにのって、企業の採用活動もいよいよ勢いを増してきた状況。気づかないうちに活況を呈していた中途採用市場について、3回にわたり、HRmics編集長の海老原嗣生氏がレポートいたします。※2011/08/04の記事です。

公的データとは乖離している求人の実態

コンシューマ業界-なぜか元気。日用品メーカーと内需産業

何度か話したことだが、公的データとビジネスパーソンの求人市場とは、かなり大きな体感差がある。世の中の転職者は年間350万人程度。このうち、6割が非正規社員。正社員求人は、残りの3割強。その3割もさらに、販売・サービス系や製造系などの求人が半数を占めるため、ビジネスパーソンの求人は全体の2割にも満たない小さな市場となる。だから、公的データはビジネスパーソン以外の求人市場を色濃く反映してしまい、なかなかホワイトカラー領域の実態が見えてこない。

不景気風が漂い、未だに求人市場の低迷が叫ばれる中、ビジネスパーソンの採用市場はすでに相当前に反転し、現在は相当なスピードで拡大しつつある。リクルートエージェントの求人数も09年4月が底となり、現在は約57%増加、昨年度の転職決定者数は一昨年よりも約20%アップ、といった感じ。

最近はいよいよその拡大ペースが上がってきた。回復初期は、どうしても「採用難易度が高い(=なかなか採れずにいつも人員不足な)」ハイスペックエンジニア系が求人を引っ張るのだが、景気回復が進むにつれ日用品系へとその流れが伝播する。今回はその様子をよく見ておきたい。

採用職種で事業戦略が見えるCVSチェーン

流通系では、大手コンビニエンスストア(以下「CVS」) がこぞって採用に積極姿勢を示している。ただし、採用の中心となる職種がチェーンによって異なっている。そこに「経営戦略の差」が見て取れるのが興味深い。従来CVSはロードサイドや商店街などに用地確保して出店していたものが、最近はこうした場所で立地条件がよい物件確保が困難になってきたために、大きく方針を変えている。新たなる候補地は、オフィスビルや大学、病院などのビル内。確かに再開発で大規模テナントビルが増えている上に、こうしたビルならば他店舗との競合も少なく、ビル内の就業者多数を独占的に顧客とできるメリットがある。しかも、深夜営業は不要であり、土日も休日にできるため、CVSの要員確保でも優位性がある。そんな事情があるため、各チェーンとも、ビル内店舗の開発に力を入れているのだ。

こうした新戦略に伴い、新たに求人も発生しているのだが、その採用職種は、大きく、SV(スーパーバイザー)と店舗開発の2職種に分かれる。このうち、店舗開発の方はさらに、経験者と未経験者の2つに細分化されるので、都合、3つのタイプの求人となっている。最もビル内出店戦略が進行しているチェーンは、店舗の開発が終わっているので、新規出店に伴うSV確保が求人の目的となる。逆に、ビル内出店が遅れているチェーンは、巻き返しを図るために、不動産用地仕入れ・デベロッピングなどをしていた経験者を店舗開発として大量に採用。その間のそこそこ戦略が進んでいるチェーンは、諸契約業務や資金関連に強い不動産営業経験者や信金・信組マンなど、店舗開発業務自体は未経験の人をターゲットに採用を進めている。こんな感じで、採用している職種を見れば、戦略の進展具合がわかるといえるだろう。

景気シフトと為替が、今の求人活況を支える

ビル内出店ということでCVSがまた店舗網拡大に力を入れたほかにも、流通業にはいくつかトレンドが生まれつつある。一つは、不況慣れした一般消費者が、中食(弁当類・惣菜類)や自炊志向を強めたため、そうした食品を持ち運ぶための「容器・パッケージ類」の特注開発が浸透し、そうしたパッケージメーカーが業容を拡大。たとえば、今では普通になった「ソバ」「麺」などの容器とツユ用の猪口の組み合わせや、カレーに代表されるスープ・シチュー物の弁当など、その容器の進化は目を見張るものがある。こうしたパッケージメーカーが、事業拡大に伴い、求人を増やしてもいる。昔から、好景気は外食、不景気入り口は中食、不景気が長引くと自炊、という形で食品メーカーは販売先をシフトさせてきた、その景気見合いの事業展開が、最近では不況向けで常態化した結果、というところだろうか。

この流れ(自炊シフト)では、外食産業が厳しさを増すはずではあったのだが、こちらには「超円高(=輸入食材の原価ダウン)」という目に見える追い風が吹いているために、行って来いで、総じて業績は最悪期を脱しつつある。そう、為替という要素が内需系産業にまたまた大きな影響を与えているのだ。化粧品や高級食材などの「お高い」製品を扱っている外資系メーカーが「円高(=実質値下げ)」狙いで日本での拡販を展開。そのために商品開発やマーケティングスタッフの拡充に、さらにはチャネル強化のために、営業スタッフ募集へと動いている。一方国内の食品メーカーやアパレルは、日本ブームと新興国の為替高(現地通貨では値下げ)の余勢を駆って、海外に事業を展開。今回は、製造工場の現地移転だけでなく、販売拠点の強化にも力が入っている。そのため、営業スタッフがひっ迫。海外系は英語力が必須な難スペック求人が増えているが、国内メーカーでは自社の英語力のある社員を海外に回す企業も多く、その分、手薄になった国内営業にて求人を行う企業も増えている。こんな「若手営業スタッフの取り合い」が進んだために、競合多数で採用スペックは直近かなり緩くなっている。たとえば、一昔前なら、「チルド食品経験者」などの必須指定があったものが、最近は「食肉営業」、さらには「日用品の量販店卸経験者」といった感じだ。玉突きで、従来「小売店営業経験者」という指定だった割合スペックの広い求人は、「小売でなくとも、法人相手の営業を経験していればOK」と、業界経験不問にする求人も増えている。さらには、一部医薬品などでは、営業経験がなくとも、接客・販売経験がある「流通・サービス業の店長クラス」でかつ若手ならば、採用をする企業までも増えてきた。

飲食・サービス業でも、経験者店長職を中心に採用活動は活発化しつつあるのだが、こちらは応募者確保に悩んでもいる。一足早くこんな「飲食・サービス業経験者」から営業職登用を始めていたフラッシュ・マーケティングやEC系の新興企業では、「販売サービス出身者」は店舗運営で鍛えられているため売り上げ意識が高く、また忍耐力も強く、そのうえ、顧客となる飲食店や販売店の真理にも明るい、という非常に好評価が定着しつつある。

こんな形で、販売サービス職とホワイトカラーの壁が少しずつ壊れ始めたといえるだろう。長年、業界に閉じていた日本の採用慣行を壊し、個人のキャリアが、より自由に設計できることにつながる良いきっかけとなるような、うれしいトレンドではないだろうか。

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