不景気だからといっても、病気や高齢化は待ってくれない。つまり、人間が生活を営む限り安定的な需要が生まれると思われるこの領域にも、不況の波は押し寄せる。そして、その流れが業界全体を変えようともしている。
なぜそんなトレンドが生まれてしまったのか―。この連載は、HRmics編集長の海老原がレポートします。
メディカル業界でも、不況はやっぱりアメリカからやってきた。グローバル化の進展で、多くの日本企業もアメリカ企業の資本傘下に与している。そこで、アメリカ本社の浮き沈みに、日本企業の懐具合も左右されるのだ。そのアメリカ本国企業は、2つの大きな悩みを抱えて立ち往生している。
ひとつ目は金融的な悩み。メディカルといっても、薬剤を一から自社開発する時代は終わった。万に一つ、という確率の低い新薬開発において、シーズの探索や基礎研究の領域は、その部分に専門特化したベンチャー企業の力を借りる方がリーズナブルだ。とすると、大手の仕事は、そうした先端ベンチャーの発掘と投資となる。また一方で、出来上がった薬を販売して利益を生み出すには、世界的な販売網や薬事申請力が必要となる。そこで、大手製薬メーカー同士が、M&Aや提携などにより合従連衡を日々繰り返す。こうして、巨大化した企業は、重複する研究投資を整理し、より合理的な開発体制を作り上げ、勝ち馬となっていく。
ベンチャー投資と世界的合従連衡、いずれの流れも、この中核にあるのは、資本=資金であり、当然金融がそれを仲立ちする。サブプライム危機後の金融崩壊でこの流れが停滞し、業界刷新のダイナミズムが低下していた。それが、日本のメディカル業界にも影響を及ぼしていた。これが一つ目の問題。
もう一つは、アメリカの医療保険の脆弱さ。日本のように国民皆保険をうたう公的制度が無いアメリカでは、個人は医療保険を民間企業に委ねるしかない。不況期には、支払が安い(=保障が悪い)保険に契約が集まりがちになる。こうした保険契約が増えると、大病でもない限り(保障が悪いので、病院に個人が支払う医療費が増えるため)医者に行く人が減る。つまり、アメリカでは不況だと、「医者にも行かない」状況が生まれるのだ。これが二つ目の問題。
国内に目を移すと、2003年と2006年の薬価改定により、薬価基準が大幅に引き下げられ、続いて07年以降はジェネリック優先策が年を追うごとに強化。アメリカ発の不景気要因に加え、国内的な政策要因がプラスされた。両者が重なり、トータルでメディカル業界に流れるお金が少なくなっている。その為、この業界も不況に直面しているのだ。
では、日本のメディカル業界は不況でどう変わったのか。
元来、多数のMRを活用し、医者・病院関係者に密着して濃い営業を行うというのが、日本のメディカル業界の営業スタイルだった。こうした労働集約的で高コストな体質のスリム化が、まずは急激に進んでいる。従来なら若手社員を大量に採用し、MRの資格を自社教育で取得させていたものが、現在ではMRの資格を有する経験者の採用に軸足を移す企業が多くなった。MRは新薬の上市(新発売)に伴い大量に必要となるが、上市が無い時期にはそれほどの人数も必要なくなる。つまり、繁閑差が激しい職務でもある。ここに、固定人員をつぎ込むこと自体が不合理、と考える企業も多くなり、MR派遣(CSO)というサービスも一般化した。
営業以外でも、新薬開発から上市までは各段階でコスト改善は着々と進んでいる。
こうして合理化を進める一方で、売上拡大に寄与する新たなビジネスも生まれ始めた。前述のCSOやCRO(治験専門業者)、薬事申請業務などのアウトソーサー役がその先陣となったが、近年ではWebを利用した新たなビジネスが台頭している。
メディカルも他業界の例に漏れず、IT/Webが商慣習を変えつつあるのだ。
こうした状況が、人の流れをどのように変えていくのか。この続きはこちらで詳しく述べていこう。
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