人為的バブル襲来

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さてバブルとは何か?自然なバブル・人為的なバブルとは?

2月の日銀報告は、「日本経済は踊り場を脱し、再び回復軌道に乗った」という心強いレポートとなりました。この言葉どおり、景気動向指数、鉱工業生産、株価などもここ数ヶ月、力強く上昇を続けています。不況、二番底、と思っている間に、すっかり経済は底離れしているような、この状態。さて真相はいかに?定番となったHRmics 編集長の海老原嗣生氏による景気診断を2回にわたってお送りします。※2011/03/10の記事です。

気づかぬうちに最高値圏にある各国市場

人為的バブル襲来

アメリカのダウ平均は完全にリーマンショック前の水準に回復し、一足早く底を脱したユーロ圏では、史上最高値がもうすぐ見えてくるレベルで株価が推移している。途上国に目を移せば、中国がやや低迷している以外は、史上最高値を更新している市場が目立つ。

われらが日経平均のみ、未だリーマンショック後の最高値より10%程度低い状況で、リーマンショック前の水準には、ほど遠い体たらく。ただし、これは円高の影響が強いだけで、企業収益は回復し、営業レベル水準では、東証上場企業の平均が前年比50%アップという数字。おかげで予想PERは11倍前後にまで下がり、「今の株価は安すぎ」というシグナルまで現れ始めている。

まさに、世は実感なき好況の真っ只中にあるようだ。

こうした各種経済指標と体感値レベルとの景況感ズレのためか、社内外の人から、今の経済状況について、よく聞かれる。そのたびごとに、私はこう答えざるを得ない。

「今は、完全なバブルです。しかも、人為的なバブル。それは私たちなら、過去に1回経験済みのもの。2000年のITバブルとそっくりですよ」。

さて、この人為的バブルとはどんなものなのか、そして、それはいつまで続くのか。2回にわたって送る景気観測レポートの主旨はここにある。

ただ、本筋に入る前に、今号では「バブル」というものについて説明をしておきたい。

自然なバブルと、人為的なバブル

バブルとはなぜ起きるか。

これは4ヶ月前の景気観測レポートの中でも書いたが、「過剰流動性」という言葉に集約される。

みなさんも、「固定資産」「流動資産」という言葉はご存知だろう。流動とは、換金が容易で横流し(即ち流動)できる、という意味と思えば間違いない。

過剰流動性とは、たとえば今もって資産を、「欲しい欲しい」という人が多数いるため、誰にでも高値で売りさばける=容易に横流しできる状態、と考えればよいだろう。市場全体がこんな状態になれば、「今、資産を買えば、その資産はすぐに高値で取引されて利ざやが稼げるから」と、多くの人が投機に熱を上げるようになる。その結果、資産価値が高まり、さらにどんどん資金が市場に流れる。

こうした高値形成のサイクルに乗って、市場全体が加熱状態になったのが、バブルといえるだろう。

バブルが起きれば、利ざやを稼いだ市場参加者たちが、その儲けによって、消費を盛んにするために、多くの場合、実体経済も好調に推移していく。

ただし、高値になり過ぎた市場からは、警戒感が高まり出し、何か撤退の理由となるような事件が起きると、一気にバブルは崩壊へと向かう。これが何度も繰り返したバブル生成から崩壊への流れとなる。

ただ、このバブルにも、経済要因などから半ば自然に過剰流動性が高まった「普通のバブル」と、経済政策によりわざと過剰流動性を上げた「人為的なバブル」の二種類がある。

日本の80年代後半のバブルは、「普通のバブル」の色が濃く、ITバブルは「人為的なバブル」と言えそうだ。08年のリーマンショック前までの活況は、その両方が合わさったものと言えるだろう。

80年代前半、日本の人件費は「格安」だった

ここから先は、「普通のバブル」について、理論的な話ではなく、実際に起きた事象を中心に説明していくことにしたい。

80年代の世界的な経済状況はバブルとは程遠く、この現象は日本だけで起きた。その原因は何か、といえば、前川レポートに端を発する「内需振興策」を上げる人が多い。

ただ、世界全体に目を向けると、もっと簡単な理由を挙げることができるだろう。

それは、「異常なスピードの円高」であり、そして、その円高が市場関係者に「容易に予想できるもの」だったために、世界的な日本投機が起きた。私はそんな風に解釈をしている。

80年代前半の日本とはどんな国だったのか?

日本のGDPは世界2位であり、その2位の座は、すでに20年近く守り続けている、という状態だった。そこで、当時から日本人は「金持ち」であり、人件費は「世界最高レベル」と誤解する人がいるが、これが全くの大間違いなのだ。

日本は確かにGDP2位ではあったが、西ドイツやフランスとは1~2割しか差のないスライスな2位。一方、西ドイツやフランスは、人口では日本の半分。そう、人口半分の国に肩を並べられたような、けっこう危うい2位だったのだ。

人口2倍なのにGDPはほぼ同じということは、一人当たりGDPに換算すると、西ドイツやフランスに比べて日本のそれは半分強でしかない。平たく言えば、日本人の収入=給与水準は欧米諸国の半分強でしかなかったのだ。

一方で、大学進学率は男子に限れば4割に迫り、高校進学率は95%。こんな教育水準ばっちりの優秀な人材がそろう国。そして、GDP2位になって20年近くたち、企業経営にも長けた人材に事欠かない国。経済競争に優位な条件がそろう中で、人件費のみ「世界の半分」だったのだ。

この状態は、現在の中国とは若干異なる。中国は進学率水準もようやくここ数年、急上昇したばかりであり、改革開放から20年も経っていないため、優秀な企業人もまだ足りない。一人当たりGDPで見ても先進諸国の10分の1程度。まだまだ「条件がそろった」国ではない。

代わって、80年代の日本とほぼ同じ成熟度で同じような条件にいる国といえば、韓国がもっとも近いといえるだろう。教育水準、企業の発展度合いは言うことなしで、しかも一人当たりGDP(=給与水準)は日本の5割弱。まさに、80年代の日本そのままだ。

さて、そのころの日本や今の韓国は、どんな状態になるか?先進国水準の人材を、先進国の半額の人件費で雇える国。当然、世界最高の生産効率を誇り、企業の競争力も世界最強!

そこで「Japan as No.1」「韓流最強」ともてはやされることになる。

プラザ合意の真相は、日本の人件費アップ

ただし、80年代前半の日本に対しては、賞賛とは裏腹に、バッシングも強くなった。

その矛先は最終的に、「先進国最安の人件費」という不公平な条件に集約される。これを一気に改善する方法はないか?

もうお分かりだろう。そう、為替レート。為替レートで円の価値を一気に2倍にしてしまえば、日本の人件費は世界レベルに並ぶ。そうすれば、先進諸国の企業も、日本の一人勝ちに泣かなくてすむ。

当時はGMを初めとしたアメリカ自動車ビッグ3が業績停滞に悩み、かのGEは家電を縮小して医療機器に活路を見出そうとしていたような、お寒い状況だった。当然、経済界からの日本バッシングは強烈なものとなっている。

この状況で、1985年にニューヨークのプラザホテルにおいて国際会議が開かれた。それが歴史的に有名な「プラザ合意」となる。ここで、日本は「不公正な為替レートを是正して、実体経済を反映する水準」まで円高を認めることになる。

結果、どうなったか?

80年代前半1ドル220~240円で推移していた為替レートが、80年代末には1ドル120円にまで突き進む。5年弱で円の価値は2倍にもなってしまったのだ。

その結果、先進国最安だった人件費は、先進国水準以上となり、そして、スライスだったGDP2位は、3位以下を突き放すような状況となった。

買えば儲かる、打ち出の日本市場

さて、こんな、「瞬く間に円の価値が急上昇しますよ!」というプラザ合意がなされた直後、市場はどう反応するだろうか?

まず、「円高により競争条件が悪くなる日本企業の業績が悪化する」という読みは当然あるだろう。確かに、85~86年の2年弱、円高不況で日本経済は低迷を見せた。

ただ、もっと確実で簡単な読みもある。

日本に投機すれば、数年で倍以上になって返ってくる、という「為替差益」のヨミ(読み?)だ。

試みに、プラザ合意前(1ドル240円)に100ドルを日本で貯金すれば、それは2万4,000円となる。それを、プラザ合意から4年経た80年代末に解約して、ドルに変えるとどうなるか?ここでは為替レートが1ドル120円となっている。とすると、貯金していた2万4,000円は、200ドルとなって戻ってくることになる。

どうだろう。100ドルが200ドル。たった4年で「倍」になる。それが確約されたような状態。これでは、海外から日本に投機が起きて当たり前だろう。

日本円の資産に投機すれば、必ず儲かる。そこで世界からお金が集まる。

これが80年代後半の過剰流動性=バブルの正体だった。

実際に土地の値段は80年代の10年間で3倍にもなり、日経平均株価は8,000円代から4万円へと、5倍にもなった。

仮に、アメリカ人がドル資産を日経平均で運用したとしてみよう。それは、10年弱で5倍となり、さらに為替差益で2倍になる。都合10倍にもなって返ってくる、というウハウハの状態。


さて、このバブルはいつ終わることになったか?

一般的には、91年の金融引き締めにより、バブルは収束したとよく言われるが、それはあくまで、最終章の話であり、「終わりの始まり」はもっとずっと早くやってきた。日経平均株価はバブル崩壊の2年前、89年にはもうピークアウトして、その後は緩やかな下降に入っている。このピークがバブル崩壊の出発点だったのだろう。

プラザ合意後の円高は、80年代末に1ドル120円近辺で落ち着きを見せた。つまり、これ以上は為替差益を期待できない。そこで、海外からの投資家が徐々に引き上げを始める。それで株価も下降基調に入ったのだ。

ここから先は、「たそがれ期」(日は暮れているのに、まだ明かりがさしている状態)となる。このたそがれ期には、血迷った国内投資家の「ババ抜き」合戦が行われた。

そして、最終的に「ババ」を引いた企業・家計全般が、その損失に苦しみ、悪夢の90年代へと突入していくことになる。

この先には、人為的に作られる「ITバブル」が待っていた。

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