改正派遣法に異議あり

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専門26業務が28業務に増えた?

本欄で何度も取り上げてきたテーマのひとつが派遣法改正問題です。2008年から改正論議が巻き起こり、ようやく形になったのがこの4月のこと。1986年の施行以来、規制緩和の流れで動いてきた派遣法に始めて規制の網がかぶさることになりました。その改正法がこの10月1日から施行されています。まずはその中身を見ていきましょう。レポートはHRmics副編集長の荻野です。 ※2012/10/11の記事です。

改正の主要13ポイント

思えば、改正の発端となった2008年は派遣“受難”の年だった。6月、派遣労働者の若者による痛ましい通り魔事件が秋葉原で起きた。「彼が派遣だから」「雇用が安定していなかったから」、そんな論調がマスコミをにぎわせた。9月にはリーマン・ショックである。世界的に景気が大きく後退し、人手過剰となった企業がリストラに走った。真っ先にターゲットになったのが派遣労働者(といわれている)であり、そこから生まれた言葉が「派遣切り」だった。挙句の果てには、年末から年始にかけ、日比谷公園に「年越し派遣村」が姿を現わしたが、もう随分、昔のことのように思える。

政権交代もはさみ、いくつかの曲折あって成立したのが今回の改正派遣法である。きっかけが前述の通りだから、その根底には、「派遣はよくないから規制すべき」という通奏低音が流れていることはいうまでもない。

さて、具体的にどんな改正が行われたのだろうか。以下、一表にまとめてみた。

表1:派遣法の主な改正ポイント

まず1として、法律名に「派遣労働者の保護」という言葉が入った。正式名は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」である。

2から8については、派遣会社(=派遣元)、派遣先の双方に影響する事項、9については派遣先、10から13に関しては、派遣元に直接、影響する事項となっている。発効時期に関しては、4「直接雇用みなし制度」は、3年後の2015年10月からで、その他は既に発効している。

派遣法はもともと非常に複雑な法律だ。労働関連の法規のなかで、最も理解が難しい部類に入る。その派遣法が、また新たな鎧をまとった感じだ。あわせて刷新された、派遣会社向けの業務取扱要領も前回から比べて40ページあまりも増え、386ページにもなっている。

すべてのポイントに詳しく触れる紙幅はないので、今回は本改正の目玉である2「日雇い派遣の原則禁止」について詳しく見ていきたい。

日雇い派遣禁止の例外事由とは

原則禁止、とあるから、例外事由がある。

まずは「人」に関する例外である。以下、4つに当てはまる人は日雇い派遣に従事してもよい。

  1. 1、60歳以上の高齢者
  2. 2、昼間学生
  3. 3、年間500万円以上の収入のある労働者。それだけの収入があり、副業として働く人
  4. 4、主たる生計者ではない人。具体的には、配偶者の収入が別にあり、世帯収入の合計が500万円以上の人

かなり突っ込みどころのある「例外事項」だろう。

高齢者はいいとしても、なぜ昼間学生のみに日雇い派遣を認めるのかがわからない。たとえば、お金に困りながらも定時制に通っている学生が、学資稼ぎのため、夏休みに日雇い派遣のバイトをしてはいけないのだろうか。しかも、通常の日雇い就労に関しては、何の規制も存在しないのに。

3・4の収入制限に関しても、疑問を感じる。500万円の収入がある人が日雇い派遣をわざわざ選ぶだろうか。お金が少ないから、日雇いで働く。それが現実というものだろう。業界関係者からは、「結局、日雇い派遣はお金と暇のあるセレブ主婦しか無理」という声があがっているという。

例外事項がもうひとつある。業務に関して、である。

派遣法でいう専門26業務のうち、図表2の業務に関しては、日雇い派遣が可能になっている。一方、不可とされているのが図表3の業務である。急いで付け加えると、自由化業務(専門26業務および建設業など、そもそも派遣が禁止されている業務以外の業務)に関してはすべて不可である。

表2:専門26業務のうち、日雇い派遣が可能な業務と、表3:同、日雇い派遣が不可能な業務

「適正な雇用管理」の意味

この区分けにはどんな意味があるのだろうか。

改正法の第三十五条の三にこうある。

〈労働者派遣により日雇労働者を従事させても当該日雇労働者の適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務として政令で定める業務について労働者派遣をする場合(中略)を除き、その雇用する日雇労働者について労働者派遣を行つてはならない〉

ここでいう「適正な雇用管理」云々の意味がよくわからなかったので、厚生労働省の担当者に電話で問い合わせたところ、結局、勤務時間に長短があったり、勤務場所が日によって変わったり、休憩時間も不規則だったりといった「9時―5時勤務のオフィスワーカー」のような働き方ができない業務に関しては「不可」としたのだという。

でも、同じ営業でも、セールスエンジニアは日雇い可で、テレマーケティングは不可である理由がよく分からない。電話営業だからオフィスに行かずとも自宅でもできる、つまり雇用管理が難しいという判断なのか。

さて、わからない点がまだある。専門26業務の数のことである。表2と表3をもう一度、ご覧いただきたい。数を合計すると28ある!これまた、担当者に聞いてみたところ、「26業務で変わっていない」との答え。それなのになぜ2業務が実質、増えたかというと、まず「受付・案内、駐車場管理」(旧派遣令第4条における16号、以下、同)とあったのを、「受付・案内」と「駐車場管理」に分けた(前者は日雇い派遣可、後者は不可)。さらに、「建築物清掃」(14号、日雇い派遣不可)に含まれるとされてきた「水道、廃棄物等設備運転」(日雇い派遣不可)を新しく切り分けた。

一方は業務を2つに分離、もう一方は暗示的に含まれていたものを明示化しただけだから、「専門26業務は変わっていない」という立場なのだという。現に28あるのだから、28業務としたほうが分かりやすいと思うのだが、お役所はそうは考えないらしい。

業務ではなく期間で規制しては

この2つの表を見て、改めて考えてしまった。仕事の質があまりにもばらばらなのである。たとえば、私にとって馴染みの深い「制作・編集」という仕事は、企画の立案から取材(執筆)者の選定、実際の取材、そして執筆・構成、場合によっては写真撮影、文章校正、原価計算、広告取りまで、実に幅広い仕事だ。幅広いからこそ、裁量権が生まれる。そして、裁量権のある仕事に就くと、人は成長する。

対照的なのは、たとえばファイリング。どこの職場にもファイリングして管理すべき膨大な資料があるのは当然だから、そういう仕事が必要なのはよく分かるが、ほんのピンポイントの仕事ではないか。決して差別しているわけではないが、この仕事を通じて成長していくというイメージがどうしても湧かないのだ。

成長しなければ待遇は上がらないし、雇用も安定しない。

雇用が不安定だから、登録型の派遣を禁止しようという議論も今回の改正時にはあったが、問題は登録型云々ではなく、あまりに細かい業務内容規制にあるのではないか。

本欄で何度も繰り返して書いていることだが、こんなにも細かく、派遣可能業務を規制している国は日本以外ない。他の国はもっと緩やかで、業務ではなく派遣活用期間で縛りをかけている。

業界団体である日本人材派遣協会が「業務内容による受け入れ期間や対応の違いを撤廃し、一律に上限3年とする」案を掲げているが、参考に値するのではないか。

ちょうど、労働契約法の改正案も成立し、「有期雇用の上限は5年」というルールが確立したところだ。

期間の定めのない雇用が正社員、上限5年が有期社員、上限3年が派遣社員。三者の間の均衡待遇を確保しつつ、いずれもキャリア設計が十分に行えるようにして、行き来を柔軟にする。そのためにも、正社員に関しては、勤務地限定、職種限定といった多様な形態をつくる。派遣に関しては業務内容規制を止め、緊急的かつ需要が変動する3年以内の仕事に限る、とすれば、繁文縟礼の見本のような法律をつくらなくて済むというものだ。


今回は最後に、「有期雇用5年上限ルール」と派遣就業に関連し、ちょっとした問題を(答えは下部に)。

その1:同一派遣元にて登録型派遣として5年間、働いた人がいます。ただし、派遣先はその間、いくつも変わりました。この人はどの時点で有期雇用が終わり、どこの企業に正社員(=期間の定めのない社員)化が義務づけられるのでしょうか。

その2:派遣元も派遣先もいくつか変わったものの、合計で5年間、登録型派遣で働いた人の場合、その1と同じように、どの時点で有期雇用が終わり、どの企業が正社員化を義務づけられるのでしょうか。

その3:派遣元はいくつか変わったものの、派遣先は変わらずに、5年間、登録型派遣で働いた場合、同じくどの企業が正社員化を義務づけられるのでしょうか。

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