新有期雇用法制を考える(前編)

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有期雇用法制、改正の経緯とポイントとは

労働契約法の一部を改正し、有期労働の契約期間に制限を加える法案がつい先日、成立しました。施行は来春からですが、欧州各国などに比べ、「甘い」とされてきた有期雇用に始めて規制が入ることになり、人事にも大きな影響を及ぼすこと必至です。今回と次回の2回にわたり、改正内容とその経緯、留意すべきポイントなどをHRmics副編集長の荻野が解説します。 ※2012/08/09の記事です。

入口規制も出口規制も弱い現行法制

最初に、有期雇用に関する現行の法制を、①入口(契約締結時・更新時)、②契約期間中、③出口(契約終了時)に分けて、振り返っておこう。

まず①だが、1回の契約期間の上限は、原則3年である。ただし、高齢者ならびに専門的知識を有する労働者には5年契約も認められている(労働基準法第14条)。一方で、期間が短か過ぎてもいけない。必要以上に短い期間の契約を反復更新することのないよう、企業は配慮しなければならない、とされる(労働契約法第17条2項)。

更新に関しては、1回以上更新し、1年を超えて勤務している労働者の場合、契約の実態や本人の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならないという規定がある(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」第4条)。いわゆる大臣告示だが、これには通達ほどの法的拘束力はない。「そうしたほうがより望ましい」という行政からのメッセージといえる。

続いて②である。契約期間中の解雇は、やむを得ない事由がなければ認められない(労働契約法第17条1項)。同じような内容が民法第628条にもある。すなわち、当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは契約解除をすることができる。

期間の定めのない雇用、つまり、正社員との均衡待遇を定めた条項もある。「労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする」という労働契約法第3条2項がそれだ。

最後は③である。具体的には雇止め(契約更新の拒否)だが、これについては、3回以上契約が更新されているか、1年を超えて雇用されている人材に対して雇止めを行う場合、30日前までに予告を行わなければならない、という規定が先の大臣告示第2条にある。

安易な雇止めには、正社員と同じ、解雇権濫用法理が適用される。つまり、有期雇用であっても、その実態が、期間の定めのない雇用契約と実質的に変わらなくなっている場合や、本人が雇用は継続されるだろう、という合理的期待をもっていることが認識された場合、雇止めは効力を及ぼさず、有期契約が更新されたものと見なされる。これは判例の積み重ねによってできた判例法理だ。

以上をまとめると、日本の現行法制は、なぜ期間の定めのない(正社員)雇用ではなく有期雇用なのか、という「入口」部分はもちろん、どのくらいの期間、どのくらいの回数まで、有期雇用の活用と更新が認められるか、という「出口」部分の規制もない。雇止めの部分を除けば、企業はほぼフリー・ハンドで有期雇用を活用できたといえるだろう。

「まったく規制なし」のアメリカ、「強い規制あり」のフランス

これに対して諸外国はどうなっているのだろうか。以下は、入口、出口規制をはじめ、各国の有期雇用法制を大まかに比較した表である。

図表1:有期雇用法制の各国比較

アメリカは日本以上にフリー・ハンドだが、その他の国は日本より規制が厳しい。特にフランスだ。この国の労働法には、「期間の定めのない労働契約が労働関係の基本である」と明記されており、有期雇用はあくまで例外とされる。実際、最長18ヶ月しか有期契約を結ぶことができず、しかも契約終了時に「期間の定めのない雇用」のオファーを当該労働者に提供できない場合、「契約終了手当」を支払わなければならない。その額は契約期間中に支払われた総報酬の10%というから結構な額である。仮に10ヶ月働いてもらった場合、一種の退職金のように、もう1ヶ月分、余計に支払わなければならないのだ。

有期雇用のハードルがそんなに高ければ、多くの企業が活用を躊躇してしまうだろう。フランスの失業率はヨーロッパの中でも高いが、こうした規制の強さが大きく影響しているのは明らかである。

労働者側の主張が優位に

さて、日本のこの現状に対して、2008年秋のリーマン・ショックをきっかけに、法制度の整備を促す声が高まったのはご存知の通りである。有期雇用で働く労働者の雇止めや契約期間内での解雇が頻発したのだ。2009年2月に識者を集めた有期労働契約研究会が立ち上がり、9月に報告書を公表。翌2010年10月、今度は具体的な法改正に向けて労働政策審議会が組織された。

審議会は労働者代表委員と使用者代表委員、それに公益代表委員の三者と事務局で構成される。のべ10数回、約1年2か月かけて審議された内容と、法制化にあたり、最終的にどちらの意見が取り入れられたか、を以下にまとめてみた。

図表2:新有期雇用法制に対する労使の主張

労働者側はフランス並みの強い規制を求めたのに対して、使用者側はほぼ現状のままを維持しようとしたが、蓋をあけてみると、5つの論点のうち、3つ(③出口規制、④雇止め法理、⑤均等・均衡処遇)で、労働者側の主張が採り入れられ、使用者(企業)側にとっては厳しい内容となった。

その改正ポイントは次の3つである。


(1)有期労働契約の、期間の定めのない労働契約への転換

有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換させる仕組みを導入する。ただし、6ヶ月以上(契約期間が1年以上の場合。1年に満たない場合はその半分)のクーリング期間をおいた場合はその限りではない。また、その際の労働契約の内容は有期だった場合と同一とする。

(2)契約の更新など

雇止め法理の法制化。具体的には、契約の反復更新により、無期労働契約と同じ状態で働いている場合、または期間満了後の雇用継続について本人の合理的期待が認められる場合、雇止めは無効となり、有期契約が更新されたものとみなす。

(3)期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

有期契約であることを理由に、無期契約の労働者と比べて、労働条件が不合理であってはならない


なお、(3)「不合理な処遇」の例として、審議会では、通勤手当、退職金、基本給など職務と密接に関連するもの、教育訓練の機会などが例示されていた。有期だからといって、通勤手当や退職金、基本給、教育訓練の機会を減らしてはならないということである。

次回は改正の目玉ともいうべき(1)について詳しく見ていきたい。

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