契約社員の「契約」は厳格化するか(前編)

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現行の有期契約規制は期間の枠組みだけが対象だが・・・

派遣法改正案が国会で審議中ですが、法案が可決すると、派遣という就業形態が大幅な縮小を余儀なくされます。企業は人材戦略の見直しを迫られ、派遣社員に代わって、直接雇用の正社員や契約社員、あるいは請負の活用を考えざるを得なくなります。

派遣社員の代替という意味では、最も需要が大きいのが契約社員です。有期の雇用契約に関する強い規制が日本には存在しないからです…というのは実は過去の話で、現在、有期雇用法制の厳格化が政府内で検討されています。そうした動きを含め、HRmics副編集長の荻野が、2回にわたり、有期雇用法制について解説します。※2010/05/20の記事です。

今回は現行の有期雇用法制の枠組みについてです。

なぜ10年契約社員が存在しないのか

日本では、どんな仕事だったら人を有期雇用で働かせていいのか、逆にどんな仕事ならいけないか、有期雇用の活用可能期間は何年までか、といった法の規制は存在しない。どんな内容の雇用契約を結ぶかは、企業側と働く側、当事者同士の自由に委ねられている。

これは、季節労働など臨時に発生する仕事、育児や介護、怪我などの一時休業者の代替、新人の試用といった特別な事由がなければ有期の雇用契約が結ぶことができず、さらに契約の更新回数や勤続年数にも制限が設けられているヨーロッパ諸国(一番厳しいのはフランス)と対照的である。

ただ、雇用の枠組みに関しては、いくつかの法規制が日本にも存在する。

更新回数に関しての制限こそないが、一度の契約期間には上限が定められている。労働基準法(第14条)により、原則は3年までとされ、高度な専門知識や技術を要する人や高齢者に限っては5年までの契約が許されている。また、イベントや新製品開発といった期間を区切った業務の場合は、その年限を基準にすることもできる。

これに対して、有期雇用はそもそも不安定なものだから、期間に制限など設けず、10年でも15年でも長期契約を結べるようにしたほうが労働者の保護につながるのに、という意見もあるだろうが、法の意図は、雇用の安定より、長期の契約が労働者を会社に縛り付けるのを回避することなのだ。

細切れ契約も認められない

さらにこんな規定もある。上記の3年を超える契約を結んだ専門人材や高齢者、期間限定の事業に従事する有期契約労働者を除き、契約期間が2年や3年であっても、働いてから1年が経過すれば、契約期間には拘束されず、労働者はいつでも退職することが可能となっている(労働基準法附則137条より)。これもまた、会社側が労働者を必要以上に拘束しないことを目的とした規定だ。

対する会社側に対する縛りはきつく、やむを得ない場合を除き、契約期間が満了する前に有期労働者を解雇することはできない(労働契約法第17条より)。

逆に、契約期間の下限はなく、1日でも可能だが、意図的に短くするのは認められない。同じく労働契約法第17条に、「必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない」という規定があるからだ。本当は1年以上持続して発生する仕事なのに、いつでも雇用を切れるように、たとえば1ヶ月単位の契約を結び、1年のうちに11回も契約更新をするのは認められない。そんなに目まぐるしい契約更新のもとで働かせられると、来月は仕事があるのか、疑心暗鬼を生じ安心して働けない。そういう弊害を防ごう、という意図があるのだろう。

「契約満了=さよなら」とはならない「雇止め問題」

さて、有期雇用は定められた期間が経過すれば当然、終了するものだが、実は厄介な問題が発生するケースがある。契約が何度も更新され、実質的に同じ職場の正社員と同じような仕事を任せられていたり、労働者側も契約といっても形式的なもので、更新されるのが当たり前という大きな期待を抱いていたりする場合だ。

有期雇用において、雇用契約が満了し、「新たな契約は結ばない」と会社側が労働者に告げることを「雇止め」という。この雇止めが上記のように、契約が反復更新され、実質上、期間の定めがない雇用契約と大差がない状態になっていたり、契約更新が当たり前となり、よもや拒否されるわけがない、と労働者が考えていたりした場合、無効になることがある。

その場合、雇止め=解雇と見なされ、その効力が争われる。つまり、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)という解雇権濫用法理が適用され、その観点から、改めて雇止めの是非が問われることになる。

この問題に関する著名な判例を2つあげておく。

ひとつは東芝柳町工場事件と呼ばれるもので、期間2ヶ月の労働契約が5回ないし23回にわたって更新された基幹臨時工7名に対する雇止めが認められるかが争われた。最高裁は、契約の反復更新が自動的に行われている状態に着目、「期間の定めのない契約と実質的に変わらない」として、雇止めを無効としている。

もうひとつが日立メディコ事件。期間2ヶ月の契約を5回更新した臨時工に対し、不況を理由に雇止めをした会社側の対応の是非が争われた。本件では、仕事内容が臨時的なものではなく、ある程度の雇用継続が期待される場合は、解雇法理が類推して適用される(=雇止めができない)という原則が示された。ただ、裁判では「不況時の臨時工の雇止めはやむなし」とその正当性が認められ、従業員としての地位の確認を求めた臨時工が敗訴している。

雇止めの可否を決める6つの判断要素

どんな状況での雇止めなら認められて、どんな場合が認められないのか。2003年に厚生労働省が発表した「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」という告示が参考になる(ちなみに、告示には法的な拘束力はなく、違反に対する制裁も存在しない。それを守るかどうかは企業側の自由意思に委ねられているが、最低限これだけはクリアしておけば、雇止めの是非など、有期雇用を巡る紛争は起こりにくい、という趣旨のものだ)。

同告示では、

  • ・企業側は有期契約の締結に際して、更新の有無と、更新がある場合は、更新する場合と更新しない場合の判断の基準を明示すべきこと
  • ・更新しない場合には契約期間満了日の最低30日前までに予告すべきこと
  • ・更新せず雇止めとなる場合、労働者にその理由についての証明書を求められたら、すぐに交付すること
  • ・1年を超えて勤務している有期労働者が更新する場合は本人の希望を聞きながら、契約期間をできるだけ長くすること

などが定められている。

更新するかしないかを決める判断の基準としては、(1)契約満了時の仕事量、(2)労働者の勤務成績や態度、(3)労働者の能力、(4)自社の経営状況、(5)従事している業務の進捗状況などが例として挙げられている。

告示をまとめた厚生労働省のリーフレットによれば、雇止めに関する判例を分析すると、(1)業務の客観的内容、(2)契約上の地位の性格、(3)当事者の主観的態様、(4)更新の手続き・実態、(5)他の労働者の更新状況、(6)その他、という6つの判断要素を総合的に判断し、裁判所がその是非を決めていることがわかった、という。それを元に簡単な図表を作成したので参考にしていただきたい(図表)。

図表/雇止めの可否に関する判断要素と判断(厚労省リーフレットをもとに作成)

次回(契約社員の「契約」は厳格化するか(後編))はこうした法制度が大きく変わる可能性について解説したい。

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