建設・不動産業界-リーマン・ショック前に劣らぬ求人超活況期

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建設・不動産業界が若手営業スタッフの採用を引っ張る展開となりそうです。

今回お送りする建設・不動産業界も、前回の金融業界同様、昨年までとは求人の状況が一変。もう春を過ぎて真夏といった状態です。レポートは、HRmics編集長の海老原です。※2012/03/08の記事です。

人手不足 四重の理由

建設・不動産業界-リーマン・ショック前に劣らぬ求人超活況期

建設・不動産業界が大変な状況になっている。求人量の急増でエージェント側が嬉しい悲鳴状態なのだ。

それも、ハウスメーカー大手、仲介・売買の大手冠系など、名の知れた大企業がこぞって求人戦線を強化し始めている。しかも、求人条件も緩和され、営業・顧客折衝経験が豊富な候補者なら、異業種しか経験のない35歳でもOKという状況。

ここまでの活況ぶりは、体感値的には「2007年のピーク時にいよいよ近づいた」と言っても過言ではないような状態なのだ。

さて、なぜこんなに中途採用花盛りとなったのか。

リーマン・ショック後の業績急降下により、各企業とも、中途・新卒いずれも採用を止めていたことが大きい。この間、建設・不動産業界の求人は、たとえば橋梁専門の補修企業やビルメンテナンス会社、あるいは住宅メーカーの場合も、北関東など、周辺地域での募集と、どちらかというとメインストリームではないところで多かったといえるだろう。

このように、求人活動を控えていた業界の大手企業だが、一方で退職は常に一定数、起きてくる。それも、一昔前ならば、ハードな営業に疲弊した、という後ろ向きの理由が多かったが、昨今は、建設・不動産業界出身者の優秀さを見込んで、他業界が採用攻勢をかけるという前向き転職が増えているのだ。

まず、建設・不動産業界出身者は、対人折衝場面に強い。高額商品だけに、「売れ、売れ」で業績が伸長できるわけなどなく、顧客とうまく会話して真摯に対応し、それでいて、一方的な譲歩はしない、という巧みな「折衝術」を身につけている。

しかも、高額な商品を動かすわけだから、金額が大きい。当然、そこにはローンなども絡んでくるから、やっかいな契約業務や金融知識にも長けている。さらに、売りっぱなしの既製品とは異なり、施主・建築職人と一体になって納品まで対応していく一種のプロジェクトリーダー役も兼ねている。つまり、多人数のチームを率いる力さえついているのだ。

若手でありながら、これだけの能力を身につけているビジネスマンは稀少であり、それだけ、銀行や人材ビジネス関連の大手企業から引く手あまたとなる。

一方、業界内でも転職は盛んであり、未経験で中小・新興住宅メーカーに入った若手社員が、数年の経験を経たのちに、その実力をもとに、同業大手に転職するケースも珍しくない。

こんな感じで、業界内外に、転職していく人が生まれる結果、通常の場合は「自然減」が起きやすい業界と言えるだろう。だからこそ、リーマン・ショック後、採用を2年止めていた分、欠員補充圧力が高まっていた。

そこに、東日本大震災の復興需要が重なったのだ。公共事業から発生するニーズは、仮設住宅の施工や、仮設から一般集合住宅への住み替え、もしくは、自宅の補修・改修・建て替えなどの場面で起きている。

たとえば、地場の大手工務店で大量の人員需要が生まれたため、東京に採用本部を設けて首都圏の若手・学生を対象に積極的な採用活動を行っている企業が数社ある。また、首都圏の大手ハウスメーカーでは、東京のベテラン営業スタッフを東北に送った結果、手薄になった分を中途で採用する、という玉突き的な求人も生まれている。

この震災需要は、営業スタッフや施工管理などの直接人員以外の思わぬ派生需要も生んだ。たとえば、原子力発電の停止により、昨夏の節電対策は厳しいものとなったが、その教訓から、メーカーや銀行などの大規模事業主が節電対策やコストダウンなどに力を入れ始め、同時にセキュリティ強化やスマートタウン、スマートグリッドなど「明日への投資」を強化した結果として、建設系のエンジニアを欲し出したのだ。

とりわけ顕著なのが電気設備工事士の有資格者ニーズである。彼らには発注側の責任者となって、建設業者をうまくコントロールする職務を期待されている。たとえば、銀行、官公庁、学校、インフラ系企業、ロジスティック系企業、メーカーなどが、そうした思惑で電気設備工事士の採用に力をいれている。

ゼネコンへの発注量が大きい官公庁は、一般競争入札の適正化を進める上で、積算関連に長けた技術師を積極的に採用しようとしている。多くの官公庁が、建築コンサルタント関連の職種で年齢の募集上限を35歳にあげた。これなら、30歳過ぎで資格を取った即戦力の建設コンサルタントも十分、公務員試験が受けられる。そうやって、建設業界から官公庁へ転出するケースも増えているのだ。

1社でのキャリア形成から、異業種をまたにかけた能力形成に

まとめると、建設・不動産系の人材は、営業系でも技術系でも、他業界からの引きが強いため、業界内では常時、自然減員に悩んでいる。そこに、不況による新規採用の停止という事情が重なり、さらに震災復興需要とそれに伴う派生(節電)需要までが加算された。そうやって三重四重に人手不足が重なる状態で、まさに「リーマン・ショック前」をしのぐ求人難が形成されたといえるだろう。


さて、ここで少し、他業界から引く手あまたという彼らの、異業種への転出後について考えてみよう。

彼らが30歳近くになって転職する理由としてあげられるのは、初任給の高さと企業のネームバリューだという。ただし、営業も、エンジニアも、建設・不動産業の仕事自体は嫌いではないケースが多い。そこが味噌となる。

他業界に行っても、もともとその業界のメインストリームの人材ではないから、彼らが昇進していくためのポストはそれほどないだろう。また即戦力者が重視されるので、自分を頼りにしてくれるような若い後輩もそれほど入ってはこない。しかも、メインストリームの業務には明るくないから、異動で新たなチャンスをつかむ可能性も少ない。つまり、新しい会社で行きづまるケースをまま見かけるのだ。

そうした場合、彼らはどうするか?

実は再度、建設・不動産業界に戻るケースがこれまた多い。

もともと業界内の仕事が嫌いなわけではなかったから、それはある面、当たり前だろう。そして、もとの企業は彼らを温かく迎える。なぜなら、たとえば銀行でローン設定などの業務、メーカーや官公庁で施主としての立場を理解しているということは、もとの業界に戻っても有利に働く知識・経験を多々手に入れていることを意味するからだ。

そんな感じで、知識と経験と技術をもとに、市場を利用して、適宜、転職を繰り返す。一社でキャリアを形成するというよりも、複数の会社をまたにかけ、「合わせ技」で市場価値を磨いていく、という仕事人生なのだろう。建設・不動産業界は健全に人材市場が機能しているのは確かだが、意地悪い見方をすれば、アメリカ型のプラグマティックな“社会”になりかかっているというべきかもしれない。

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