女性労働と諸施策-雇均法施行25年目の日本

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女性の就業意識を促進させるために新たな法制度が必要な時期に来ているのかもしれません。

男女雇用機会均等法が施行され、今年で25年となりました。雇用者に占める女性比率は順調に増加しているものの、現在40代となった均等法第一世代の女性たちが男性と伍してバリバリ働いているという話はあまり聞きません。国際比較データを見ても、女性の管理職比率はまだ低く、女性の活躍度を示す国連のランク付けでも日本は下の方をうろうろしています。企業のマネジメントの問題はもちろんあるでしょうが、女性の就業意識を促進させるために新たな法制度が必要な時期に来ているのかもしれません。今回から2回にわたり、女性労働を巡る法律や諸制度の状況を見ていきます。今回は日本、そして次回は女性活用先進国の状況をレポートします。書き手はHRmicsの荻野副編集長です。※2011/11/10の記事です。

最初は不完全だった雇均法

男女雇用機会均等法はこれまでに二度改正されている。そのプロセスから振り返っておきたい。

それまでの日本では、労働法上の女性差別禁止規定は労働基準法4条にある男女同一賃金の原則のみだった。そこに、人の募集・採用から、配置、昇進、教育訓練、そして解雇、定年、退職まで、すべてのステージにおける男女差別を禁じる同法が1985年に成立、翌年試行されたのは、ある意味、画期的なことだった。

ただ同法は完全なものではなった。定年・解雇、教育訓練の一部、福利厚生に関しては男女差別が完全に禁止されたが、募集・採用ならびに配置・昇進に関しては、法的拘束力のない努力義務とされていた。女性自身の就業意識が低いこと、そこまでの義務づけは日本の雇用慣行になじみにくいこと、女性の勤続年数が男性と比べ短いことが歴然としており、戦力化という意味で男性優遇は止むを得ないといった理由だった。いわゆる統計的差別理論である。今から考えるとひどい話である。

女性差別禁止法から性差別禁止法へ

この点が改正されたのは1997年のことである。すなわち、募集・採用、配置・昇進、そして教育訓練においても差別的扱いが禁じられた(施行は1999年)。

さらに2006年、二度目の修正が加えられた(施行は2007年)。ポイントは三つある。

一つは女性に対する差別を禁じる条項しかなかったところへ、男性差別も対象となったこと。つまり、性別を理由とするすべての差別が禁じられることになったのだ。

二つは性別を理由とする直接差別に加え、性別以外の規定が実質的な性差別につながる間接差別が禁じられた。均等法施行規則によると。①募集および採用において身長や体重、体力を要件とすること、②総合職の募集・採用において転居を伴う転勤要件を掲げること、③転勤経験を昇進要件にすること、という3つを定めている。ただ、これらに該当する場合でも、企業が合理的な理由をあげることができれば間接差別に当たらない。例えば、防犯にあたる警備員を募集する場合、やはり身体の屈強さは外せないから、身長や体重が要件となるのは合理的と見なされる。

三つは、結婚、妊娠、出産を理由とする不利益取り扱いの禁止をはじめて明文化したことである。

パートタイマーとフルタイマーの格差是正

女性労働を巡る公的施策はこれで終わりではない。どこの国でも、家事や育児の主担当者は男性ではなく女性となるから、必然的に、勤務時間の短いパートタイマーの仕事に就く女性が多くなる。ところが、フルタイマーとほぼ同じ仕事をしているのに、極端な賃金差があったり、必要な教育訓練が施されなかったりした場合、それこそ、女性に対する差別につながってしまう。

そこで、1993年に制定・施行されたパートタイム労働法が生きてくる。当初は、そうした格差を生じさせないための事業主の努力義務を定めたに過ぎない内容だったが、2007年に全面改正され、パートタイマーであることを理由に、フルタイマー(正社員)との間で差別的な取り扱いをしてはいけないことが明文化された(施行は2008年)。

税や社会保障の仕組みも無縁ではない

さらには税や社会保障のことも視野に入れなければならない。税金や年金が夫婦単位で計算されるのか、それとも個人単位か、で女性が働く意欲は大いに変わる。日本の場合、課税は個人単位だが、妻の年間所得が103万円を超えると、夫が受けられる配偶者控除が減額され、結果として増税になる。さらに130万円を超すと夫の健康保険の被扶養者の適用除外となり、妻は独自で国民健康保険に加入し、保険料を納めなければならない。さらに、厚生年金の被扶養配偶者(いわゆる第三号被保険者)の適用除外にもなるため、国民年金に自ら加入し、保険料を納めなければならなくなる。

つまり妻はなるべく働かず、家にいるべきだ、という思想が税や社会保障の分野で存在しているのだ。

女性の育児負担をどう軽減するか

なおも重要なことがある。女性の就労にとって大きな障害となる出産や育児負担の軽減である。日本では1991年、育児休業法が制定され、働く人の権利として子どもが1歳になるまでの育児休暇の取得が認められた(施行は1992年)。あわせて企業は3歳未満の子どもをもつ社員を対象に、勤務時間を短縮するなどの措置を講じなければならなくなった(同法は1995年に育児介護休業法に改正された)。

2008年に同法が改正され、夫婦の両方が育児休暇を取得した場合、1歳2ヶ月まで延長できる制度が創設された。妻と夫の片方が取ると最長1年までしか休めないが、2人で取れば、2ヶ月得するという内容である。その名も「パパママ育休プラス」という。

男性の育休取得者を増やさんがための苦肉の策だが、スウェーデンやノルフェー、フランスには父親だけが取得できるパパ・クォータと呼ばれる有給の育児休暇度がある(詳しくは次回)。

その他、保育所の整備、児童手当・家族手当や母子世帯に対する児童扶養手当の支給なども、女性労働を促進させるために政府や自治体が担うべき施策である。

厚生労働省の調査によると、今年4月1日時点で、保育園の待機児童の数が全国で2万6000人に上るという。最も数が多いのが名古屋市で1275人。それに、横浜市971人、札幌市865人と続く。子どもを預けることができない状態が続くと母親は仕事に復帰できない。働く意欲のある女性が、そうやって意欲を殺がれていくのは企業だけでなく国にとっても大きな損失である。

男社会の企業に上からの風穴を

さて、就業面で男性と女性の法的平等が達成され、ハンデとなる出産や育児の重圧もかなり軽減できた。ところが、一部の国々では、それでめでたし、めでたし、とはならない。女性の進出をもっと進めよう、というのである。

企業社会は強固な男社会、多少強引でも、風穴をもっとあけるにはこれしかないと、最初にノルウェー、続いてフランスなどで導入されているのが、「企業の取締役の一定割合を女性にしなければならない」という法律の制定である。取締役会のクォータ(割り当て)制という。世界広しといえども、ここまでやっている国はごく限られているが、EU諸国を中心に導入を検討する国が増えている(他にスペイン、ポルトガル、オランダ、アイスランド、イスラエルなどが導入済み)。

今年のノーベル平和賞の意味

ただ世界は広い。このノルウェーのように、男女平等が究極まで進む国がある一方、たとえば、サウジアラビアの女性はいまだに政治に参加する権利すら与えられていない。車の運転も禁止され、取るに足らない法的問題についてまで、男性の親戚が保護者としてつくことが義務づけられている。最近、同国国王は地方選挙における女性の投票権を認める発言をしたが、いつものことながら、その「次」がいつなのか、よくわからないという。

そのノルウェーが主宰しているのがノーベル平和賞だが、今年の受賞者は女性3人だった。リベリアのエレン・サーリーフ大統領、同じくリベリアの平和活動家、リーマ・ボウイー、そしてイエメンの人権活動家、タワックル・カルマンである。今回の選考について、ノーベル賞委員会は「女性が男性と同じ機会を得られなければ民主主義も恒久平和も達成できない」と説明している。労働に関しても当てはまるのなら、日本も枕を高くしては眠れない。

女性労働に関する諸施策の全体像

まとめよう。

女性労働を巡る法と施策の枠組みを考える際、基盤になるのが、募集や採用、配置、待遇、昇進、退職など、雇用のあらゆる場面において男性との差別を禁じる法律である。正社員と非正社員、パートタイマーとフルタイマーとの待遇格差の解消も必要だ。

さらに、直接の労働施策ではないが、税・社会保障面でも男女が平等に扱われているか、という問題も重要になる。その上に、育児や家事との両立支援策がきて、国によっては、さらにその上に強制的是正措置という劇薬を用意する。

A.男女平等の基礎的条件 労働面、税・社会保障面、賃金面、人としての尊厳維持(ハラスメントの防止)など B.育児・家事との両立支援策 出産・育児休業、各種手当、保育所整備、短時間勤務制度など C.法による強制的是正措置(ポジティブ・アクション)女性役員の割合の義務化

 

この枠組みを元に、次回は各国のケースを見てみよう。

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