企業と応募者の重要な接点である面接は、「人材を見極める」だけでなく、優秀な人材を確実に採用に導く為の、非常に重要な役割を果たす場面です。こちらで改めて、変わりゆく面接事情、そして採用力を高める面接手法について考えてみたいと思います。今回も、弊社において「面接力向上セミナー」講師などを勤め、モーニング誌(講談社発行)連載中の『エンゼルバンク』にて『カリスマ転職代理人による転職模擬面接』コーナーの取材対応もしているアドバイザーへのインタビューを交えてお送りします。※2008/04/10の記事です。
◆取材協力-------------------------
細井智彦
キャリアアドバイザー、マネージャーを経て、現在は2万人以上が受講した「面接力向上セミナー」や、「企業向け面接セミナー」をはじめとするサービスの企画・講師を努める。近著『転職面接必勝法(講談社)』。
及部和香
大手広告代理店の営業を経てリクルートエージェント入社。キャリアアドバイザーを経験後、現在はキャリアアドバイザー支援部門においてサービス改善提案を行う。
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面接に来た応募者が、複数の転職先候補の1社として冷静に企業を見ている。そんな状況の中でどのような面接をするべきなのか、少なからず混乱を感じる事も多いのではないでしょうか。
『これまで企業は、どこか応募者と対峙しているという意識を持っていたのではないかと思います。真剣になるばかりつい腕組みしてしまったり、眉間に皺を寄せてしまう。それは人物をジャッジする事が面接の主体だった為です。でも今、明らかに状況は変ってきているのですから「自分自身も見られている」と意識する事がとても大切だと思います。そして、対峙する間柄ではなく、自分と「同じ側」の人間として応募者に接し、応募者のキャリア、将来を考えてみるという発想の転換が必要です。』
『自分がマネジメントするメンバーに対する時は、どこに長所があり、どこが欠点なのか理解して様々なアドバイスを行いますよね。面接場面でもそれと同様の事をしてみるのはいかがでしょう?あなたのこの経験や、努力家な部分は当社のこんなところに生かせると思いますよ。逆に足りない部分はこんなところなのではと考えますがいかがですか?そんなふうに応募者との対話から答えを引き出し、双方の合致部分を探っていくのです。そうする事により、本音の意見を引き出し、お互いに理解を深めつつ、入社意欲に繋げる事が可能になります。』
自社の現状を的確に伝えながら、入社後の具体的な仕事や活躍しているイメージを描けるようにする。応募者にとっては企業が本気で自分のキャリアを考えてくれていることになるため、転職意欲も高まるはずです。そういう経緯を経て内定が出れば、応募者が内定に達成感を感じることができ、転職先として第一志望の会社になりやすいというのです。
『最近の面接傾向としては、良いことだけ情報提供するという割合は減ってきたと思います。かなり忙しいし残業も多いですが大丈夫ですか?というように、応募者にリアルな現状をお伝えするようになっています。これはとても良い傾向だと思います。しかし、そこにもプレゼンテーションは大切です。』
例えば疲れ切って目の下にクマができた面接官が登場し「忙しい部署ですが大丈夫ですか?」と聞く。やはりこれでは応募者は引いてしまうだけ。忙しくても活き活きと働いている現場面接官、実際の仕事内容を、事例を挙げながら楽しそうに語る面接官。そんな出会いがあった時に、応募者は自分の仕事人生を重ね合せ「ここで働きたい」という思いを強くするのです。
『あるコンサル会社は、非常に上手い面接をしています。20代、30代のコンサルタントが現場面接官として登場し、現在の仕事、自分がここで働いている理由を活き活きと楽しそうに語るのです。すると、今の忙しい労働環境を変えたいと転職活動をしていたはずなのに、「忙しくても、この会社に決めたい」と入社意思を決定する方が続出しました。結局、忙しいから今の会社がイヤだった訳ではなく、仕事に面白みが感じられないから転職活動に踏み切っていたことに、応募者自身が気づく訳です。』
応募者の心を惹き付ける面接が大切だという事に、人事担当者の多くが気づき始めています。そこで配慮しなければならないのが、面接を本業としない現場面接官の対応です。例えばある企業はソファの部屋での面接を止めました。そうすることで、面接官の腕組みもなくなり、適度な距離感を保てるテーブル席で応募者の緊張度合いも緩和させることが出来ました。
「事件は現場で起こっている」というように、応募者から嫌われる面接もまた現場で起こっています。ファシリティを変える、現場面接官に一言アドバイスをする。そんな人事の動きが劇的に面接を変える場合があります。次回は、人事の気遣い、行動が大きく面接効果を変えていく事例についてご紹介します。
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